――歌麿が「枕絵」に挑戦する意味とは?
歌麿の直感的にここは避けて通れないというか、枕絵に挑戦してみないと、きっとこの先には行けないというのを感じたんだと思います。描こうとすると過去のトラウマが出てきて、魂のこもった作品を作るには生みの苦しみはあるとは思いますが、歌麿はそれがすごく重いと言いますか。演じていて気づいたのは、幻覚を“自分から出しにいっている”感じがしたんですよね。きっとそれが歌麿の弱さでもあり、同時に、表現しようと絵に自分の思いをぶつけようとすることができるからこそ天才絵師なんじゃないかなとも思いました。
――鳥山石燕の存在について
石燕先生は蔦重とはまた違う形で受け入れてくれた師であって、「お前には見えるはずじゃ」っていうのは、歌麿にしか描けない絵があるんだぞということを感覚的に教わったような気がしました。さらに歌麿の目に映ったものは、例えば花一つ描くにしても、命や美しさというものを絵として落とし込める才能があるんだぞって言ってるようにも聞こえました。
――鳥山石燕に弟子入りして
久々に何も考えず、思うがままに、目的がない絵を描き始めます。自分が絵を描くのが好きっていうのはこういう感覚だったよなっていうのをもう一回感じ直せた、もう一度原点に戻れた、そんなシーンだったと思います。蔦重がいなかったら、外に出てまた絵を学ぶということもできないと思いますし、帰るところがあるからこそ、一歩外に踏み出せるようになっていってるのかなとも思いました。蔦重は拗ねながらも見送ってくれたんじゃないかなと思っています。