仕事で集中したいときは、どんなことに注意すべきか。管理栄養士の森由香子さんは「集中するためにエナジードリンクを飲む人がいるが、飲み方によってはむしろ疲労感を高めてしまい集中力を奪う恐れがある。
集中力を高めたければ、軽い運動をしたほうが効果的だ」という――。(第3回)
※本稿は、森由香子『疲れない人の上手な食べ方』(青春新書プレイブックス)の一部を再編集したものです。
■アルコールと肉加工食品の組み合わせは要注意
一日の疲れを癒すため、ストレス発散のため、毎晩晩酌を楽しんでいる方も多いと思います。もちろん、それ自体は悪いことではありません。問題は、晩酌で何をどれくらい摂取するか、ということです。
人気の晩酌メニューのひとつが、生ビール、ワインなどのアルコールと、生ハム、ソーセージ、サラミ、ジャーキー、パストラミなどの肉加工品との組み合わせではないでしょうか。確かに、この組み合わせはとてもおいしく、味の面では最高です。しかし、おいしいからといって、この組み合わせで晩酌を続けていると、つい食べすぎ・飲みすぎになりがちです。
そして、知らず知らずのうちに胃腸、肝臓、腎臓が酷使され、気づいたときにはすっかり疲れやすい体になっていた……なんていうことになりかねません。
まず、胃と肝臓が疲れてしまいます。胃腸の調子が悪くなれば消化不良を起こし、疲労回復に役立つ栄養素を含む食品の消化吸収がうまくいかなくなります。その結果、体の中に大事な栄養素が取り込まれなくなってしまいます。

肝臓の調子が悪くなれば、糖質、脂質、たんぱく質の代謝がうまくいかなくなります。エネルギー不足やビタミン類、ミネラル類の不足から、体に必要な栄養素が全身に行き渡らなくなり、その結果、疲れやすい体になってしまいます。アルコールの飲みすぎが脂肪肝を招き、ひいては全身の倦怠感を引き起こすことは、改めて言うまでもないでしょう。
■胃腸や腎臓に疲れが溜まっているおそれも
さらに、生ハム、ソーセージ、サラミ、ジャーキー、パストラミなどの肉の加工品を食べすぎると、過剰なナトリウム(塩)摂取につながり、腎臓に負担がかかってきます。腎臓は血液を濾過し、尿を生成して体の水分量やナトリウムなどの濃度を調節するところなので、塩辛いものを食べ続けていると、どうしても腎臓が疲れてくるのです。
仕事も順調で、毎晩気持ちよく晩酌をしているのに、どうもイライラしたり、倦怠感を覚えたり、疲労感がとれなかったり、風邪をひきやすかったり、アルコールがいつまでも抜けないと感じている方は、もしかしたら、胃腸や肝臓、腎臓が疲れているのかもしれません。
特に、生ハム、ソーセージ、サラミ、ジャーキー、パストラミなどの肉加工品は脂質も多く、要注意です。メインのおつまみにはせず、少量に留めて楽しみましょう。
■サプリメントは飲み方によっては逆効果になりかねない
毎日忙しくて食事に気を配っていられない人や、疲れやすい人、健康に不安を感じている人の中に、サプリメントを愛用している方が多く見受けられます。
サプリメントは、海外旅行などで野菜不足を感じたときや、仕事が忙しくて食事がおろそかになっているときなど、手軽に栄養素が補給できるので、とても便利です。しかし、サプリメントは「とればいい」というものではありません。あくまでも用量を守らないと、栄養補給どころか、思わぬ結果を招くことになりかねません。

まず心配なのが、ビタミンA、亜鉛などの過剰症です。ビタミンAを過剰に摂取すると、肝臓障害や脂質代謝に影響を及ぼし、疲労感をもたらす可能性があります。
亜鉛は継続的に大量に摂取すると、抗酸化酵素の働きを弱めたり、鉄の吸収を阻害して貧血を起こしたりすことで、結果的に疲労を引き起こします。また、添加物による肝臓への影響も心配です。サプリメントの多くは、加工する過程で添加物が使用されていますから、大量に摂取すれば、添加物も大量に摂取することになります。
添加物は体にとって異物であり、その異物を解毒するのが肝臓です。日頃の食事からの栄養不足を補うため、サプリメントをあれもこれもとたくさんの種類を大量にとると、肝臓に負担をかけてしまいかねないのです。
これは、知り合いの医師から聞いたのですが、ご自身がサプリメントを飲みはじめたら、疲労感や倦怠感を覚えるようになり、肝臓の状態を示す血液検査値もグーンと悪いほうにはね上がってしまったそうです。サプリメントと検査値の因果関係は不明ですが、その後サプリメントを中止し、しばらくしたら、疲労感や倦怠感も消えて、血液検査値も元の正常な値に戻ったとのことでした。
■疲れている人ほどスタミナドリンクはNG
ちなみに、2015年4月から機能性表示食品制度がはじまりました。機能性表示食品とは、事業者の責任で科学的根拠をもとに、商品パッケージにその機能性を表示するものとして、消費者庁に届け出られた食品です。
この食品の中には、サプリメントも含まれています。
つまり、この制度によって、より効果的なサプリメントを選ぶことができるようになったのです。せっかく健康のためにサプリメントを利用するのですから、自分に本当に必要なものを選び、機能性や用法・用量をよく読んで、効果が得られる使い方をしましょう。
仕事で正念場をむかえるとき、寝不足のとき、風邪気味のときなど、スタミナドリンクをグイッと飲み干すと、濃厚な味わいがのどを通った途端に元気がわいてきたような気がします。でも、そのあとずっと、本当に元気が続いていますか?
スタミナドリンクの成分表示を見ると、果糖ブドウ糖液糖、無水カフェイン、生薬エキス、タウリン、ビタミンB群、アルコールなど、一見、疲労回復、滋養強壮に効きそうなものばかり入っているように見えます。
しかし私は、本当に疲れている人に、決してスタミナドリンクはおすすめしません。なぜなら、スタミナドリンクは、一時的に疲れがとれたような気がするだけで、本当に疲労を回復させてくれるわけではないからです。
■疲労をごまかしているだけで、回復はしない
確かに、ドリンクに含まれている、生薬エキス、タウリン、ビタミンB群などには、疲労回復効果がないわけではありません。しかし、果糖ブドウ糖液糖、無水カフェイン、そしてアルコール。この3つの成分がクセモノなのです。
無水カフェインとは、カフェインから水分子を除去して純粋にカフェインとして精製したもので、コーヒーや紅茶に含まれるカフェインと同じ働きをします。カフェインは脳や筋肉を刺激する興奮作用があります。そして、カフェイン中毒という言葉があるように、毎日、とりすぎれば、カフェインなしではいられない状態になる弊害も考えられます。

果糖ブドウ糖液糖は、ブドウ糖の一部を酵素によって果糖に変えたもので、ブドウ糖と果糖が混ざった異性化糖と呼ばれる液体です。100gで283キロカロリーもあります。ご存じのようにブドウ糖はすぐにエネルギーに変わります。しかし、エネルギーに変わらなかった分は体脂肪に変わり、肥満の一因となります。
このためアメリカでは、果糖ブトウ糖液糖などの添加糖類の量を明確に明記するように義務づけられています。アルコールについては、改めて説明の必要はないでしょう。つまり、スタミナドリンクを飲むと、カフェインによって目がシャキッと覚め、果糖ブドウ糖液糖がすぐにエネルギーに変わり、微量のアルコールで気分も高まります。
しかし、繰り返しになりますが、これはあくまでも一時的なもので、本当に疲労が回復したわけではないのです。本当に疲労を回復、軽減するには、睡眠を十分とる、気分転換をする、軽く運動をする、そしてキチンとした食事をとるなどしない限り、魔法のように元気が出る方法などありません。
スタミナドリンクは、一時的に疲労を忘れたいときだけ利用するといいでしょう。

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森 由香子(もり・ゆかこ)

管理栄養士

日本抗加齢医学会指導士。東京農業大学農学部栄養学科卒業。
大妻女子大学大学院(人間文化研究科人間生活科学専攻)修士課程修了。2005年より、東京・千代田区のクリニックにて、入院・外来患者の血液検査値の改善にともなう栄養指導、食事記録の栄養分析、ダイエット指導などに従事している。また、フランス料理の三國清三シェフとともに、病院食や院内レストラン「ミクニマンスール」のメニュー開発、料理本の制作などを行う。抗加齢指導士の立場からは、“食事からのアンチエイジング”を提唱している。『おやつを食べてやせ体質に! 間食ダイエット』(文藝春秋)、『1週間「買い物リスト」ダイエット』(青春出版社)など著書多数。

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(管理栄養士 森 由香子)
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