初めてサーフィンとの別れを意識した今春。だから意識改革と生活改善を敢行。
すべてはサーフィンがあったから楽しく過ごせた日々を、これから先も続けていくためだという。
三浦理志さんに聞く、サーフィンと「生き方」
自然の流れとして受け入れるか、それとも抗うか。今、三浦理志さんは岐路に立たされている。
自然の流れを受け入れることは、海で遊ぶサーファーらしい選択のように思える。しかしそれは、年を取ることで動かなくなり出した身体を理由に、思い描くサーフィンから離れることを意味する。
抗うことは、海で遊ぶサーファーには最も遠い姿勢だ。押し寄せる波にもみくちゃにされたときなど、その圧倒的な力を前になす術はない。
「サーフィンから離れていく人の気持ちが初めてわかった」と言う今回の経験。それは新型コロナによってもたらされた。
普段の冬は海外へ行くことが多く、ここ数年は温暖な海でのグッドウェーブを目的にバリ島やハワイを訪れた。冬でも十分に身体を動かせていたのだ。
そうして迎えた春。全く身体が動かない自分がいた。まずパドリング力が落ちた。狙った波をキャッチできず、もどかしい気持ちが募った。
サーフィンは波に乗ってナンボ。だから波をキャッチすることを最優先にサーフボードを変える解決法がある。もっと長くしたり、もっと浮力を持たせたりするのだが、ボードを大きくすると操作性が失われて俊敏なライディングがしにくくなる。
今、意識する“続けていくための努力”
「身体が動かないとライディングに悪影響が出る。思った通りにできないからメンタルにも影響が及んで、弱気になるためサイズのある波に突っ込めなくなったりする。今はネガティブなスパイラルに入ってるのかな。
脱するにはサーフィンするしかないんだと思う。“キープ・サーフィン”とはよくいったもの。
今も軽やかに波に乗る先輩たちは、トレーニングを取り入れながらエイジングしていく身体と向き合っている。70歳を超えながら混雑した海でも波取り合戦に勝ち続け、グッドウェーブをつかんでいく先輩は真冬でも波があれば海にいる。
「結局、海に入れる状況にいるなら波質にこだわらずサーフィンした方がいいということ。それに日常的に身体を鍛えるのもいいと思う。そんな、これまで考えたこともなかった“続けていくための努力”を、今は意識しているかな」。
サーフィンと付き合い出して35年目となった春、初めて別れを意識した。
しかしサーフィンがあったから楽しく過ごせ、仕事も広がってきた。コロナがあければ訪れてサーフィンしたい海も国内外に山ほどある。そう思うと、まだまだやめられない。だから自然の流れに少し抗ってみようと、三浦さんは思っている。
PEDRO GOMES、熊野淳司、高橋賢勇、清水健吾、鈴木泰之、柏田テツヲ=写真 菊池陽之介、諸見里 司、来田拓也=スタイリング 小山内 隆、高橋 淳、大関祐詞=編集・文 加瀬友重、菅 明美=文