未来世代がはばたくために何ができるかを考えるプロジェクト「はばたけラボ」の新連載「弁当の日の卒業生」。「弁当の日」、その日は買い出しから片付けまで全部一人で。
▼自炊を楽しんでいますよ
「自炊に困ることない?」と問うと、「困るどころか、楽しんでいますよ」。
Mくんの声は弾んでいました。4歳年上の兄の「弁当の日」を見てきたおかげで、小学校低学年のころから台所には日常的に立ってきていました。「得意料理は?」と問うと「ガテン系グルメ」と即座に返答しました。つまり肉体労働に従事する者に人気の料理ということか。
Mくんは20代後半の独身です。消防隊員で、今はアパートに一人住まいをしています。月に10日の24時間勤務です。勤務日は6~7人による自炊生活だそうです。それぞれが持ち込んだ食材で三食の食事を作ります。
小学生の時の「弁当の日」には自分の好きな焼肉弁当や、母さんから習ったジャガイモのチーズ焼きを作ったことを覚えています。お父さんから教わった手打ちうどんを近所の人に配ったこともあります。お父さんが県外から来た人を手打ちうどんでもてなしている場面を何度も見て育っていますから、その影響も大きいと思います。
勤務のない日も、知人たちとの食事会がない限りはアパートで自炊生活を楽しんでいます。野菜は好きでよく食べますが、実は魚が苦手です。スーパーに行くと、まず肉のコーナーに行きます。牛肉は高いので鶏肉か豚肉を買います。豚肉のしょうが焼きと鶏モモのステーキを作ることが多いです。和食も作りますが、やっぱり肉料理中心です。体型ですか。筋肉質ですよ。
「弁当の日」は、お母さんの手伝いのために台所に立って、頼まれた一部分の仕事だけをするのでは育たない調理力・段取り力が育ち達成感も大きいと思います。彼女がいます。父親になれたら、わが子を台所に立たせます。男の子であっても、女の子であってもね。
竹下和男(たけした・かずお)/1949年香川県出身。小学校、中学校教員、教育行政職を経て2001年度より綾南町立滝宮小学校校長として「弁当の日」を始める。定年退職後2010年度より執筆・講演活動を行っている。著書に『“弁当の日”がやってきた』(自然食通信社)、『できる!を伸ばす弁当の日』(共同通信社・編著)などがある。
#はばたけラボは、日々のくらしを通じて未来世代のはばたきを応援するプロジェクトです。誰もが幸せな100年未来をともに創りあげるために、食をはじめとした「くらし」を見つめ直す機会や、くらしの中に夢中になれる楽しさ、ワクワク感を実感できる体験を提供します。そのために、パートナー企業であるキッコーマン、クリナップ、クレハ、信州ハム、住友生命保険、全国農業協同組合連合会、日清オイリオグループ、雪印メグミルク、アートネイチャー、ヤンマーホールディングス、ハイセンスジャパン、ミキハウスとともにさまざまな活動を行っています。