※本稿は、池田千恵『朝15分からできる! 週末アウトプット』(日本実業出版社)の一部を再編集したものです。
■話しベタだった私が講師になれた
私は現在、プレゼン、資料作成、思考整理など、「物の考え方、伝え方」についても講演や研修活動をしていますが、実は昔は人前が怖く、本番に弱かったのです。世の中には書くより話すほうがラクという方もいらっしゃいますが、私は話しベタだったので未だに書くことより話すことのほうがハードルが高く感じます。
友人2人とともに「ネオアラフィフの休憩室」というポッドキャストを配信していますが、いつも私だけ「あのー、そのー」が抜けず、編集の手間をかけてしまっている始末です。
小学校のときの授業中、演劇の感想をひと言言いなさい、と先生に指名されて、2~3分無言で立ち尽くしてしまったときのことを思い出すことがあります。先生はあきらめて、「もういい」と言って私を座らせました。言葉がうまく出てこなかったあのときの無力感はいまでも思い出すとちょっとつらくなります。
話すことはすぐに反応が見えて怖いですよね。とっさに言葉をまとめようと思っても、もたもたしてしまいますし、相手に「え?」と聞き返されると、自分が悪かったのではないか、とドキドキしちゃいますよね。でも大丈夫です。「話す」ことに勇気や心がまえは要りません。
■前提となる3つの心構え
「話す」のパートに入る前に、まずはこの3つを意識してみましょう。
① どんな小さなアウトプットにもゴールを決める
② 失敗はつきもの。教訓を次に活かす
③ 過去の失敗を思い出して「うわあ!」となっても、「でも大丈夫!」と唱える
①どんな小さなアウトプットにもゴールを決める
これは、狙いを定めるという意味で、とても重要な訓練になります。「あの人から、こういう反応がもらえたら成功!」といった感じで、反応をもらいたい相手を決めて、その反応も予測してゲーム化するのです。
これは発信に限りません。たとえば家族とのやりとりでも有効です。「母親にこういう返事をしてもらうためには、こういうふうに言えばいいかな?」のように想像して、狙って話すことを意識してみましょう。
②失敗はつきもの。教訓を次に活かす
自分の考えが否定されたらどうしよう、とか、断られたらどうしようと思いますよね。
私もずっと怖いです。でも、チャレンジし続けているおかげで、怖さにだんだん慣れてきました。
思った反応を得られなかったり、注意されたり、「こんなことやっちゃだめだよ」と言われるときもあると思います。それでも経験値は増えて、「じゃあ、次はこうしよう!」と、違う方向でチャレンジできるようになります。なので「はい、次!」「はい、次!」のような感じで進めていきましょう。
③過去の失敗を思い出して「うわあ!」となっても「でも大丈夫!」と唱える
それでもやっぱり過去の失敗を思い出し「うわあー!」ともだえるときもあります。私もしょっちゅうあります。そんなときは「でも大丈夫!」と自分に言い聞かせてみましょう。
「うわあー!」と過去の失敗を思い出したときは、すかさず、何も考えずに即!「でも大丈夫!」と声に出します。声に出せるタイミングでない場合は、心で唱えても問題ないです。これは全く根拠がない、私のおまじないみたいなものですが、気分がリセットされて、「はい、次!」と思えるようになりますよ。では、早速始めていきましょう。
■「理由は3つあります」と言ってから考える訓練を
「話が長い」「何を言っているのかわからない」「要点は何?」と言われることが多い場合は、まずはなんでも3つにまとめることを癖づけしていきましょう。
「マジックナンバー3」とよく言われます。人は一度に多くのことは覚えられません。物を支える最小単位が3で、忘れにくくて安定する最小単位が3です。ここでのポイントは、いったんロジカルシンキングを忘れることです。真面目で勉強熱心な方ほど、「3つあります」と最初に言ったからには、ロジカルに、モレなくダブりなく3つを用意しよう、と思いがちです。
でもそうではなく、モレがあっても、ダブりがあっても、とにかくこじつけでいいからまずは3つ、なんとか無理やりひねり出すことです。簡単にアウトプットできるよう、まずは練習して習慣化するのが目的です。「モレなくダブりなく」することはそのあとで考えればいいことです。
最初に「3つあります」と言ってから考えるようにすると、きちんと頭で逆算して、答えを用意しようと頭が働きます。
■コンサルタントが使う「3大フレームワーク」
「3つあります」に少しずつ慣れてきたら、今度は「型」を使ってみましょう。何を、どの順番で話せばいいか迷うときは、コンサルタントなら必ず使う「型」を覚えることをおすすめします。型があると自然にその「型」を埋めようと頭が働くようになるので、考える時間をショートカットできます。
一般に、「型にはめる」という言葉はあまりいい意味で使われません。おもしろみがないとか、創造性がないというイメージがあるからでしょう。しかし、考えがまとまらないうちは、あえて型にはめないと、思考があちこちに飛んでしまって収拾がつかないことがあるのです。
あえて型にはめてみると、いままで堂々巡りで解決できなかった問題の具体的な解決方法が見えてくることも多いです。
コンサルタントが必ず使っている3大フレームワークを覚えて、アウトプットに活用してみましょう。次の順番に沿って話すだけで、ロジカルでわかりやすいと言われるようになります。3つのフレームワークに共通しているのは、「サンドウィッチ」のように最初に主張を話し、最後にも同じ主張を話すことです。
フレームワークその1 PREP
●Point(主張)
●Reason(理由)
●Example(事例)
●Point(主張)
フレームワークその2 CRF
●Conclusion(要するに)
●Reason(理由※あまり多いと覚えられないので、最高3つまでが望ましい)
●Fact(事実)
フレームワークその3 SDS
●Summary(要約)
●Detail(詳細)
●Summary(要約)
■型を使って伝わるコミュニケーションに
実際に、「型」を使ってアウトプットを実践している例を紹介します。
また、さとコーチは、日々のニュースを題材にして、子どもが自分の頭で考えるようになるには大人がどう声かけするかというヒントをインスタ上で提供しています。さとコーチの「型」は、このようになっています。
子どもに話しておきたい本日のニュースは?
↓
子どもに話すシチュエーションの紹介(例:スーパーに一緒に行ったときの会話など)
↓
ニュースの概要
↓
ニュースの影響で、いまどんなことが起きている?
↓
なぜ、そうなっている?
↓
自分で考えてみよう
最後に、自分で考えてみて「これって、どうなのかな?」「将来どうなるかな?」という答えがないところも含め、提示して終わる形になっています。これは「PREP法」と「CRF法」の組み合わせのような形になっていて、主張→要約→理由→主張のような流れで展開します。
このように、厳密にどれかの型に合わせるのではなく、いくつかの型を組み合わせて自分オリジナルの型をつくるのもおすすめです。
■“プチマウンティング”するのが相手への思いやり
もうひとつ大事なのが「度胸」です。ここでは度胸をつけるプチマウンティングの方法をご紹介します。「マウンティング」とは、相手と自分を比べて、自分が優位であることを明らかにすることで、コミュニケーションでは「自慢」と受け取られて嫌われる文脈で使われることが多いです。でも、自分の知識や経験をアウトプットする場では、時にはマウンティングも必要です。
専門知識を話そうとすると「えらそうにと思われるんじゃないか」と心配になったり、「自分もできていないのに、こんなことを言っていいのだろうか」と不安になったりしますよね。
私がこのことに気づいたのは、学生時代でした。塾のアルバイトで「先生」として高校生と個別面談することになりました。私は「先生」の立場がはじめてだったのでよかれと思って最初の自己紹介で「私、この面談をするのがはじめてなんです。どうぞよろしくお願いします」と挨拶したところ、学生の顔が明らかに不機嫌になったのです。
「お前のはじめてとか、関係ねーし」と言っているような顔を見て「まずいことを言ってしまった!」とハッとしました。アルバイトという立場ではじめて経験するからといってへりくだったり、甘えるような態度を示したりするのは、むしろ相手にとってとても失礼なのだと気づきました。
この経験から、自分の立場によっては、しっかりと自分の優位性をわきまえて、本来の意味での「マウンティング」をしっかりとすることが相手への思いやりであり、やさしさなのだと気づいたのです。
そういえば、中学生のとき歯科医に「あなたの歯並びは難しくて、矯正がうまくいくかわからないけど治療させてほしい」と言われて、怖すぎて断ったことがあります。結局、高校のときに、いまでも大変お世話になっている歯科矯正のプロの先生にお願いして歯並びはキレイになりました。
教える立場の「難しい、できるかわからないけどやってみる」は、仮に心の中で思っていたとしても表に出してはいけないのです。
■信頼してもらうための言い回し
とはいえ、次のような気持ちがわいてしまうと、しっかりと自分の実績や経験を伝えるのに抵抗がありますよね。
・別にすごくない
・私よりももっとすごい人がいる
・専門家を名乗る資格がまだない
・恥ずかしい
そう思う気持ちも、とてもよくわかります。でもあえて、「自分はこれを言う資格がある」とはっきり言わなければいけません。人を騙せと言っているわけではありません。
皆さんは本当にすごいんです。いままで得てきた経験や事実は本当のことなので、それについて最初にしっかり話しましょう。
最初に宣言して、「この人は信頼できそうだ」と思ってもらうのが鉄則です。はっきり伝えるのは傲慢ではなくて優しさなんです。そう思うとやりやすいと思います。もちろん、最初は難しいと思いますので、ノートやPCに、「自分がマウンティングするとしたら?」の視点でどうするか書き込んでみましょう。
具体的には、話したり書いたりしなくていいので、心の中で「○○な私が通りますよ」と唱えてみましょう。
・経理の経験12年の私が通りますよ
・フルマラソンを完走した私が通りますよ
・半年で5キロのダイエットに成功した私が通りますよ
・人事経験10年の私が通りますよ
たとえば、これをそのまま口に出したらちょっと嫌な人かもしれませんが、自慢ではなく事実ですから、そのつもりで話すくらいのマインドでいると、実際に話すときはちょうどいい感じに専門性を発揮できます。
まずいったん心の中で「○○な私が通りますよ」と言ったあと、普通に「私はこういう経験があるのですが」と翻訳して話すことで、盛っているわけでなく説得力も増します。
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池田 千恵(いけだ・ちえ)
朝イチ業務改革コンサルタント
二度の大学受験失敗を機に早起きに目覚め、半年の早朝勉強で慶應義塾大学総合政策学部に入学。外食ベンチャー企業、外資系戦略コンサルティング会社を経て、2009年に『「朝4時起き」で、すべてがうまく回りだす!』(マガジンハウス)を刊行。ベストセラーとなり、「朝活の第一人者」 と呼ばれるようになる。夜型から朝型に変えた実体験と多くの人の早起き習慣化を指導した実績をもとに、2010年より朝専用手帳『朝活手帳』をプロデュース。10年連続で発売する人気手帳となる。「朝1時間」の業務改革による生産性向上、働き方改革 のための手法を企業に指導しているほか、個人に向けてはキャリアに迷ったとき自分の将来を真面目に楽しく語り、学びたい人向けの朝活コミュニティ「朝キャリ」を主宰。2020年4月現在4歳となる男児を育てるワーキングマザー。
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(朝イチ業務改革コンサルタント 池田 千恵)