今、空前のブームとなっている「16時間断食」。
人気お笑いコンビ・ドランクドラゴンの鈴木 拓さんは16時間断食を実践して、まもなく1年が経つという。
メリットを根掘り葉掘り聞いてみると、そこには“クズ芸人”のイメージとはほど遠い、鈴木さんの悟りの境地が見え隠れした……。
話を聞いたのはこの人!そもそも16時間断食とは、24時間のうち8時間は好きなものを食べ、残りの16時間は何も食べない。そうすることで自食作用(=オートファジー)が働き、体内の古くなった細胞が蘇るという健康法だ。
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ダイエットのほか、免疫や血管、自律神経に良い効果が期待できるとされている。果たして鈴木さんが得たメリットとはなんだろうか?
初めの1カ月で体重が6kg落ちた
──鈴木さんが、16時間断食を始めたきっかけは?
もともと風邪を引きがちだったので、新型コロナウイルスに感染しないよう、免疫を上げたかったのが一番の目的です。
『「空腹」こそ最強のクスリ』(アスコム刊)という本に出合って、こんな健康法があるんだ! と知ったのが去年の夏頃。僕の場合はダイエットというより、健康のためでした。
──まず、どんな効果を感じましたか?
減量を目指してなかったのに、最初の1カ月であれよあれよと5~6kg落ちたんです。当時72kgだったのが現在は64kgになって、断食を始めてそろそろ1年が経ちますが、同じ体重をキープしてますね。
──1年も継続できているということは、16時間の絶食はあまりきつくない?
始めた当初は、確かに「空腹がきついな……」と思うことはありました。でも、どんどん体調が良くなっていくし、効果テキメンだったので「3食を食べることは体に負担だったのかもな」と思うようになりました。
ロシアでは1970年代頃から絶食療法の研究が進められ、絶食を医療の一環として捉える考え方もあるようです。人間は空腹がデフォルトの状態らしいですが、僕も今はそう思ってます。
相方も信じてくれないけど、アレルギーがなくなった
──体調面では具体的にどんな変化がありましたか?
これは僕のケースだと念押ししておきますが、アレルギーが全部治っちゃったんですよ。花粉症、ハウスダスト、喘息、海老アレルギーもです。
──本当ですか!? それはすごいですね。
にわかには信じられないですよね。僕の相方も信じてないですもん(笑)。でも、家族が花粉症で大変な時期でも、僕だけは鼻水もくしゃみも出なかった。
毎年、冬になると喘息の発作も出てましたが、断食を始めた年の冬は喘息も出なかったんですよ。

──それは驚きですね。アレルギーの症状がないと、ずいぶん楽になったのでは?
楽ですね、かなり。生きるのが楽になりました。僕にとって、断食はメリットしかないんですよ。
──ほかに何か改善したことはありますか?
集中力があがりましたね。僕はYouTubeで動画を配信していますが、編集作業が格段にスピードアップしています。
それに目覚めと寝付きも良くなった(笑)。運動能力も上がりましたね。これは僕のケースだからみんなに押し付けたくないんですが、押し付けたくなるくらいメリットしかないんですよ。
──では、デメリットは何もないと?
筋肉量は落ちるかな、という実感はあります。1日の総摂取カロリーが減ることで筋肉量も低下することは、16時間断食を実践する際の懸念点として言われていますよね。
ただ、だからといって、僕の場合はあえて筋トレをすることはありません。テレビ番組で宙吊りさせられたり、走らされたりするし(笑)、趣味でシーカヤックもやってるので。適度な運動はできているから、あまり心配してないかな。
ファストフードを好きなだけ食べてます
──ちなみに、毎日どんなスケジュールで食事をしてますか?
時間はきっちり設定しています。朝、起きてから最初に食事をとるのは昼の12時。

──栄養面では特に何も気にしてないんですか?
実は16時間断食を始めてから健康に興味が湧いてきて、それ以来、精製された砂糖を摂るのはやめました。とはいえ、カロリーが高めのものばかり好んで食べてますね。野菜はいっさい食べてないと言ってもいいくらい。とにかく何も我慢せず、好きなものを好きなだけ食べてますよ。
──ずいぶん簡単に実践できるように聞こえますが……。
僕はお酒がそんなに好きじゃない分、続けるのは楽かもしれません。ナイツの土屋君にも断食を勧めて、彼も実践していますが、お酒が好きな人にはネックみたいですよ。例えば23時までお酒を飲んじゃったら、翌日のご飯は昼過ぎの15時になりますからね。
──確かに。
そうなんですよ。でも、土屋君も断食のメリットを感じてるみたいなので、最近はお酒を飲む時間をコントロールしてるみたいです。
ほかの減量法との違いは「リバウンドがない」こと
──なるほど。ちなみに、16時間断食を実践できる人の必須条件みたいなものってありますか?
実は僕、「オートファジー占い」ができるようになったんですよ(笑)。「この人はできるな」「この人はできないだろうな」って一発で見抜ける。しかも、だいたいその通りになります。
その占いによると、精神力のあるストイックな人は大丈夫。逆に自分に甘い人は難しいでしょうね。
──自分に甘い人は絶食を我慢できないから?
そうです。ただ、そうだとしても、ほかのダイエット法よりはずっと楽だと思う。何よりリバウンドがない。僕が知る限り、断食で痩せた人は誰もリバウンドしてないです。
10年前のパンツが履けるようになった
──オーシャンズ世代は鈴木さんと同年代。この年齢の男性にこそ16時間断食をおすすめしたいポイントはありますか?
クズ芸人のくせにって言われそうですけど(笑)、断食で僕はマインドも変わりました。「あぁ、人生まだまだ終わってないな」って思えるようになったんですよ。人生の主人公として、まだまだやりたいことをやれるんだって、自信につながりましたね。
──マインドセットが変わる……それはまたどうして!?
断食で8kg体重が減って、10年前にはいていたパンツがまたはけるようになったんです。僕の子供は17歳ですが、同じような体型になった。「あれ、人生まだまだいけるのかもな」って思えたんです。

──体重が減って「人生まだまだいける」とはどういうことですか?
断食を実践する前の体重は72kgでした。僕の身長でいうとちょっと太り気味。中年太りの人が痩せるのって、そう簡単じゃないと思うんですよ。仕事があって、子育てもしてってなるとなおさら。
そういう中で「あぁ、太ったまま病気になって、いつかコロっと逝っちゃうのかな……」って、ぼんやり諦め気味に考えている人もいると思うんです。僕がそうでしたから。
──確かに。仕事や子育てに忙しいと、自分をないがしろにしがちかもしれませんね。
でも、10年前の体型に戻ると、たったそれだけで「あぁ、子供のためだけに生きてるわけじゃないんだ」「人生の主役は僕だ」「まだまだやりたいことができるぞ」って、気力というか自信が湧いてきたんです。自分を取り戻せたような感覚というのかな。
──ちょっと悟りに近い境地に思えますが……。
年齢的にも、病気になる人が周りに多くて、どこかで自分の着地点を想像し始める人はいると思うんです。そんな人がいたら「16時間断食を試してみて」って声高に言いたい。まだまだイケるぞ、人生の主役だぞって。きれいごとじゃなくて。僕は本当にそう感じてるから。
ま、やっぱりきれいごとに聞こえるかな。要は、8時間は好きなものを好きなだけ食べて屁こいて寝る(笑)。これで僕の場合は、過去いち健康になりました。それは間違いありません。
◇
喘息や花粉症のアレルギー発作がゼロになり、集中力は上がり、目覚めや寝付きも良くなったという鈴木さん。得られたメリットは枚挙にいとまがないほどで、働き盛りの世代にとってはうらやましいばかり。試してみない手はなさそうだ。
ぎぎまき=取材・文