※本稿は、近藤悦康『増補改訂版 日本一学生が集まる中小企業の秘密』(徳間書店)の一部を再編集したものです。
■働きやすい環境に必要な「八つの感覚」
入社して良かったという会社を創るためには、働きやすい環境を作ることによって、社員の能力や可能性をよりたくさん引き出すことが大切です。しかし、働きやすい環境を現場の社員が作るのは難しいことです。これはやはり、経営者や幹部が築き上げる必要があります。
そして、働きやすい環境には、次の八つの「感覚」が組織の中に創られていることが必要です。
1.経営者・上司との信頼感
2.経営の方針・ビジョンへの共感
3.仕事において役に立てているという貢献感
4.この仲間と一緒に働きたいという一体感
5.評価や昇給・昇格に対しての納得感
6.自分や組織が年々成長しているという成長感
7.仕事の範囲と報酬の増加による期待感
8.家族のように大切にされているという安心感
■人の根本にある欲求をうまく制度化する
この八つの「感覚」の背景には、「愛褒必役感」というものがあります。人には、愛されたい、褒められたい、必要とされたい、役に立ちたい、感謝されたいという気持ちが根本的にあるのです。
そして経営者は、それらが満たされる組織環境をデザインしていくことが必要です。それも言葉で言うだけでは不十分なのです。目に見える制度・環境・言葉・ツールで“カタチ”に表すことが大事です。
社員を大切にしたい、豊かにしたい、と多くの経営者が口にします。
これから、創業以来の12年間でレガシードが行ってきた施策の一部を紹介します。もしも、これらのアイデアに共感できるものがありましたら、ぜひ、参考になさってみてください。
■社員教育は子育てと似ている
1.社員を大切にするのは当たり前、家族までも大切にする
経営者の役割の一つは社員を一人前に育て上げることです。社員教育は子育てに似ていると感じます。親が子どもの教育に対してできることは、いい環境を作ることではないでしょうか。社員教育も同じです。企業は社員が成長する環境を用意する必要があります。
子どもが勉強したくないと思っているのであれば、勉強したくなるような環境を用意する必要があります。同じように、社員が自ら成長したくなるような環境を企業が用意すればいいのです。
レガシードのプロミス「入社して良かったと言われ、永遠に愛され必要とされる会社」とはどんな会社かと問われたら、それは「良い家族」と同じであると考えます。
私は、良い家族とは、温かい人間関係があり、それぞれの価値観の尊重とお互いの応援があり、成長の機会があり、情報を共有して十分な経済力があることだと考えます。そしてなにより心身共に健康であることです。
■社員だけでなく、家族にも会社について説明する
内定者の両親と社員の家族を招く「就職披露宴」
会社に入社するということは、共通の目的を持った仲間と1隻の船に乗り合うということです。これは結婚に似ています。お互いの思いを尊重しなければなりません。ですから、レガシードでは、思いを同じくしているのは社員だけではなく、その家族にもまた、会社の方針やビジョンにご賛同をいただきたいと考えています。
そこでレガシードでは、「就職披露宴」を催しています。ここでは、内定者と社員の家族を招待し、レガシードのビジョンや事業内容を説明することから始まり、最後は内定者から両親に手紙を読み上げる場を設けています。
手紙には、これまで伝えられなかった親への感謝の気持ちが綴られています。そして両親も私たちに応援の言葉をかけてくれます。
創業したての企業にわが子が入社することは、両親にとって不安に違いありません。ですから会社にお招きし、会社の現状と未来を誠実にお伝えすることで安心してもらいたいのです。
家族が会社のことをプラスに思っているか、マイナスに思っているかで、社員がスランプで悩んだときに、両親からの声のかけ方が変わると思っています。
だからこそ、どのような会社であるのか、丁寧に説明させていただくのです。
他にも、事前に同意いただいたご家族の方には、新しく出版した書籍や会報誌をお送りしてご子息、ご息女の活躍や会社の状況をお伝えするなど、ご家族の方からも関心をお持ちいただけるような取り組みをしています。
■社員が仕事に没頭できるのは家族のおかげ
新入社員に初任給の日に渡される家族へ感謝を伝えるための金一封「家族感謝金」
レガシードでは、新入社員には社長から直接、初任給の支給日に「家族感謝金チケット」をお渡ししています。社会に出るにあたって、育ててくれた両親に感謝の気持ちを伝える機会を作ってもらうためです。プレゼントだけでなく、外食、旅行など、両親のために使うのであれば何でもよく、1万円分は会社が負担します。
社員の配偶者と子どもの誕生日には「メッセージ&プレゼント」
私はレガシードの創業当時から、お客様の誕生日には花やメッセージを送っています。また、社員の誕生日にはメッセージとプレゼントを渡し、毎月誕生月の社員を集めてモーニングを共にしています。
社員の配偶者と子どもの誕生日には、お祝いと感謝のメッセージを送ります。社員が仕事に没頭できるのは、パートナーがサポートしてくれているからだと考えているからです。
子どもには、おもちゃや書籍が買えるギフトカードを送ります。子どもが働く親を応援してくれると力が湧くということを、私自身が知っているためです。
■健康は「労働時間」だけでなく「食事、睡眠、運動」も重要
2.社員の健康を守り、ベストコンディションをキープする
最近、経営者として特に重きを置いているのが、社員の健康です。
それでは今は完全にホワイトかと言われると、まだまだ改善しなければならないことがたくさんあると考えています。それでも働く時間や休みの時間、そして仕事の負荷具合を調整して管理できる体制になってきました。
退社時刻をルール化した当初は、創業メンバーからの反発がありました。もっと仕事をしたいと思っているのに、なぜ帰らなければならないのか、と。そのような社員たちでしたから、結局、家でも仕事をしようとします。そこで一時期はパソコンの持ち帰りを禁止したこともありました。今は、パソコンを起動してから一定時間経過すると、自動でシャットダウンするシステムを導入しています。
経営者には心身共にタフな人が多いと思われます。しかし、経営者が自分と同じ基準で社員のことを考えるとだめです。仮に、社員が「まだできます」「大丈夫です」と言ってくれても、それを安易に信じないようにしなければならないと自戒しています。
また、健康については、「労働時間」だけではなく、「食事」「睡眠」「運動」といった人間の機能性を維持、向上させるための3大要素も重要視できるように、まだまだ制度や環境を整えていかなければならないと感じています。
健康だけがすべてではありませんが、健康を失うとすべてができなくなってしまいます。
■ジムの月額を補助する代わりに…
Oura Ringを活用した「健康促進手当」制度
健康を維持するための3大要素は食事・睡眠・運動と言われています。レガシードでは、このうち、睡眠と運動の管理・改善のために「Oura Ring」を活用しています。
Oura Ringとは高度なセンサーを搭載し、包括的な健康管理ができる指輪型のスマートリングのことです。このリングを着用すると、各々の指標を基に、「コンディション」「睡眠」「アクティビティ」の3つのスコアが測定されます。
このOura Ringを活用した福利厚生制度とは、月間で基準値以上のスコアを出した場合、月額1万円の「健康促進手当」を支給するというものです。1カ月の平均コンディションスコアが「80」以上(睡眠時間7時間以上+ジムなどの定期的な運動でスコア85程度)の人が支給対象です。
活用している社員からは、
「なんとなく体調が悪いと感じていましたが、毎日コンディションが数値化されることでその原因が明確になりました」
「目指す目標が明確なので、意識的に健康に気を遣うようになりました」
「朝起きたらまず自分の睡眠スコアを確認することが日課になりました」
といった声が届いています。
この制度の特徴は、「Oura Ring」の購入やサブスクリプションの費用に対して手当を出すのではなく、スコアが基準値を超えたら支給対象になる点です。この仕組みのおかげで、せっかく会社のお金を使っているのに渡して終わり、もらって終わりの制度になるのではなく、社員の健康促進に直結する制度になっています。
■バナナが食べられる「チャージスポット」
オフィスに「Charge Spot」を設置
健康維持のための3つの要素のうち、「食事」に関する取り組みとして「Charge Spot(チャージスポット)」をオフィス内に設けています。
ここでは、栄養バランスに優れた「バナナ」を、弊社クライアント様のご協力のもと毎週お届けいただき、常時用意しています。これまで、約40%の社員が「忙しさのあまり朝食や昼食を摂る時間がない」と回答するなど、社員の健康維持は大きな課題となっていました。しかし、Charge Spotの導入により、「1日1本バナナ」を習慣にする社員が増え、健康作りの意識がより高まっています。
今後は、バナナに加えて他のフルーツやプロテインなど、さらなる栄養補給の選択肢を増やすことも検討しています。
■パソコンは19時50分に自動シャットダウン
残業削減に経営者自ら本気になる「8(は)やく帰ろう」制度
レガシードの勤務体系は、フレックス制。8時25分から15時のコアタイムは全員出勤しなければなりませんが、5時から8時25分、15時から20時はフレキシブルタイムで、月単位の所定労働時間を満たすのであれば自分に合った出勤時間を決めることができます。
社員は、自分の月間の稼働時間を把握しながら、働く時間の調整を行います。そして、「8(は)やく帰ろう」という制度により、残業は20時までを上限とし、それ以降はオフィスに残ってはいけないと決めています。パソコンも起動から11時間経過するか、19時50分になると自動シャットダウンされるようにしています。
社員の一部からは、自分は夜型なので夜残れるようにしてほしいという要望を受けたこともありますが、私には朝型の組織のほうが絶対に強いという確信があります。また、長く働くのではなく集中して働き、家族との団らん、プライベート時間も充実させてほしいと思っています。
睡眠時間を確保する健康管理もビジネスパーソンの仕事の一つです。「8(は)やく帰ろう」を続けるためにも、生産性と付加価値の高いサービス提供ができる組織環境を作ることが、経営者の重要な責務となります。経営者が社員の残業を減らしながらも、今よりも利益を上げると決めることがスタートです。
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近藤 悦康(こんどう・よしやす)
レガシード社長
大学院に進学と同時に、人材教育会社に入社。営業部に配属される中、新しい新卒採用人事の仕組みを作り出し、1年間で2万人以上が応募する人気企業へと発展させた。その後独立し、人材採用と人材育成のコンサルタントを経て、2013年11月レガシードを設立。人材採用コンサルティング、社員教育・組織活性コンサルティング、学生向けキャリア教育事業などを手掛け、創業6年で応募者1万7000人企業にする。同社のユニークかつ画期的な人材採用コンサルティングの手法と採用活動が話題となり、テレビや雑誌をはじめ多数のメディアに採用の様子が取り上げられる。著書に、『伸びてる会社がやっている「新卒」を「即戦力化」する方法』(クロスメディア・パブリッシング)、『内定辞退ゼロ』(実業之日本社)などがある。
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(レガシード社長 近藤 悦康)