『オトネタ』LIVEは、2019年3月に開催されSOLD OUTになった『平成最後のオトネタ』以来、場所を草月ホールに定め、定期的に年に1度のペースで開催を予定していたが、2021年3月の公演は新型コロナウィルスの影響で間際に中止。
新ネタの数々を時に映像を織り交ぜながら展開した本編に続き、アンコールでは、一日限りのスペシャルゲストとして演歌歌手の島津亜矢が登場。2021年12月に配信リリースされたデュエット曲「歌うまい歌」を披露。待望のライブに集った観客約300人を盛り上げた。
以下、『オトネタ5』のライブの最速レポートをお届けする。
【『オトネタ5』ライブレポート】
いまだに鮮明におぼえている。
この2年間で練りに練り上げられた演目が並んだ3月18日(金)初日。日本の将来を背負って立つだろう男への熱いエールを込めた「進次郎ポエム:だからこそ私は」にはじまり、昭和と平成における日本音楽界の情報処理能力の違いについて実証する「さざんかのnever knows」、多様性を認め合う社会作りへの関心に加え、インフラ維持などの困難さから各地で発生している限界集落問題にまで切り込んだ「オラ、不協和音だ」などいずれのネタも切れ味の鋭さは満点。白眉だったのは、マキタスポーツの真骨頂とも言える「替え歌」コーナーだ。この2年の間に発生した香ばしい時事問題をキャッチーなメロディーに乗せて料理し、会場をブラックな笑いで染め上げていくマキタの手腕に惚れ惚れさせられた。それにしてもTHE YELLOW MONKEY「JAM」の替え歌「噛む」といったら。
マキタによるひとりミュージカル「朝食バイキング」は中盤のハイライトと言っていいだろう。あまりに広すぎるステージを縦横無尽に駆け巡りながら体力の限界に挑もうとするマキタを見つめながら、そうだった、ここは地下のライヴハウスじゃなかったんだ、とつくづく思い直したもの。さまざまなキャラをみごとに演じ分けるマキタの演技力には脱帽させられたが、さすがにひとりじゃ場がもたないと思ったのか、終盤にヤングな3人娘が登場し、みんな揃ってダンスを披露。その展開がいちばんの盛り上がりをみせたことは言うまでもない。
VOWネタとJ-POP批評をマッシュアップさせた「マキタnote~巷にあふれるJ-POP~」、河内音頭の音頭取りに扮して人と世の真実を炙り出した「FACT音頭」、バッチリ板に付いたB-BOYぶりが見ものの「ヒエラルキー」、ヒゲダンにも引けをとらないメロディーメイカーぶりを発揮した「一歩前へ」を経て、アンコールにこの日の最大の事件が起こる。
公演は3月19日(土)も続く。そこに行けば、52歳の男の野生の証明が目の当たりにできるはずだ。オトネタを愛し、オトネタに愛された男がみせる素晴らしきライヴ。
Text by 桑原シロー