※この連載「高山一恵のお金の細道」では、高山さんの元に寄せられた相談内容を基に、お金との付き合い方をレクチャーしていきます。相談者のプライバシーに考慮して、事実関係の一部を変更しています。あらかじめご了承ください。
■「献立のルーティン化」でラクに節約
物価高が続いています。8月の食品値上げは1010品目にのぼり、前年8月から52.8%増。さらに、10月に値上げが決まっている品目は3000品目を超えることも調査で明らかになっており(帝国データバンク調べ)、食費の値上がりが家計を圧迫する状況がしばらく続きそうです。
そこで今回は、節約術によって食費を抑える工夫をしている方の具体例をご紹介します。
小学生と中学生の男の子を持つ藤堂果歩さん(仮名/36歳)。育ち盛りの子どもたちは日に日に食べる量が増え、夜中、スーパーに米を買いに走ることもあるほどだそう。米の消費量は1カ月40kg以上で、「最近のお米の高騰は本当に大変だった」と嘆きます。
上がり続けるエンゲル係数を抑えるべく、藤堂さんは「献立のルーティン化」に踏み切りました。
■大型スーパーにはあえて行かない
たとえば、月曜日は豚丼(豚肉、玉ねぎ)、火曜日は肉じゃが(豚肉、玉ねぎ、人参、じゃがいも)、水曜日はカレー(豚肉、玉ねぎ、人参、じゃがいも)といった具合に、使う食材を日々少しずつリンクさせ、無駄なく食材を回すような献立を1カ月分作成。スーパーに行く時も、その日に使う食材以外は一切買わないことを徹底したと言います。
「よく行くスーパーだとどこに何が置いてあるか頭に入っているので、入口から目的の食材のコーナーにだけ立ち寄って、他の棚は一切見ない」ほど、徹底して無駄を省いたそう。また、品揃えが豊富な大型スーパーに行くとつい目移りしていろんなものを買いたくなってしまうため、「コンパクトなスーパーで買物すると誘惑も減ります(笑)」とのことでした。
そうして藤堂さんはルーティン化された献立に則り、無駄のない買い物を徹底した結果、月9万円だった食費を6万円まで節約することに成功しました。
藤堂さんが節約をはじめて気づいたのは、「特売の罠」だったそう。献立をルーティン化する以前は、メニューに悩んでいる状態でスーパーに行っているので、つい特売になっているオトクな食材を買ってしまい、結局、使い切れずに終わったり、賞味期限切れにして無駄にしたりしていたんだとか。
また、子どもが大きくなったことで友だちと過ごす時間が増え、家でご飯を食べない日も出てきたことから、「子どもたちの予定もしっかり把握することと、献立ルーティン化のセットで節約がうまくできた」と分析されていました。
■「ついついファミレス」をやめて外食費を節約
2人のお子さんを持つ横尾修司さん(仮名/45歳)は、外食をスケジュール化したことで、節約に成功しました。
共働きで日々忙しい横尾さん夫婦。疲れがピークに達すると、保育園からの帰りにスーパーに寄って食事を作って……が面倒になり、ガストやサイゼリヤといったファミレスで済ませることがしょっちゅうだったそうで、外食費は月5万円になっていました。
なぜ外食してしまうかといえば、「作り置きがないから」だという結論に達し、週末に作り置きをすることで、どんなに疲れていても出すだけで夕飯ができる状況を作りました。
また、「外食をスケジュール化したことでその日が特別な日になって、子どもが喜ぶようになった」そうで、意外な効果だったと語ります。外食の日を誕生日や記念日に設定したことで“特別感”が出て、皆がその日を心待ちにするようになったんですね。結果、外食費を月1万円ほどまで削減することができました。
■ふるさと納税では「普段使える食材」を選ぶ
食材を研究したのは、ひとり暮らしをしている浜田裕貴さん(24歳/仮名)。もやしや豆苗といった、安くて価格が安定している野菜をアレンジするレシピのレパートリーを増やし、2万円も食費を節約できたそう。キャベツやきゅうりなど、その時々でとにかく安くなっている食材だけを使い、メニューを徹底的に研究するそうで、「それが楽しくなってきた」と語っていました。
浜田さんは“研究好き”で、ポイントも上手に活用。スーパーの特売日も把握し、「家計の手助けになるものは総動員」で、この物価高を乗り切っているそうです。
一食で考えれば数十円、数百円でも、塵も積もれば山となる。だからこそ、食費の節約は日々の努力の賜物だと実感します。
その他、ふるさと納税を活用している方もいました。ふるさと納税というと、カニや高級果物など、ちょっとした贅沢品を選ぶ方もいると思いますが、“食費節約勢”は、普段の食材こそふるさと納税を活用。お米はその筆頭ですし、冷凍の豚肉もさまざまな料理に利用でき、使い勝手がいいとのこと。また、小分けになった冷凍のねぎとろもあるそうで、解凍すればそのまま丼として出せることから、人気だそうです。
■ホームベーカリーの有効活用でパン代を節約
また、「6枚切の食パンを買ってきても4人家族だとあっという間になくなってしまう」ことから、ホームベーカリーをはじめた方も。焼き立てのパンは家族から大評判で、冷凍もできることから、大量に作って一気に冷凍しておけば節約になるとのこと。
一方、スーパーでは中食に力を入れているところが多いですが、今熱いのが、「ピザ」なんだとか。デリバリーのピザだと一枚数千円とかなり高額ですが、ヤオコーやサミットといったスーパーでは1000円以下で大きなピザを提供。そのクオリティの高さも話題になっています。
そもそも、物価高に負けない賃上げが必要な状況であることは言うまでもありませんが、一方で、身近にできる節約術を知っておいて損はありません。今回ご紹介した実例で、取り入れやすいものからチャレンジしてみるのがおすすめです。
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高山 一恵(たかやま・かずえ)
Money&You 取締役/ファイナンシャルプランナー(CFPR)、1級FP技能士
慶應義塾大学卒業。2005年に女性向けFPオフィス、エフピーウーマンを設立。10年間取締役を務めたのち、現職へ。全国で講演・執筆活動・相談業務を行い女性の人生に不可欠なお金の知識を伝えている。著書は『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『定年前後のお金の強化書』(きんざい)など多数。FP Cafe運営者。
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(Money&You 取締役/ファイナンシャルプランナー(CFPR)、1級FP技能士 高山 一恵 構成=小泉なつみ)