毎週木曜よる9時よりオンエア中の新ドラマ「桜の塔」で主演を務める玉木 宏。

日本を代表する俳優として第一線を走り続け多忙を極める彼は、プライベートも仕事と同様、積極的に楽しんでいた。

 


肉体的にも精神的にも満たされる柔術トレーニング

柔術、サーフィン、車……多忙を極める俳優・玉木 宏さんはOF...の画像はこちら >>

「フィルムを使うなんて珍しいですね」。フォトグラファーがレンズを向けると、玉木はおもむろに、よく通るあの低い美声で反応した。「ハッセル」や「露出」といった専門用語を交えつつ、最近のカメラ事情などについて和やかに語り合いながらセッションが進む。

悪だくみしている笑顔を撮らせてほしいというオーダーを受けると、「今ドラマで、ちょうどそういう役柄を演じているので得意ですよ(笑)」と、怪しげな微笑みを向ける。

柔和で丁寧、尊大ぶらず謙遜もせず、自然体。玉木に会ったことがあれば誰もが抱くであろう印象。あまりの飾らなさにこちらが緊張し思わず目が泳ぐ。

穏やかな人柄とは対照的に、仕事は激務。主に主演を務めるドラマや映画での活動以外に、CMやイベント、ナレーション業などと息つく暇がない。

「時間が全然足りないですね(笑)」と、冗談を含めてため息交じりにこぼす玉木に、最近のFUN-TIMEについて尋ねた。それまでの会話は小気味良かったが、このときだけは例外だった。「うーん……」と腕組みをしながら思案するが、そんな姿もいちいち絵になる。

「撮影中にフォトグラファーと話が盛り上がったカメラも昔から好きですし、車……、ほかにもまだまだたくさんありますが、コロナ禍ということもあって今は離れてしまっています。

でも柔術だけはずっと続けています。芝居とまったく違うものに触れたかったのと、今後アクションで使えるかもしれないという思いから始めました。1回行くと道着がビショビショになるくらい大汗をかくので、いいリフレッシュになっています」。

多いときは毎日のように通っているという柔術は、リフレッシュ以外にも目的があるという。

「道場に集まるのが、ファッションやアートなど普段接する機会があまりない、クリエイティブな仕事に携わる人たちが多いので、そういう人たちとの出会いも楽しいですし、いろんな話をすることで刺激になっています。

柔術以外のときにもそういった瞬間があって、特に今活躍している若いアーティストの方はキラキラしていて、そういう人と間近で接したときなどは、自分ももっと頑張らないと、という気持ちになります」。

では、自身の若い頃はどうだったのだろうか。

「とにかくがむしゃらに働いていました。ただ20代半ばくらいに、プライベートな時間がいっさいなく、毎日現場と自宅の往復だけという時期がありました。

もちろん、仕事をいただけるのはありがたいことなのですが、このままだとダメになってしまうと思ったので、その経験から、プライベートでの趣味の時間をより大切にするようになりました」。

柔術以外にも、やりたいことは盛りだくさんだという。

「海が好きなので、コロナ禍が落ちついたら、だいぶご無沙汰だったサーフィンを復活させたいです。

ドライブも好きなので海には行っていましたが、実際には波に乗れなかったので、今年こそは仲間と一緒に楽しみたいです。

それと、5年前に船舶の免許を取ったものの、実はまだクルージングをしたことがないので実現させたいです。ただ規則上、船はひとりでは出航できないので、誰かに付き合ってもらうとなるとなかなか難しい……。

あとはキャンプにも行きたいですね。海と同様、こちらも最近はめっきり行けていないです。実は、キャンプ道具もたくさん持っていますし、幼い頃にボーイスカウトに所属していたので、ある程度のことはひと通りできます」。


先輩俳優の皆さんと比べたら41歳なんてまだまだ若造

柔術、サーフィン、車……多忙を極める俳優・玉木 宏さんはOFFも大忙しだった!

今年41歳。デビューから20年以上経過し、常に業界の先頭を切って走り続けているが、ここまで順風満帆というわけではなかったという。

「苦労はそれなりにしてきたと思いますし、人生の分岐点もたくさんありました。ただ僕は相談というものをいっさいせず、自分が楽しいと思うことだけを選択してきました。結果的にそれが間違っていたとしても、その経験自体は無駄ではないと思うので、後悔することはありません」。

若い頃に思い描いていた40代と今の自身を比較してどう思うか聞いた。すると破顔しながら語る。

「“40代=おじさん”だと思っていましたが、中身は変わらない(笑)。当時のおじさんたちが言っていたことと同じことを、今自分も話していると言いますか……、こうやって、若い人たちに同じ話をしていくことの繰り返しなのだろうなと。

今ドラマで先輩方とご一緒させていただいていますが、皆さん当然元気でパワフルですから、負けていられません」。

では逆に20年後、どんな自分でありたいと思っているのか。「60歳かあ(笑)」と言いながら、何だかとても楽しそうに想像する。

「プライベートをそれなりに充実させつつ、仕事もある程度のペースで、楽しいことをやっていたいと思っています。仕事だけではなく、夢中になれることがたくさんあるといいなと。できれば大自然の中で暮らしたいです(笑)。家も自分の手で一から建てて、自給自足の生活をするのが夢です」。


権力や地位にまったく興味なし。自由気ままに過ごすのが一番

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現在オンエア中の主演ドラマ「桜の塔」で演じている、野心家の刑事、上條漣は、プライベートは謎めいている。柔術を筆頭にプライベートを楽しむ玉木とは似つかない。

「漣は野心家で、昇進するためなら手段を選ばない、周囲にも心を閉ざしているというキャラクターです。心の底に熱い部分は持っていますが、それを悟られないようにコントロールしています。ただ、本音を見せたくないという部分は、何となく共感できます」。

今作では壮絶な権力争いが描かれているが、もし自身が警察や企業など組織の一員だったとしたら、その頂点を目指すのだろうか。どんなに競争率が激しくても、クールにトップを獲る姿が容易に想像できると伝えると、笑顔を浮かべつつ「それはパブリックイメージです(笑)」と、意に介さない。

「自分のペースで淡々と過ごすと思います。かといってあまり集団から離れすぎても良くないと思うので、3番目くらいでずっとちょこちょこ動いているタイプです。トップに立っていろいろと仕切るのは得意ではないです」。

また玉木が演じる漣は、プロファイリングを得意としているが、自身はどうなのだろうか。

「まったく読めないというわけではないと思います。初対面で人と会って会話をする際は必ず目を見るのですが、それである程度はわかるような気がします。目が泳いでいるような人は、当然怪しいですから(笑)」。

持ち前の慧眼で冒頭での緊張を見抜かれたのだろうか。動揺しつつ考えを巡らせていると、玉木は目を見て丁寧に挨拶をすませ、爽やかな微笑みを残し席を立った。あの笑顔は玉木なのか、それとも上條なのか……。どちらにせよ最高の笑顔であることは確かだ。

玉木 宏●1980年、愛知県生まれ。テレビ朝日系で4月からスタートした現在オンエア中の新ドラマ「桜の塔」(毎週木曜よる9時~)に、主人公、上條漣役で出演。警視庁を舞台に、その頂点=警視総監を目指し巻き起こる、組織内のパワーゲームを描きながら、野望と正義が入り乱れる究極の人間ドラマ。

赤木雄一(eight peace)=写真 上野健太郎(KEN OFFICE)=スタイリング 渡部幸也(riLLa)=ヘアメイク オオサワ系=文