「Only The Ocean」(’10) /Jack Johnson
今年の夏、まったりタイムのお供に聴きたい曲として真っ先に浮かんだのは、サーファー、映画監督、そしてシンガーソングライターというマルチな才能を持つジャック・ジョンソンのこの作品でした。美しいピアノの調べと伸びやかなギターサウンドは、静かな波のように心地のよいはやさで心の中に押し寄せてきます。この作品が収録された5枚目のアルバム『To The Sea』はタイトルどおり海がテーマ。海を感じたい気分の日には打ってつけの作品なので、1曲目からラストまで通して聴くことをお勧めします。
「Octopus’s Garden」(’69) /The Beatles
“ビートルズ”と“海”を連想して思い出すのは「Yellow Submarine」という答えが大部分ではないでしょうか。しかし、穏やかな気分で海を感じたい時に打ってつけなのは、やっぱりこの「Octopus’s Garden」でしょう。軽快なリズム、そして明るいメロディーにのせられた歌詞の主人公は、海を自分の庭ととらえて暮らすタコ。《波の下の小さな隠れ家で 海の底に頭を乗せて休んだりして》(意訳)など、海の中で呑気な生活を送るタコの物語を描いた可愛らしい作品です。
「Sail on Sailor」(’73) /The Beach Boys
コロナ禍においても、私たちは人生という大海原で船を漕ぎ、それぞれの道を進んでいかなければなりません。音楽からのエールを求める人にお勧めしたいのが、ビーチ・ボーイズのこの作品です。“泣くのをやめて、死ぬのもやめて、前へ進め”という力強いメッセージが謳われたこの曲は、半世紀近く前にリリースされた楽曲ですが、時代を超越する協力な応援歌です。現代でも、この曲に救われる人、勇気づけられる人はいるはずと考えてピックアップしました。
「Into the Mystic」(’70) /Van Morrison
数え切れないアーティストがこの作品をカバーしてきました。不朽の名作『Moondance』に収録されたこの曲はタイトルどおり、神秘への旅に出よといったスピリチュアル思考が描かれている難解な歌詞が特徴的。ひとつの歌詞に対し、ふたつの異なる歌詞があるという説明を聞いても難しく、解釈に苦しむところですが、理解できないながらも魅力ある楽曲に身を委ねることで、神秘への旅路に出られるのが音楽のいいところですよね。幸運にもロンドン郊外でのライヴのチケットを手に入れられたことがあったのですが、あれほど多幸感に満たされたライヴは後にも先にもありません。
「Beyond The Sea」(’60) /Bobby Darin
オリジナルはフランスのシャンソン歌手シャルル・トレネが作詞作曲した「ラ・メール」で、そこに英語の歌詞をつけたのがジャック・ローレンス。過去には、ロビー・ウィリアムズ、フランク・シナトラ、ビング・クロスビーらが失われた愛の嘆きの歌をカバーしてきましたが、このボビー・ダーリンが歌ったバージョンが世間に最も知られています。原作では海を意味する「ラ・メール」とあるように、絶えず変化する海への頌歌が綴られていますが、一方、ローレンスの英語版ではタイトルに“Beyond”(彼方に)を加えてラブソングへと変え、今日私たちが知るジャズ・スタンダードを仕立て上げたのでした。原曲や他のカバー作品との聴き比べも楽しめます。
TEXT:早乙女‘dorami’ゆうこ
早乙女‘dorami’ゆうこ プロフィール:栃木県佐野市出身。