初監督作『アモーレス・ペロス』(2000年)が「第13回東京国際映画祭」でグランプリと監督賞に輝き、その後、2年連続でアカデミー賞監督賞を受賞したアレハンドロ・G・イニャリトゥ監督。日本と深い縁を持つ監督が、最新作『DIGGER/ディガー』(公開中)のプロモーションで、主演のトム・クルーズと来日。
資金や表現の自由に悩む日本の若い映画クリエイターへ、「リスクを取り続けてほしい」とメッセージを送った。

 本作は、トム・クルーズ演じる石油採掘会社のCEO、ディガー・ロックウェルが、欲深い行動で地球滅亡の危機を招いたことから始まる物語。構想から実現まで9年をかけた。

 『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』(2014年)と『レヴェナント:蘇えりし者』(2015年)でアカデミー賞監督賞に輝いた監督。その歩みの原点は、東京での受賞にあるという。「当時、私はまだ若い映画監督で、その受賞が人生を変えてくれました」と、『アモーレス・ペロス』が評価された喜びを振り返った。

 菊地凛子、役所広司が出演した『バベル』(2006年)では東京で撮影を行い、約5ヶ月滞在した。「私の人生の中でも最も幸せな時間の一つです」と懐かしんだ。公式来日は、2022年の「第35回東京国際映画祭」で黒澤明賞を受賞して以来、4年ぶり3回目となるが、プライベートでもたびたび日本を訪れているという。

 「私は日本の文化も映画も、そして人々の温かさや柔和さが大好きです。日本にいると心が満たされ、深い幸せを感じます」

 そう語る監督に、資金の確保や表現の自由に課題を抱える日本の若い映画作家たちへの助言を求めた。

 「重要な問いですね」と応じた監督は、あらゆるものが金を中心に回る時代に、今回の規模で『DIGGER/ディガー』を制作できたことは「非常に幸運」だったと語った。
一方、自身は興行収入や批評家の評価、賞レースのために映画を作ったことは一度もないという。

 映画作家の成功が商業的な成功と結びつけられる風潮に触れ、若いクリエイターには「金のために膝を屈してほしくありません」と呼びかけた。

 「自分自身にとって本当に大切だと思えるストーリーを語ってください。その確信と明確さを持っていれば、たとえ低予算や中規模の予算であっても、物語はおのずと形になる道を見つけます」

 周囲から『もっと大衆向けに、わかりやすく無難に変えなさい』と言われても、その声に流されないでほしい。監督が伝えたのは、自分が語りたい物語への確信を持ち続けることだった。

 「若い世代には『リスクを取り続けてほしい』と伝えたいです。それが何より重要です。安全策を取るくらいなら、失敗する方がはるかに価値があり、力強いのですから」と、挑戦を続けることの大切さを訴えた。
編集部おすすめ