※本稿は、上村公亮著、鎌田和宏監修『不登校児ゼロ教師が伝える 親子の幸せな関係と居場所をつくる「子ども日記」』(かんき出版)の一部を再編集したものです。
■アナログな「交換日記」のススメ
子どもとのコミュニケーションをもっととりたいと思ったときにおススメしているのが「ラリー日記」です。
これは子どもとの交換日記です。お子さんの書いた文章に親御さんが感想を述べたり、親御さんが気になっていることを吐き出して、お子さんに読んでもらったりすることで、お互いの理解が深まっていきます。
「ラリー日記」は、基本的に、何でも話題にできると思いますが、ネガティブなことはなるべく書かないほうがいいでしょう。
「なんで妹に意地悪ばかりするの?」「呼んでも返事しないのはどうして?」のように攻撃的な書き方をしたら、お子さんは日記を書いてくれなくなります。
子どもの心に水を満たすのが「ラリー日記」の目的なので、優しい言葉、励ます言葉、褒め言葉でお子さんの心を幸せな感情で満たしてあげてほしいと思います。
■書くのは「ささいなこと」でOK
難しく考えず、お子さんの行動やお子さんとの会話で一番心に残ったことを書いてみてください。
「縄跳びでいっぱい跳べたね」
「学校の給食当番、頑張ったんだね」
「ご飯をつくっている間、弟と遊んでくれて助かったよ」
このように、日常のささいなことかまいません。
親御さんに受け入れてもらったと感じたら、お子さんは「明日はもっと跳べるように頑張るね」と、さらにチャレンジしようという意欲が湧いてくるでしょう。
■話題は親が引き出してあげる
お子さんのほうからどんどん話題を提供してくれるなら、それに合わせてコメントを返せばいいですが、「とくに何もない」という状況が続くこともあるかもしれません。
そういうときは、お子さんから話題を引き出してみてはいかがでしょうか。
私の場合は、娘に保育園で何があったのかを聞いて、「今日は竹馬頑張ったんだよ」という話が出てきたら、日記に「竹馬頑張ったって嬉しそうに話していて、なんかほっこりしたな」という感じで書いています。
小さいお子さんはとくに、日記に何をどう書けばいいのかわからないでしょうから、親御さんが話を引き出して、先に書いてあげるといいかもしれませんね。
そうすると、お子さんも「たけうまにちょっとのれてうれしかった」のようにコメントを書きやすくなると思います。
また、日常の中で起きたちょっとした出来事も話題にできます。
「ご飯をおいしいって言ってくれて嬉しかった」
「幼稚園のお話をたくさんしてくれて、ありがとう」
「顔を水につけられるようになったね」
このように、何気ない、本当にちょっとしたことも日記の話題になります。
■「ど」から始まる言葉が効果的
お子さんが書いていることに疑問を感じたら、「どうしてそう思ったの?」「これはどういう意味かな?」と率直に聞いてみるのが一番です。
日記のコメントでもいいですし、直接聞いてみてもいいでしょう。
親から見て、「これは問題行動だな」と思ったのだとしても、まずは聞いてみる。一方的に決めつけて怒ったら、もう日記に本心を書いてくれなくなります。
私は「ど」から始まる質問をよく使っています。
「どんな風に思ったの?」
「どうしてそう思ったの?」
「どこからそう思ったの?」
「どういう気持ちになったの?」
「どうやったらできたの?」
「ポケモンでいうと、どのくらいのレベル?」
いわゆるオープンクエスチョンですね。
コーチングでよく使われるスキルですが、「はい・いいえ」で答えられる質問を「クローズドクエスチョン」、自由に答えてもらう質問を「オープンクエスチョン」と言います。
オープンクエスチョンを投げかけると答えられないお子さんもいるので、そういう場合は「AとB、どっちだった?」と範囲を狭めてあげると答えやすくなります。
■「やればできるよ!」はNG
「ラリー日記」では、過度な応援や挑戦を煽る言葉はNGです。
「太郎君だったら、やればできるよ!」「失敗したら、またチャレンジすればいいんだよ」のような言葉は、かえって子どもにプレッシャーをかけてしまいます。
褒めるのは大事ですが、チャレンジするかどうかを決めるのはお子さん自身です。
誘導せずに、「よく頑張ったね」の一言で十分だと思います。
■3カ月取り組み続けたら、我が子に変化が起きた
「ラリー日記」を数カ月続けるだけで、お子さんにも親御さんにも変化が起きた例が続出しています。
我が家の例を紹介させてください。
娘が5歳のときからラリー日記を始めたのですが、最初はほんの数行書くのが精いっぱいで、字も震えていて、明らかに「文章を初めて書いている」という感じでした。
ところが、それから3カ月過ぎたころ、帰宅が遅くて先に寝てしまった娘が私に宛てて書いたメッセージを読んで驚きました。
■「ラリー日記」によって、文章力が明らかに向上
「きのうおとうさんがいなかったから、さみしかったよ
だからねハッピーせっとたべたんだよ
やっぱりおとうさんがいないとねれないよー
【中略】
おとうさんきょうのよるいるの
いないんだったらまたひとりでねれないよー
ながかったかな? ごめんね」
このように、自分の気持ちをしっかりと文章で表していたのです。それも、ノートを半ページくらい使って、長めの文章を書いています。
妻は、「こんな長文、私宛に書いてもらったことないなあ」と、ちょっぴり羨ましがっていました。
私も妻も字の書き方は教えましたが、みっちりと文章の基本を叩き込んだわけではありません。
おそらく、毎日少しずつ文章を書くうちに、書き方のコツをつかんでいったのでしょう。私と妻の文章も読んでいるので、自然と文章の書き方を学んでいるのかもしれません。
いずれにせよ、日記を続けるだけで文章力がアップするのは私も想定外だったので、嬉しい副産物だと思っています。これもアナログの日記の効用かもしれません。
■子どもの安心感とチャレンジ精神を育くむ
児童精神科医の田中哲さんは、「子どもの自信がない、つまり自尊感情が低下するのは失敗できないからだ」と説いています。
人の気持ちは「何でもやってみたい!」とプラスのほうに振れるときと、「自分にはなにもできないんだ」とマイナスなほうに振れるときがある。子どももプラスに振れているときは好奇心を丸出しにして「私、やってみる!」と冒険する気が起きるけれど、それは失敗しても大丈夫という安心感があるからだ、とのこと。
失敗しても支えてくれる人がいるから、安心して失敗できるのだという意見で、私もそれには賛成です。
「ラリー日記」で、その子どもが安心できる場をつくれます。
親が自分のどんな発言も否定しないで受け入れてくれたら、「ここは自分の居場所だ」と安心感が生まれるでしょう。
そして、安心感が生まれたら、何事にもチャレンジする意欲が湧いてきます。子どものチャレンジの芽を育てるのも摘んでしまうのも、親次第なのです。
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上村 公亮(かみむら・こうすけ)
特定非営利活動法人この子キャリア応援団団長
不登校児ゼロ教師。全国的に不登校が増え続ける中、学級担任したクラスでは不登校児ゼロ。延べ7000人の子どもとその家族、支援者を指導・助言。現在は、主に障がい児相談支援事業所や放課後児童クラブの巡回相談員として、発達凸凹の子やご家族、支援者をサポートしている。
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鎌田 和宏(かまた・かずひろ)
帝京大学 教育学部 教授、放送大学客員教授
東京都の公立学校、東京学芸大学附属世田谷小学校、筑波大学附属小学校を経て現職。 研究分野は教育方法(情報リテラシー教育・授業研究)、社会科教育。学校図書館を活用した授業の授業研究に取り組む。 著書・執筆に『小学社会』(文部科学省検定教科書、教育出版)など多数。
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(特定非営利活動法人この子キャリア応援団団長 上村 公亮、帝京大学 教育学部 教授、放送大学客員教授 鎌田 和宏)