ディズニーピクサーのアニメーション映画『トイ・ストーリー5』が、8月12日までに国内興行収入110億円を突破した。『トイ・ストーリー3』の108億円を上回り、公開41日間でシリーズ歴代最高興収を達成。
全世界興収も、本年度公開のアニメーション作品でNo.1となる10億9640万ドル(約1765億円、Box Office Mojo調べ、8月13日付、1ドル=161円換算)を記録し、世界中で幅広い世代を動員している。

 最新作のヒットによって改めて注目されるのが、「トイ・ストーリー」シリーズが歩んできた30年の歴史だ。1995年に全米公開された第1作は、世界初の長編フルCGアニメーション映画として、アニメーション制作の常識を大きく変えた。

 しかし、その成功を支えたのは、新しい技術そのものではなかった。ピクサーが一貫して重視してきたのは、技術をキャラクターと物語のために使うという考え方だった。

 現在、ピクサーのチーフ・クリエイティブ・オフィサーを務めるピート・ドクター氏も、「この映画の成功は、物語とキャラクターの魅力にかかっている」と当時から理解していたと振り返る。それがなければ、世界初の長編フルCG作品であっても、「単なる目新しい仕掛けという評価に終わっていた」と語っている。

 ピクサーの原点は1979年、エド・キャットムル氏がルーカスフィルムのコンピューター部門のトップに迎えられたことにさかのぼる。同部門は、デジタル音声やCGといった新たな映画制作技術の開発に取り組み、やがてCGを使ってキャラクターの感情やユーモアを表現する短編アニメーションの制作に乗り出した。

 1984年には、アニメーターのジョン・ラセター氏が正式に加入。短編『アンドレとウォーリーB.の冒険』では、しなやかな動きや質感、生き生きとしたキャラクター表現を追求した。「最新技術の中心には、常に魅力的なキャラクターと物語がある」という、その後のピクサーを支える考え方は、この頃から形づくられていった。


 1986年には、Apple共同創業者のスティーブ・ジョブズ氏がジョージ・ルーカス氏から同部門を買い取り、独立企業としてピクサーを設立。同年、ピクサーとディズニーは、手描きアニメーションの制作工程を大きく変えるシステム「CAPS(キャップス)」の共同開発をスタートさせた。

 同じ年には、ラセター氏の正式な監督デビュー作となる短編『ルクソーJr.』が公開された。現在もピクサーのロゴに登場する電気スタンドを主人公に据え、言葉や表情のない物体にも、動きによって個性や感情を与えられることを示した。

 その後も、『レッズ・ドリーム』『ティン・トイ』『ニック・ナック』などの短編作品を通じて、CG技術と物語表現の双方を磨いていった。『ティン・トイ』は、CGアニメーション作品として初めて米アカデミー賞を受賞。この頃には、アンドリュー・スタントン氏やドクター氏ら、後にスタジオを代表するクリエイターも加わった。

 そして1991年、ディズニーと長編CGアニメーション映画の製作・配給契約を締結。前例のない『トイ・ストーリー』の制作が始まった。

 第1作は、おもちゃが人間の見ていない場所で動き出すという物語を通じて、当時のCG技術を最大限に生かした。だが、観客の心をつかんだのは、技術的な新しさだけではない。持ち主に愛されたいウッディの不安や、自分を宇宙飛行士だと信じるバズ・ライトイヤーの葛藤など、誰もが共感できる感情が物語の中心にあった。


 技術が進化しても、キャラクターと物語を最優先する姿勢は変わらない。その考え方は、ディズニーとピクサーが『ファインディング・ニモ』『Mr.インクレディブル』などを共同で生み出し、2006年にピクサーがディズニーの一員となった後も受け継がれてきた。

 「トイ・ストーリー」シリーズは、観客とともに成長してきた。第1作を子どもの頃に観た世代は親となり、今では自分の子どもと一緒にウッディやバズの物語を劇場で楽しんでいる。

 最新作『トイ・ストーリー5』では、遊びの時間を脅かすスマートタブレット「リリーパッド」が登場する。CGそのものが革新だった第1作から30年。最新作では、デジタル機器の普及によって変わりつつある、子どもとおもちゃの関係を物語に取り込んだ。

 時代に合わせて技術や題材を更新しながら、その中心には常にキャラクターと物語を置く。『トイ・ストーリー5』の興行収入110億円突破は、世界初の長編フルCGアニメーションから始まったその姿勢が、30年を経た今も世代を超えて支持されていることを示している。

※本文中に記載した映画の公開年は、すべて全米での公開年。
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