会話のキャッチボールをスムーズにするにはどんなところに注意をすべきなのか。心理カウンセラーの五百田達成さんは「年上世代に注意が必要なのは、知らずにうちに上から目線にならない、また『要するに』『結局さ』などと相手が話している内容を途中で勝手に切り上げない、といったルールを守ることだ」という――。

※本稿は、五百田達成『本当に頭がいい人の話し方 会話IQ』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。
【謙遜力】
■×「何だと思う?」と得意げにクイズを出す

○「釈迦に説法ですが」と下手に出る
×「ゴルフで一番重要なショットって何だと思います?」(普通に教えてよ……)

×「いま一番人口が減ってる県はどこでしょう? ヒントは~」(どうでもいい……)

×「この映画、誰が撮ったかわかる? ほら、考えてみて」(興味ない……)
すぐにクイズを出したがる人がいます。
自分が知っている情報や知識を「すごいでしょう?」と自慢したいので、質問形式にして相手に考えさせようとする。相手も興味があると疑わない。誤答に対して「ブブーッ!」と言ったり、得意げにヒントを出したり。それでいて、サクッと正解を言われると不機嫌になる……。
相手からすると、ウンザリです。
「めんどくさいなあ」「どうでもいいなあ」と、イライラしてしまいます。
そもそも「教える」という行為は「上から目線」と受け取られかねない性質を持っています。ごく普通に「○○は●●ですよ」と伝えただけでも、「知ってたよ」「うるさいなあ」「偉そう」と思われてしまいがち。それなのに、意気揚々とクイズを出そうものなら、反感を買ってしまいます。
キャッチボールで言えば、グローブの中のボールをもったいぶって、なかなか投げない。
そのくせ投げたと思ったらうるさく「ちゃんと捕って」と要求してくるようなものです。
■「上から目線」にならないために
○「パターが一番重要なんですって、知ってました?」(知らなかったです!)

○「俺も詳しくないんだけど、秋田県らしいよ」(へー、そうなんですね!)

○「釈迦に説法だとは思うんだけど、是枝裕和が撮ってるよね」(そうだね!)
会話IQが高い人は、クイズを出しません。
自分の知っている知識や情報を共有する際、持って回った言い方をせず、素早くシンプルに差し出します。そのほうが喜ばれると知っているからです。
ときには、「釈迦に説法ですが」「素人考えですが」といった言葉を添えることもあります。こうすることで「知識を自慢している」「偉そうに教えてくる」という、上から目線な印象を与えないようにしているのです。
ちなみに「大先生ならご存知かと思いますが」「私なんかに言われたくないと思うんですけど」などと過剰に持ち上げたり卑下したりしないようにしましょう。あくまでサラッと、シンプルに、がポイントです。
「ものを知っている」だけでは十分ではありません。「知っていることを、いかに上手く伝えられるか」こそが会話IQ。キャッチボールも、ボールをこねこねしてないで、さっと投げる、捕ってもらったら感謝して、自慢げな顔をしない、ということです。
★頭がいい人は、持って回らない
【忍耐力】
■×「要するに」とまとめる

○「どう思う?」と続ける
×「要するにさ、気持ちが折れた、ってだけのことでしょ」(決めつけられた……)

×「結局さ、機会損失をどれだけ避けるか、が課題だろ?」(それだけじゃない……)

×「ひと言で言ってくれる? 簡潔にさ」(そんな簡単に言えない……)
「要するに」と話し始める人がいます。

長くなって出口が見えなくなってきた話を、ビシッと結論づけたい。これ以上話してもキリがないので、この辺で終わらせたい。「効率的」「論理的」を自負している人に多い傾向です。
こういう人は、「私がわかりやすくまとめてやった!」と得意げ。ですがその裏には不安や焦りも見え隠れします。
というのも、話を終わらせたいのは完全に自分の都合。「飽きた」「話を見失った」「自分が中心じゃなくなった」、その状況に耐えられないので、半ば強引に会話の主導権を取り戻そうと、話を終わらせるわけです。これではまるで、大人の会話に飽きてしまった子どもです。
相手からすると「もっと話したかったのに」「勝手に“要さ”ないでよ」と不満が溜まりますし、「私の話に興味ないのかな?」と不信感も募ります。
キャッチボールで言うなら、突然大きく振りかぶって速い球を投げて「これで終わり!」と仁王立ちするようなもの。相手は「いきなり?」と驚いてしまうでしょう。
■勝手に話を切り上げない
○「気持ちが折れた、ってこと? どう?」(そうかもしれません、あと~)

○「機会損失は避けたいよね。
どう思う?」(僕はそう思わないんですよ~)

○「全然バラバラでいいから、感じたことを聞かせてよ」(じゃあ言いますね~)
会話IQが高い人は、自分勝手に話を終わらせたりしません。
仮に目の前の話についていけなくなったとしても、それを表に出さず、じっくりと腰を据えてつきあいます。
出口の見えない話も、雑にまとめることはしません。ひとしきり自分なりのまとめを言ったら、最後は必ず相手にバトンを渡し、「……というふうに思うんだけど、どうかな?」とリアクションを待ちます。
本気で話を終わらせたい場合には「ごめん、話変えていい?」と合意を取る。そのほうが「飽きた!」「要するに」と一方的に終わらせるよりも、よほどフェアです。
キャッチボールは相手あってのもの。「疲れたから終わろう」にしろ「ボールを替えよう」にしろ、その都度相手の了解を取りながら行うべき。会話IQが高い人はきちんとそれをやっています。
★頭がいい人は、自分の都合で“要さ”ない

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五百田 達成(いおた・たつなり)

作家・心理カウンセラー

1973年生まれ。東京大学卒業後、角川書店、博報堂をへて独立。コミュニケーションをテーマに執筆・講演を行う。
察しない男 説明しない女』ほか著書多数。

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(作家・心理カウンセラー 五百田 達成)
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