是枝裕和監督と俳優の出口夏希、蒔田彩珠、七瀬ふうり、岡田六花が10月7日、韓国で開催中の「第31回釜山国際映画祭」(10月6日~15日)で、実写映画『ルックバック』(公開中)の記者会見と野外舞台あいさつに登壇した。

 6日に行われたオープニングイベントでは、場内で「コレエダヒロカズ」と監督の名前を称える楽曲が流れる演出があり、まさかのサプライズに5人が互いに顔を見合わせて笑みをこぼす場面も。
是枝監督は翌日の会見で、「僕の名前を歌にまでしていただき、驚きましたけれど楽しい時間を過ごさせていただきました」と語り、「(次回作でも)また釜山に戻ってきたい」と話していた。

 本作は、藤本タツキの同名漫画を、是枝監督が監督・脚本・編集を務めて実写映画化。漫画を描くことに情熱を注ぐ藤野と京本を出口と蒔田が、二人の子ども時代を七瀬と岡田が演じた。是枝監督作品が同映画祭に出品されるのは『怪物』(2023年)以来で、同じガラ・プレゼンテーション部門への出品となった。

 約80人の報道陣が集まった記者会見では、映画の始まりと終わりに描かれる「背中」の演技が話題に。出口は「今作ではすごく背中のカットが多くて、背中でしか伝えきれない場面がたくさんありました。監督には『背中で京本を感じて』と言われました」と明かした。

 蒔田とは、二人で撮影する時間を重ねてきた。それだけに、京本と別れた後の場面では、出口自身も寂しさを感じたという。「ずっと彩珠と2人で撮影していたので、京本がいなくなったあとの撮影では、急にさみしくなって、いるけれどいないような感じがして、心が空っぽのまま撮影をしていました」と、当時の心境を語った。

 「背中」は、是枝監督が原作と出会ったきっかけでもあった。同日に映画の殿堂・ルーフシアターで行われた野外舞台あいさつで、監督は、原作が出版されて間もない頃、書店で表紙の背中の絵にひかれて購入し、その日のうちに読んだと回想した。


 当時はコロナ禍で、さまざまなプロジェクトが止まっていた時期。「何かこう背中を押されたような、自分はなんで映画を撮っているのか、映画を撮り続けているのかっていうことを改めて考えさせてくれるような、そんな出会いをこの作品を通して経験しました。それが今回の映画化につながっています」と、制作の出発点を明かした。

 舞台あいさつでは、8日からの韓国公開を前に、それぞれが見どころも紹介した。七瀬は、藤野が雨の田んぼ道を走る場面を挙げ、「藤野の感情があふれてるシーンなので、そこを注目してほしいです」と呼びかけた。岡田は、京本と藤野が初めて会う場面について、「撮影も大変だったんですが、その分本当にいいシーンになりました」と振り返った。

 蒔田は「作品の半分くらいを子ども時代のふたりが担ってくれているので、ふたりの約1年間の頑張りを韓国の皆さんにも見届けてもらえたらうれしいなと思います」と、七瀬と岡田に思いを寄せた。出口は、四季の風景に触れ、「実写ならではの繊細で美しいところが分厚く作品に詰まっていると思うので、ぜひ韓国の皆さんに見ていただけたらうれしいです」と語った。

 最後に是枝監督は「全部のシーン、全部のカットに愛を込めて作ってます」と語り、自分で観ても、悲しい場面ではないのに涙が出ることがあると明かした。「ぜひご覧になってその愛を感じていただければなと思います」と観客に呼びかけていた。
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