※本稿は、工藤孝文『50代から気になる『老けない』やせ方』(青春出版社)の一部を再編集したものです。
■豆乳選びに失敗すると太ってしまう
ダイエットやアンチエイジングというと、必ずといっていいほど名前が挙がる食品に、豆乳があります。
豆乳は、水に浸した大豆をすりつぶして煮て、その液体を漉(こ)したものです。普通の牛乳より糖質も脂質も低く、高たんぱく質で低脂肪。腸内環境を整えるオリゴ糖も含まれている素晴らしい飲み物です。
特に女性のアンチエイジングに欠かせない大豆サポニンやイソフラボン、ビタミンB群、ビタミンEなども含んでいるため、ダイエットにもぴったりです。
ただし、豆乳にはちょっとした問題があります。
ひと口に豆乳といっても、実はいくつか種類があり、間違った種類を選んでしまうと、ダイエットどころか太ってしまう可能性があるのです。
豆乳には、次の3種類があります。
・無調整豆乳:大豆固形分が8%以上で、大豆と水のみで作られている。
・調製豆乳:大豆固形分が6%以上で、植物油脂や砂糖、塩などの調味料を加えて飲みやすくしたもの。
・豆乳飲料:大豆固形分が4%以上か、果汁入りで大豆固形分が2%以上。調製豆乳に果汁やフレーバーなどで味つけをしたもの。
50代からのダイエットにおすすめしたいのは、もちろん無調整豆乳です。調整豆乳や豆乳飲料は、甘くしてある分だけ糖質も高く、健康に良いと思い込んでたくさん飲むと、体に脂肪がついてしまいます。
調整豆乳も豆乳飲料も、パッケージの「豆乳」の文字に惑わされて、間違えないようにしましょう。
健康や栄養に詳しい人はよく知っているかもしれませんが、今まであまり気をつけてこなかった人は、豆乳を買うときに確認してみてください。
■果物から作られたジュースやスムージーはキケン
ダイエットをはじめると、スイーツなど甘い物を抑えるようになっても、その分、果物を多く口にするようになってしまう人がいます。
果物にはビタミン類が豊富なので体に良いイメージがあるせいか、ついつい「果物はOK」と、自分の中で勝手なルールを作ってしまうようです。
甘味が少なく酸味が強い柑橘系の果物ならいいのですが、甘くておいしい果物は糖質が高く、カロリーも高いです。特に最近の果物は消費者の好みに合わせて甘味が強くなるように作られているので、やせるためには、食べすぎに注意が必要です。
しかも果物に含まれる糖質の一種である「果糖」は、肝臓で中性脂肪に変わりやすいため、とりすぎると脂肪となって体に蓄えられてしまいます。
中でもキケンなのは、果物から作られたジュースやスムージーです。市販のジュース類は、果物にもともと含まれていた食物繊維やビタミン類が減ってしまっているため、糖質ばかりが多い、果物としてのメリットが少ない飲み物になってしまっている可能性が高いのです。さらに飲みやすくするためにはちみつなどが添加されているものもあります。
果物はジュースにせず、普通にカットして食べましょう。
特に、果物は皮や皮の近くにポリフェノール類など、美容と健康に良い成分が多く含まれているので、食べられるものはよく洗って皮ごと食べるのが賢い選択です。
ただし、普通にカットして食べても、食べすぎれば果糖のとりすぎになり、体に脂肪がつきやすくなったり、糖尿病になりやすくなったりしてしまいます。
1日に食べていい量は、健康な人で200g以内が目安です。みかんなら2個、りんごやなしは1個、バナナ1~2本、キウイフルーツなら2個まで。やせたいのであれば、これより少なめに抑えておきましょう。
■ゼロカロリーなのに太ってしまう不都合な事実
ダイエットをはじめようと思ったとき、手はじめに飲み物をゼロカロリー飲料に変える人は非常に多いです。
コーラなどの甘い飲料水や、ノンアルコール飲料水でゼロカロリーとうたっている商品を利用するのは、手軽ですし、ストレスもなく、一見良い選択に思えます。
もちろん、こうしたゼロカロリー飲料が好きなら、たまに飲むのはかまいません。
でも、ゼロカロリーだから大丈夫と、好き放題飲むのは危険です。やせるどころか、逆に太ったり、糖尿病になってしまう人が少なくないのです。
ゼロカロリーをうたっている甘い飲料水などによく使われている甘味料は、アセスルファムK、スクラロース、アスパルテームなどの人工甘味料です。これらの甘味料はカロリー0とされていて、血糖値も上がらないといわれているのに、どうしてとりすぎると太ったり糖尿病になったりしてしまうのでしょう。
その理由については、まだはっきりしていない部分も多いのですが、人口甘味料の甘味が強烈であることが関係していると考えられています。人口甘味料の甘味は、普通の砂糖のなんと200~600倍もあるのです。
そのため、人口甘味料を摂取すると強い甘味を感じるのに血糖値が上がらないことで、脳が一種の混乱状態に陥り食欲が増進され、むしろ太りやすくなるという説があります。
また、人工甘味料の強い甘味に慣れてしまうと、ますます甘いものを食べたくなって、結果的に以前よりも甘いものを食べている可能性も考えられています。
さらに、腸管で甘味を感じると、腸から分泌されるインクレチンというホルモンが結果的にインスリンを分泌させて糖代謝を狂わせたり、腸からの糖の吸収がいっそう促進されることも報告されています。
いずれにせよ、ゼロカロリー飲料を過信してたくさん飲んでしまうのはNGだということだけは、しっかり胸に刻んでおいてください。
■「お酒は太る、太らない」の最終結論
「お酒を飲むと太りやすい」と言われる一方で、「お酒のカロリーでは太らない」という説もあって、本当はどっちなんだと悩んでいる人もいるでしょう。
確かに、アルコールのカロリーは体内で真っ先に消費されるため、脂肪として蓄積されることはないといわれています。
でも、結論から言うと、お酒を飲むと太りやすいというのは、事実です。
理由のひとつは、お酒そのものでは太らないけれど、つまみを食べたり締めにラーメンやお茶漬けを食べることで太るから。確かに、夜遅くなって炭水化物を食べれば、確実に脂肪はつきやすくなります。
でも、お酒好きが太りやすい最大の理由は、実は肝臓にあります。
お酒を飲むと、アルコールを分解するために肝臓が働きはじめます。その際、ニコチンアミドアデニジンヌクレオチドという補酵素が必要になります。
この補酵素は脂肪を分解する際にも必要なのですが、お酒をどんどん飲んでいるとアルコールの分解と代謝にばかり使われてしまい、脂肪の分解・代謝に使われる分が足りなくなってしまうのです。
さらに、中高年になって肝臓が弱ってくると、脂肪の分解・代謝がますます追いつかなくなり、どんどん脂肪がつきやすくなっていきます。
50代になっても若い頃と同様にお酒を飲んでいたら、まずダイエットには成功しません。お酒好きな人には少々ストレスになるとは思いますが、ここは少しずつ酒量を減らしてもらうほかありません。ノンアルコール飲料などを上手に活用して、節酒を試みてください。
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工藤 孝文(くどう・たかふみ)
内科医
工藤内科院長。
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(内科医 工藤 孝文)