結婚相談所で婚活している人は、どうやって結婚相手を選んでいるのか。主宰する結婚相談所でカウンセラーを務めている大屋優子さんは「見た目や経済力を気にする人はもちろん多いが、結婚後の生活がイメージしやすいか、ということも大きなポイントになる。
過去に会員だった30代の男性は、交際相手とそれぞれの自宅で料理を作ったことが結婚の決め手になったと語っていた」という――。
※なお、本稿は個人が特定されないよう、相談者のエピソードには変更や修正を加えている。
■「30代・転勤無し・大手」は婚活強者
令和の結婚生活は、「共働き」「共家事」「共育児」が主流である。
結婚相談所で婚活している男性は、可処分所得が高い傾向にあるが、昭和時代の結婚生活とは異なり、収入が高い男性も、妻とともに稼いでパワーカップルを目指す傾向が強い。
34歳男性、大卒、年収600万円、メーカー勤務。
彼女なし歴イコール年齢。マッチングアプリにも登録したが、恋愛経験のなさから、一回は会えたとしても、次にはつながらない。マッチングアプリの毎月の課金も、かなりの金額になるし、ならば結婚相談所の婚活のほうが、結婚を目的として、効率的に婚活を進められる。
結婚相談所に登録している30代女性は、30代男性の数よりもかなり多いため、彼は結婚相談所の登録をして、人生初のモテ期を経験することになる。その理由は、30代女性たちは年齢の近い相手と結婚を希望する方が非常に多いためである。
彼が結婚相談所で婚活して、お申し込みが殺到した理由は、30代であるということ、固い企業勤務に加えて、転勤の可能性はほぼなく、勤務先が東京であることが大きい。一般的に上場企業に勤務する男性や、国家公務員男性は、全国転勤を求められることも少なからずあるが、彼のようにこの先も東京に勤務する男性は、歓迎される傾向にある。

彼の結婚相手への希望もまた、「共働き」をしながら二人で協力し合い助け合える人であった。
■50人以上から応募が殺到
彼は、相手の学歴や年収はこだわらないとはいえ、結婚しても、また子どもを授かったら家族で旅行や外食も無理のない範囲で楽しみたい。そのためには、自分ひとりの給料だけではなく、レジャー費などを考えると、共働きで、家計にも気持ちにも余裕がある生活を出来たらい良いなと思っていた。
彼のプロフィールをアップする前に、少しでもルックスが良く見えるようにと、眉カットと美容院で、イメージチェンジを狙った。眉カットなどしたことのない男性は、これだけで印象ががらりと変わる。
眉カット専門店の技術は素晴らしく、彼も別人のようにキリリとしたイケメンに生まれ変わった。
そんな彼が結婚相談所にプロフィールをアップすると、50人以上の女性からお見合いのお申し込みをいただいた。年上の女性もいたが、ほとんどが同級生から3歳年下くらいで、中にはかなりの美人さんもいた。
彼が飛び上がって喜んだのは言うまでもない。お申し込みいただいたすべての方に会いたい、とモテたことのない彼は言ったが
「現実的に考えてみてね、お見合いしただけで結婚はできないの。お見合いから仮交際になったら、週に一度はデートをしなくちゃならない。休みは週に二日、身体は一つ。
となると、仮交際はせいぜい2~3人が限界です。だから、お見合いは、ここから厳選して、8人くらいまでにしましょうね」
彼は素直な性格だから、アドバイス通りに、8人の女性のお見合いを受けた。
■お見合いを繰り返し、3人と交際することに
恋愛経験がまったくないこともあって、女性と一対一で話す機会は、彼の人生において非常に少ない。
お見合いの待ち合わせがホテルラウンジの入り口で、席まで相手を案内するときには、カチコチに固まって手と足が両方同時に出てしまったり、会話が続かず沈黙になってしまったり、逆に緊張のあまり一人で空回りして、喋りまくって自爆したり、一問一答のマークシートのような会話になってしまったり……。
女性慣れしていない彼のお見合いは、順風満帆とはいかなかったものの、3人の女性と仮交際になった。
彼が一番気に入っていたのが、1歳年上のAさん。金融業界勤務で、バリキャリ女性。美人でそつがないから、当然ライバル多数で、「他のご縁を優先したい」という理由で、二回デートを重ねたあとに交際終了。
二歳年下のBさんは、保育士さんで、実家暮らし。子どもが大好きな明るい女性で、彼との交際にも前向きな様子で、毎日のラインや週一のデートで、関係を深めていた。
そして、のちに彼と結婚することとなるCさんは、一歳年下、一人暮らしの会社員。
当初彼は、CさんよりBさんが気に入っていた。
その理由は、単純にBさんの見た目のほうが好みだったからだという。
■見た目を取るか、生活力を取るか
彼の休日は土日なので、どちらかにBさん、Cさんのデートをそれぞれ入れ、空いた時間には、美容院や眉毛カットサロンで、自分のメンテナンスも休まず行う。何しろ真面目だから、カウンセラーの私のアドバイスにはしっかり耳を傾けるし、自分磨きも怠らない。
Bさんとは、水族館や動物園などのデートに出かけた。子どものように楽しそうに笑う彼女に、彼は惹かれたが、彼女は子供が好きで今の仕事に就いたくらいだから、自分の子供を授かったら、自分の手で育てたいという気持ちが強かった。つまりは、出産後は、専業主婦希望である。
彼の給料は、年齢とともに安定して上昇していくものの、自分がいつ病気やけがで働けなくなるかもしれないことや、昨今の物価上昇のなか、経済的に安心し、気持ちに余裕のある結婚生活のためには、共働きの結婚生活が必要だと、当初から考えていた。
Cさんとは、鎌倉散策デートや、高尾山ハイキングなど、アウトドアデートが楽しかった。一人暮らしで、決して高くはない給料で倹約しながら自分の生活費を捻出し、婚活している彼女には、いじらしさを感じていたという。
彼よりお給料も低いのに、デート費用も彼が出そうとしても、割り勘を申し出てくれる。礼儀正しく、地に足が着いた女性である。
■「バズレシピYouTuber」が二人の運命を変えた
彼は、BさんとCさんとで、揺れ動いた。

一緒にいるときは、それぞれが一番良いと思えたし、どちらかに決めなくてはいけないと思いながら、迷いまくった。決められないから、彼の頭の中はオーバーヒートを起こし、いっそのこと二人と交際終了して、新たなお見合いをする、などという、愚かなことまで言い出す始末。
交際は順調に進んでいるというのに、である。
そんななか、一人暮らしの彼と、同じく一人暮らしのCさんとの間で起きたある出来事が、二人の運命を変えることとなる。
二人は、ある日曜日の夜、それぞれの自宅で夕飯の時間を迎えた。
一人暮らしの二人は、日頃から節約のために、自炊を心がけておりどんなものを自宅で作るかなどの話は、デートの中でよく話に出ていたのだという。なかでも、二人はよく、YouTubeで「料理研究家リュウジのバズレシピ」を参考にしている話題はのぼっていた。
この日も、彼とCさんは、LINEのやり取りをしながら、二人の冷蔵庫の中にある材料で、何か作れないかということになり、彼女からの提案で、それぞれ「至高の炒飯」を作ることになった。
■“バズレシピ”が結婚の決め手になった
別々の部屋で、別々のキッチンで同じレシピで作った炒飯の写真を送り合いながら、それぞれが一人暮らしの部屋で、出来上がった炒飯を食べた。そこで彼の心は動いた。彼が作った、男飯の炒飯を、彼女は「すっごくおいしそうだね」と絶賛してくれた。
さらに彼女からは「こうして二人で別々に食べていても一緒にいるみたいだね」と、LINEが来た。
彼は、その言葉に、「彼女と結婚しよう。彼女を一生大事にしよう」そう思ったという。LINEを送りあいながら食べる、リュウジの炒飯がご馳走に思えた。
彼女となら、この先二人で共働きしながら、早く帰ったほうが夕飯を作って、二人で食卓を囲む絵が、彼の頭のなかに、はっきりイメージできた。
「僕が作ったこんな炒飯を、絶賛してくれる彼女に、結婚してからも僕がたくさん料理を作ろう」
彼はそう決意した。
彼は、Cさんと結婚し、共働きしながら、家事も分担。夕飯も彼が彼女より早い帰宅の日は、彼が作る。時に二人で旅行に出かけたり、仕事の帰り道に約束して、居酒屋デートを楽しんだり、お互いを労わりあいながら新婚生活を送っている。

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大屋 優子(おおや・ゆうこ)

結婚カウンセラー

1964年生まれ、株式会社ロックビレッジ取締役。ウエディングに特化した広告代理店を30年以上経営のかたわら、婚活サロンを主宰。世話好き結婚カウンセラーとして奔走。著書に『余計なお世話いたします 半年以内に結婚できる20のルール』(集英社)がある。


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(結婚カウンセラー 大屋 優子)
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