高木豊が語るFA戦線 セ・リーグ 前編

 今オフのFA戦線で特に注目を集めるのが、広島の坂倉将吾、森下暢仁、床田寛樹だ。坂倉は打撃力を備えたキャッチャー・内野手として、森下と床田は実績のある先発ピッチャーとして、FA権を行使すれば他球団からの関心を集めることは間違いない。


 
 それぞれの選手がFA権を行使する可能性はあるのか。移籍市場に出た場合、どの球団が獲得に動くのか。かつて大洋(現DeNA)の主力選手として活躍し、現在は野球解説者やYouTuberとして活動する高木豊氏に、今オフのFA戦線について聞いた。

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【坂倉は広島に残るのか】

――まず、坂倉選手がFA権を行使する可能性について、どうお考えですか? 今年は苦しいチーム状況のなか4番を任される試合もあるなど、一定の結果を残しました。

高木豊(以下:高木) 小園海斗や矢野雅哉らを戦力外にしましたし、手薄な現在のチーム状況を考えると、広島は全力で引き止めると思います。それと、坂倉のサードの守備力ではほかのチームで使えないと思うんです。ファーストだとしても、どのチームもファーストはいますからね。キャッチャーを続けながら、今年の打撃成績(打率.251、15本塁打、74打点、OPS.725)であれば可能性はあったと思いますが。

 坂倉の目線で考えると、「キャッチャーではダメだ」という烙印を押されたことで、打つほうに専念しましたよね。それと、戦力が足りない広島でどうするべきなのか。そう考えると、僕は残りそうな気がします。一番大事にしてくれるのは、やっぱり広島だと思うんです。

――ほかのチームがキャッチャーとして獲得する可能性は?

高木 ほぼないと思います。

まず、盗塁を刺せませんしね。打撃面でも、ファーストで出場した際の打率は2割台後半で、キャッチャーの時は1割台後半と、キャッチャーをやることによってバッティングに悪影響が出ているのが明らかです。ほかのチームはどこも優秀なキャッチャーを抱えていると思いますし、無理して坂倉をキャッチャーとして獲ることはないと思います。いざとなればキャッチャーもできる、という考え方をするチームもあるかもしれませんが。

【DH導入の影響は?】

――来季からセ・リーグでも指名打者(DH)制が採用されますが、その影響は考えられますか?

高木 ないとは言えませんが、DHで出る選手にはホームランを30本くらいは打ってほしい。坂倉が打てるかといえば、これまでの傾向からすれば15本くらいだと思いますし、DHとしてはちょっと物足りないかなと。打率は3割近く打てる可能性がありますけどね。

 坂倉がファーストやサードを守ることによって、エレフリス・モンテロら内野手がダブついていたと思うんです。DHが導入されたらそこでモンテロが使えますし、坂倉をファーストで固定できる。そうなってくると、広島はそれなりに引き留めようとしますよね。坂倉まで出ていったら、広島は戦えなくなりますから。

――仮に坂倉選手がFA権を行使した場合、獲得に動きそうなチームは?

高木 坂倉はいいバッターですが、どの球団も無理して手を挙げる必要はないんじゃないですか。パ・リーグのチームのファーストでは、ソフトバンクは山川穂高が余ってしまっているくらいの状態ですし、オリックスは太田椋をセカンドで使いたいけど、セカンドの守備に不安があってファーストに入れる時がありますよね。

それならファーストで太田を使いたいでしょう。

 ロッテはFA権行使なら獲得調査に動くと報じられましたが、若手が少しずつ育ってきている。楽天も内野は揃ってきています。エラーが多かった日本ハムは、これ以上エラーするリスクがある選手を獲れませんし、西武はファーストにタイラー・ネビンがいます。

 セ・リーグでは、巨人は選手がダブつくことをあまり気にしておらず、「いてもいいよ」というスタンスで獲ることがあるので可能性はありそうです。ボビー・ダルベックをDHにして、ファーストに坂倉を入れたりとか。坂倉が手を挙げた時に動きそうなのは巨人くらいじゃないですか。

【森下、床田は引く手あまた】

―― 一方、先発ローテーションとして計算が立ち、通算60勝(59敗)を挙げている森下投手については、どう思われますか?

高木 FA権を行使しそうな気がします。やっぱり、あれだけ援護点がないのはつらいでしょうし、僕は出ると思います。今季(7勝11敗)もそうですが、防御率がよかった昨季(2.48)も負け越していますよね(6勝14敗)。援護がないだけで、もっと勝っていてもおかしくないピッチャーです。

――獲得に動きそうなチームは?

高木 どのチームが動いてもおかしくないです。

同じセ・リーグでも、巨人は「ひとりでも多くピッチャーが欲しい」というチームですし、DeNAもヤクルトもそう。中日も大野雄大や涌井秀章らが年を重ねていてもう1枚先発が欲しいでしょう。

 森下は今季、一時期は登録を抹消されていましたが、上がってきてからずっといいピッチングを続けていました。だけど、援護がなくて勝てなかった。僕だったら10勝しているのと同等の評価で獲りますよ。

――通算65勝(59敗)を挙げている床田投手はいかがでしょうか?

高木 森下と同じく、床田を欲しいチームも多いでしょうね。例えばオリックス。最多勝を獲得したアンダーソン・エスピノーザの去就が定かではありませんし、手術した宮城大弥や山下舜平大の復帰が不透明で、計算できる先発ピッチャーの枚数が足りません。今やオリックスの先発の柱となっている九里亜蓮が、広島からオリックスへ移籍した前例もありますしね。

 床田もやはり、いいピッチングをしてもなかなか援護してもらえません。エラーでも足を引っ張られるので、床田自身も勝てるチームに行きたいと思うんです。今季の防御率は2点台(2.76)ですし、ある程度点を取ってくれるチームであれば10勝はしていますよ。

 ただ、森下との兼ね合いがあるんじゃないですか。例えば、森下がチームを出るとなると契約面で重宝される可能性があるので、残る選択肢も出てきても不思議ではないです。そういった駆け引きもあるような気がしますね。とにかく、坂倉、森下、床田が今年のFAの目玉になることは間違いありません。

(後編:阪神のFA取得選手たちの移籍・残留をどう見る? 他のセ・リーグ球団の動きも予想>>)

【プロフィール】

高木豊(たかぎ・ゆたか)

1958年10月22日、山口県生まれ。1980年のドラフト3位で中央大学から横浜大洋ホエールズ(現・横浜DeNAベイスターズ)に入団。二塁手のスタメンを勝ち取り、加藤博一、屋鋪要とともに「スーパーカートリオ」として活躍。ベストナイン3回、盗塁王1回など、数々のタイトルを受賞した。通算打率.297、1716安打、321盗塁といった記録を残して1994年に現役を引退。2004年にはアテネ五輪に臨む日本代表の守備・走塁コーチ、DeNAのコーチを2012年から2年務めるなど指導者としても活躍。そのほか、野球解説やタレントなど幅広く活動し、2018年に開設したYouTubeチャンネルも人気を博している。

浜田哲男●取材・文 text by Hamada Tetsuo

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