※本稿は、工藤孝文『50代から気になる『老けない』やせ方』(青春出版社)の一部を再編集したものです。
■食事の20分前に飲むだけの簡単ダイエット
若い人でもダイエットにストレスは禁物ですが、特に50代以上の方は心も体も以前よりストレスに弱くなっているので、できるだけストレスのない方法でやせたいものです。
まず試してほしいのは、満腹ホルモンと呼ばれる「レプチン」を上手に働かせること。そうすれば、いっぱい食べなくても満腹感が得られやすくなるので、自然と食べる量が減って、無理なくやせられます。
レプチンは、食後の血糖値の上昇に反応して分泌されるホルモンです。だいたい食べはじめてから20分後に分泌されるので、20分かけて、しっかり噛みながら食べると満腹感が訪れ、余計に食べてしまうことが減ります。
早食いの人が太りやすいのは、レプチンが分泌されるまでにバクバク食べてしまうため、どうしても食べる量や食欲が増してしまうからです。
しかし、「ゆっくり食べたほうがいいのはなんとなくわかっていたけれど、意外とこれが難しいんです」という人は少なくありません。
そんな方に私がおすすめしているのが、食事の約20分前にレモン水を1杯飲む方法です。
レモンの香りや酸味の刺激が交感神経を高めて満腹中枢に働きかけ、レプチンの分泌を促してくれるのです。
レモン水は、コップ1杯の水に大さじ1杯ほどのレモン汁を入れるだけ。
食事をしながら飲めるとより簡単なのですが、食べはじめてからレプチンの分泌がはじまるまで時間がかかるので、食事の20分前に飲んでおくのが鉄則です。
■「食べる量」「買う量」「作る量」を1割減らす
ダイエットをするからには、食事の内容を見直して、今までより食べる総量を減らす必要はあります。
問題は、これをいかにストレスなく実現するかです。
目標としては、「食べる量を1割減らす」こと。
家で食事をするときは、皿の上にのっている料理のおおよそ1割を、食べはじめる前に別の小皿にとってしまいましょう。それは、次の食事のときの付け合わせや小鉢の1品にするのです。「後で食べる」と思うと、意外と抵抗なく残せるものです。
ダイエット中はコンビニのお弁当はあまりおすすめできませんが、買ってきたときはやはり1割は最初に別の皿に移し、冷蔵庫にしまってしまいましょう。
そもそも「買う量」や「作る量」を減らしてしまう、という手もあります。
スーパーに行ったとき、今まで肉を500g買っていたなら、450gにする。野菜も1週間分まとめて買っているなら、全体でなんとなく1割減らしてみる。
そして、買う量が減れば、作る量も自然と減ります。
結局、家に食べられるものがあるから、人は必要以上に食べてしまうわけで、買う量も作る量もぎりぎりなら、お腹が空くたびにコンビニに走ったりしない限り、食べる量は自然と減っていくものです。
あとは、とにかくしっかり噛んでゆっくり食べること。そうすれば、1割減らしてもちゃんと満腹感は感じられて、だんだんその量が定着していきます。
好きな食べ物は、最初から無理矢理減らさなくてもいいです。残しても良さそうなものから、減らしてみてください。
■食事を摂るのにもっとも脂肪がつきにくい時間帯
食べる量が減ると、やがて脂肪は落ちていきますが、「1日の食べる量が減ったのに全然やせません! それどころか増えてきました!」と訴えてくる患者さんがたまにいます。
そんなとき、どれくらい食べる量が減ったのか、いつ食事をしているのか聞いてみると、だいたい理由がわかります。
1日の食べる総量は以前より減っているけれど、食べる時間が夜型にシフトしてしまっていることが多いのです。たとえば、朝と昼の食事をそれぞれ今までより減らしたけれど、夕飯は今までより多めに食べているといった具合です。
よく「夜食べると太る」と言われますが、あれは本当で、ちゃんとした根拠があります。
BMAL1は体内で脂肪の合成を促進させる働きがあり、1日の中でもっとも分泌量が増えるのが起床後約15~19時間後。朝7時に起きる人の場合、夜10時から深夜2時になります。
BMAL1の分泌量はその後減っていき、もっとも減るのはだいたい起床後7時間後なので、一般的には午後2時くらいの食事はもっとも脂肪がつきにくいことになります。
そして、その後は夜10時すぎに向かってどんどん量が増え、夜10時以降はもっとも脂肪がつきやすい時間帯に突入します。
つまり、食べる量が同じであっても、昼間食べるのと夜食べるのとでは、脂肪のつき方・減り方に大きな差が出てくるのです。
夕食は、消化にかかる時間も考えると、可能なら6時くらいまでに食べ終えるのが理想的です。さすがにそこまでは無理だとしても、夕飯はなるべく早く食べ終えて、そのあとは何も食べず、早めに寝てしまうに越したことはありません。
■老けずに健康的にやせる「1975食」のすすめ
50代以上の人が、無理なく健康的にやせたいのであれば、ぜひお手本にしてほしい食事があります。
それが、1975年頃の日本の一般的な食事であった、通称「1975食」です。東北大学大学院農学部研究科食品化学分野の都築毅准教授らの共同研究グループが現代と過去の日本食を調べた結果、1975年頃の日本食が、肥満を抑制するとともに、糖尿病や脂肪肝、認知症などを予防する効果が高い、ということがわかり、健康的にやせる食事のモデルケースとして推奨されるようになりました。
1975年といえば、ちょうど今から約50年ほど前になりますが、その頃の日本人がどんなものを食べていたか、一例を挙げてみましょう。
・朝食:ごはん、みそ汁(キャベツ、玉ねぎ、しめじ)、卵焼き、納豆、ひじきの煮物
・昼食:きつねうどん、果物(りんご、ぶどう)
・夕食:ごはん、すまし汁(白菜、わかめ)、サバのみそ煮、かぼちゃの煮物、冷ややっこ
汁物や煮物など、だし汁を使ったメニューが多いこと、ごはんなどの炭水化物は必ずとっていること、野菜が豊富で納豆やみそなどの発酵食品も含まれていることが、主な特徴です。
当時は市販の顆粒だしではなく、かつお節などからだしをとっていた家庭が多かったので、その分、塩分も少なく薄味であったと考えられています。
この頃の日本の食卓には、昔ながらの和食だけでなく、コロッケやアジフライなど、たまに揚げ物も出ていましたし、サンドイッチやオムライス、ハンバーグなどもときどき登場していました。
1975食を食べていると、軽度の肥満の人はBMI(ボディ・マス・インデック。体重(kg)を身長(m)の二乗で割った数値で、肥満度を表す)や悪玉コレステロール、血糖値を低下させる効果があると報告されています。
さらに、健康な人が食べると、ストレスが軽減される上に、運動機能の向上が認められました。
逆に言えば、1975年以前の、もっと質素な食事では、たとえやせたとしても健康的な体を保てないと考えられます。
1975食くらいおかずがそろっていて、ごはんに汁物も食べれば、お腹もそれなりに満足しますし、栄養バランスが整っているのは言うまでもありません。
1975年頃の食卓をイメージして献立を組み立てて毎日続けていれば、食欲や味覚も整って、デブ体質から健康的なやせ体質に変化していくでしょう。
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工藤 孝文(くどう・たかふみ)
内科医
工藤内科院長。福岡県みやま市の同医院で地域医療を行う。糖尿病内科、ダイエット外来、漢方医療を専門として、テレビや雑誌などでも活躍。
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(内科医 工藤 孝文)