ソニーグループでは今年度の入社式で4人組バンド緑黄色社会が演奏し話題になりました。またテレビ朝日の入社式でも石原さとみさんが登場しました。その他、LIXILでは内田篤人さんが登場し話題になりました。各社ともに、入社式を、対面式でイベントちっくな催しに戻しているようです。2023年は5月からやっと新型コロナが5類に分類されたので、入社式には間に合いませんでした。
ところで、私は23年ほど前に、企業の宣伝担当者と交わした会話が忘れられません。当時はITバブル崩壊直後。私は一介の会社員でした。
企業の宣伝広告にはダイレクト広告とイメージ広告があります。
すると、某社の宣伝担当者は「イメージ広告には相当な意味があるよ。だって、ウチに就職した新入社員の親御さんが、『CMを流しているような会社に就職して良かったね』と安心してくれるじゃん」と豪語しました。
勘違いしてほしくないのですが、この宣伝担当者は、もちろんですが冗談としていっていました。
そして、そこから22年が経った2023年。同じ話を、違う企業の宣伝広告に話して見ました。「イメージ広告って、内定を出した学生を逃さないために重要ですよね」と。すると、その担当者は「そうなんです。イメージ広告で親御さんの力を借りてでも内定を断らせない必要があります」と答えてくれました。
個人的な話です。2024年の3月から4月にかけて、いつものようにさまざまな企業をまわりました。本業のコンサルティングのためです。そのとき、多くの企業人が「そろそろ内定式だ。
そこで、冒頭のトレンドに戻ります。このところ親御さんが入社式に来る例も多いようです。入社式がイベントちっくになったり、芸能人が登場するのは、きわめて経営/経済的・ビジネス的だったりするとわかります。
現在では親子関係が友達関係に近くなっているといわれます。入社式の数年後、会社を辞めようとする若者が親御さんに友達感覚で相談する可能性が高い。いや、多くの場合は相談する。そのときに「あれだけ素晴らしい入社式の会社じゃない」と言ってくれるかどうか。それは退職率の減少にもつながり、人材確保にもつながる。
つまり、入社式は従業員の繋ぎ止め策も意味する――まさに「入社式2.0」へ変容しようとしています。