「普通はこう」「女の子だからこうあるべき」――幼い頃から、そんな“常識”に違和感を抱き、生きづらさを感じていたというMikoto(@mikoto_eribbon)さん。転機となったのは、高校時代に友人から見せてもらった宝塚歌劇団のDVDでした。
舞台の上で堂々と男性として生きる男役の姿に、「ここなら、ありのままの自分でいられるかもしれない」と一縷の希望を見いだし、歌劇ダンスの世界に夢中になったといいます。現在は歌劇ダンスの講師や振付、演出、舞台制作など幅広く活動する彼女に「大人の挑戦を応援する」思いのもと、歌劇ダンスの魅力や「自分らしく生きる」ことについて聞きました。

■「“普通”や“常識”がすごく窮屈」――歌劇との出会いがくれた一縷の希望

――幼い頃から「女の子」というカテゴリーに入れられることに、抵抗や違和感があったとのことですが、その違和感に気づいた当時は、どのようなお気持ちだったのでしょうか。

「“普通”や“常識”がすごく窮屈に感じて、前向きな未来が想像できず、諦めにも似た絶望感がありました」

――そうした葛藤や生きづらさを抱えるなかで、ダンスや歌劇との出会いは、ご自身にどのような変化をもたらしたのでしょうか。

「私の生きづらさを救ってくれたのが、歌劇の世界でした。“舞台の中では、堂々と男性として生きることができる。”自分自身が何者でもないような感覚で過ごしていた高校時代、友人が見せてくれた宝塚歌劇団のDVDを観て、一縷の希望が見えたような気がしました。実際に舞台で男役を演じていると、ありのままの自分でいられるような感覚がありました。もともと自己表現が苦手で、内向的な性質でしたが、舞台に立つと思いきり自分を表現することができました。気づけば、踊ることが自分自身を知り、他者とつながるための手段の一つとなっていきました」

――ご自身にとって、歌劇は「自分らしくいられる場所」でもあったのですね。現在は、歌劇ダンスを通してさまざまな人にその魅力を伝えていらっしゃいます。歌やダンスだけでなく、役を演じたり物語を表現したりする歌劇ダンスには、どのような魅力があると感じていますか?

「歌劇独特の振る舞いや品格、様式美は、非日常でありながら、誰の心にも心地よく響く魅力があると考えています。


 男役のダンディズム、娘役の健気さや可憐さ。個性も集団美も、触れることで心が満たされ、自然と心が踊る――。そこには、歌劇ならではの力があると思います。

 プロの世界では“男役十年”と言われるほど、長い時間をかけて培っていく技術ですが、私たちも、大人だからこそ持っている魅力を磨きながら、歌劇独特のエネルギーを少しずつ醸し出していけたらと考えています」

■年を重ねて新しい“一歩”が重くなっても…「自分であることを諦めない」

――大人専門のダンス講師、振付、演出、舞台制作など、さまざまな角度から活動されていますが、そのなかでも歌劇ダンスだからこそ感じる面白さや魅力は、どんなところにありますか?

「これは、実際に挑戦してみて感じたことですが、生徒さんが歌劇の世界観に馴染んでいくのがとても早いことです。バレエで守るべき型や、K-POP 特有の複雑で多様なコレオグラフィーなど、大人が取り組むにはハードルが高い表現もあります。

 その点、歌劇ダンスでは、独特の世界観や様式美を残しながら、大人の方に合った振付を無限に創作できる。そして、それを完成度の高い作品としてお客様にお届けできる。そこに、歌劇ダンスの大きな可能性を感じています」

――これまでさまざまな葛藤を経験されてきたからこそ、「自分らしく生きる」という言葉について、特別な思いがあるのではないでしょうか。ご自身にとって、「自分らしく生きる」とはどのようなことでしょうか。

「踊りと同じく、自分の中に軸を持つことだと思います。世間の基準や評価、比較に怯えるのではなく、自分が置かれている環境や、関わる人たちとの間に、少しずつ自分の世界をつくっていく。

 そのために、自己理解と他者理解を深め、必要な時には自分を理解してもらうための努力をする。
そして、自分であることを諦めないこと。

 かつての私は、“自分は社会の中で居場所が持てない人間なのだ”と思い込んでいました。でも、一生の中で出会う人は、ほんの一部です。それなら、自分で自分の世界をつくっていくこともできる、今はそう感じています」

――最後に、「大人の挑戦を応援する」という言葉を掲げて活動されていますが年齢を重ねるほど、自分の本音や夢を後回しにしてしまう人も少なくありません。そうした方々に、これまでのご経験から伝えたいことはありますか?

「年齢を重ねるほど、新しい一歩が重くなる。その感覚は、私自身もよく分かります。けれど、一歩踏み出すことで、これまで知らなかった別の道が拓けることもあります。昨日まで信じていた常識が、明日には変わっていることだってあります。
本当にやりたいことは、何年経っても、なかなか諦めがつかないものです。それなら、始めるのは一日でも早いほうがいい。生徒さんたちを見ていて、そう感じます。

 何かやりたいけれど、まだその一歩が見つからない方には、まず音楽に身を任せて、ありのままの自分で踊ってみてほしいと思います。
身体を動かすことで、思いがけず“好き”や“やってみたい”に出会えることもあります。ダンサーなので、最後はやっぱり「まずは踊ってみてください」とオススメしてしまいます(笑)」
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