■10月からポイント付与が禁止になる
ふるさと納税は9月のうちにやっておくべきです。その理由は10月からルールが改悪されるからです。具体的には、ふるさと納税仲介サイトが付与するポイントが10月以降、禁止されます。
※編集部註:本稿で取り上げる返礼品やポイント条件は執筆時点における筆者の場合です。返礼品の品切れのほか、ポイント条件が個人や時期によって異なる場合があります。最新の情報はご利用のサービスにてご確認ください。
たとえば私はLINEヤフーのプレミアム会員(LYPプレミアム会員)なので「Yahoo!ふるさと納税」の直営店では最低でも10%のポイント還元になります。
さらに市町村によってはふるさと納税サイト上で表示が有利になるように、お金を払っています。
そして、私の場合はYahoo!ふるさと納税のランキング上位にくる自治体は軒並み「最大12.5%獲得」などと高いポイント還元率が表示されています。
このポイント還元競争がルールが改悪されることになったきっかけでもあります。ふるさと納税の返礼品は寄付額の30%が上限と決められているのですが、それに加えてポイント還元が12.5%となると、ポイント分を負担した場合の自治体の持ち出しは単純計算で42.5%、実際には仲介経費も発生しますので5割以上が経費に消えてしまいます。
政府としてはふるさと納税の寄付金は地方創生に役立ててほしいと思っているのに、半分近くが消費者還元されてしまうのは問題だとして、この制度が禁止されることになったのです。
■サラリーマンへの実質的な減税と同じ
さて、今月(9月)中はルール改正前です。納税者の立場で考えればルールが変わる前にできるだけ税金を取り戻しておきたいというのが本音でしょう。経済評論家の立場で、どうすればいいのかを指南したいと思います。
この記事では、私が使っているYahoo!ふるさと納税での私の還元率をもとに実質価格を計算します。実際は「楽天ふるさと納税」や「さとふる」、「ふるなび」などの仲介サイトそれぞれでポイント還元の条件は異なります。時期によってキャンペーンで大幅にポイントがもらえる場合もあるので楽しんで比較してみてください。
では始めましょう。私の家族は私を含めて納税者が3人います。ふるさと納税サイトでは収入に応じてどれくらいまで寄付しても大丈夫かを計算できます。それによればわが家は上限で20万円ほどふるさと納税できることがわかりました。さっそく買い物です。
ふるさと納税は俗に「官製通販」と呼ばれる制度で、形式的には翌年に支払い予定の住民税に相当する金額を今年のうちに地方自治体に寄付するのですが、実質的には2000円払うだけで寄付した金額の3割に相当する全国各地の名産品が手に入ります。
寄付した金額分だけ翌年の住民税が安くなりますので、持ち出しは2000円だけです。わが家の場合、20万円を寄付すれば返礼品は6万円分、さらに今月中に実行すればポイントが最低2万円分もらえますから合計で8万円も家計が助かることになります。
これは日ごろ真面目に納税しているサラリーマンへの実質的な減税と同じですから、とにかく該当する人は使わないと損だと私は思います。
■ふるさと納税戦略はスバリ「生活防衛」
では具体的に何を買えばいいでしょうか? 経済全体がインフレに向かっている今ですから、経済評論家としてお勧めするふるさと納税戦略はズバリ「生活防衛」です。
なんといっても最初に買うべきはお米でしょう。
お米の産地の自治体ではふるさと納税を通じた新米の先行予約を受け付けています。わが家の場合、お気に入りは山形県産の「つや姫」です。昨年はふるさと納税で10kgを入手したのですがあっというまに消費してしまいました。今年は20kgを買おうと思います。
山形県川西市での本稿執筆時の条件は新米の先行予約受付で10kgの納税額が2万8000円で、さらに12.5%のポイント還元の表示になっています。いったいいくらの新米が手に入るのかを計算してみましょう。
返礼品のお米の価格を寄付額の30%として計算すると10kgが8400円、市販の5kgの大きさに換算すると4200円(税込)です。近所のスーパーと比較すると、銘柄米が税込4000円~4600円が直近の相場のようなので、ふるさと納税での新米はそれと同じ水準で先行販売していることになります。
一方でまだ情報が確定していませんが、今年の猛暑の影響で今年の秋に出荷される新米は、去年以上に価格が上がるのではないかという専門家の予測があります。ですから「今のうちに新米を予約しよう」というのが経済評論家としてのアイデアです。
■もらえるポイントを考慮すると…
さて、ここからの計算が妥当かどうかについては異なる意見があるかもしれません。もらえるポイント分のPayPayを考慮したらどうなるのかという計算です。この寄付をYahoo!ふるさと納税で行うと、10kgのつや姫以外に、Yahoo!ショッピングで使える限定ポイントを含めポイントが3500円分もらえます。
このポイントはYahoo!ショッピングで3500円として使える現金と同じですから、さきほどのお米の価格からこのポイント分を差し引いた方がより実情を表すと考えられます。すると5kgのつや姫はなんと実質2450円(税込)になります。これならば、ほぼほぼ2年前にお米のインフレが始まる前の価格に近づきますね。
ちなみにこの価格でも、実は去年のふるさと納税よりも1.7倍値上がりしています。私は去年のこの時期もお米の値上がりを予想してふるさと納税を申し込んだのでした。
■次に狙うべきは「トイレットペーパー」
さて、わが家の場合はお米を入手した後も、まだまだふるさと納税で買い物ができます。生活防衛のためですから、生活必需品に絞って戦略を立ててみます。
次に選ぶべきものはトイレットペーパーをお勧めします。わが家ではトイレットペーパーのブランドはスコッティ(シングル)に決めています。調べてみると製造元は秋田県か宮城県か静岡県か熊本県。その中から個人的に恩義のある秋田市で納税してみます。
寄付金額2万3000円で、3倍長持ちタイプのスコッティフラワー4個入りが12パック送られてきます。これなら一年分持ちそうです。
お米と同様に計算してみます。近所のドラッグストアでこの商品は特売で税込439円で販売しています。一方で納税額の30%で計算すると返礼品は1パックあたり575円ですからドラッグストアよりも割高ですね。
Yahoo!のサイトではPayPayポイントが12.5%還元されるので、その2875円分を差し引いて返礼品のトイレットペーパーの価格を計算し直すと1パック335円(税込)で手に入ったことになります。
■意外とお金がかかる「プロテイン」
今回は「ふるさと納税をサラリーマンの生活防衛に役立てる」という視点でお話をしています。その視点では生活必需品として買わなければならないものの中で、比較的高額な生計費の負担が大きいものを探すのがポイントです。
私の場合、その視点にぴったりとあてはまるのがプロテインです。私も還暦を過ぎたせいで筋肉量が落ち始めています。食生活の中でタンパク質を摂取する量が減るからなのですが、それを補うために軽い運動のあとにホエイプロテインを飲むようにしています。
これが一カ月あたり4000円ぐらいかかるのです。しかも生活必需品で買わないわけにはいかない。こういったものがふるさと納税候補としては最適です。
またプロテインは飲みづらいので味も結構重要です。個人的なお勧めですが埼玉県の川越市で不二家でおなじみのミルキー味のプロテインを製造しています。
さてここでもう一度、ここでやっていることが経済的にどういう意味を持っているのかを確認してみます。
■マクロで見れば「大盤振る舞い」すぎた
ふるさと納税は地方自治体からみるとふたつの意義があります。ひとつは居住者以外から税を得られること。もうひとつが地元で生産する商品を「官製通販」として販売できることです。特に後者の経済効果は、返礼品を受け取った人がリピーターになることでふるさと納税以上に広がります。
わが家の場合、ふるさと納税がきっかけで山梨のシャインマスカットのファンになり、ふるさと納税を越えて今では日常的に買い求めるようになりました。
一方でわたしたち、ふるさと納税をする側にとってはどうでしょうか? サラリーマンの場合、住民税は、給料日に自動的に給与から天引きされます。ふるさと納税を上限の範囲内で行うとして追加で払うのはわずか2000円で、寄付した分だけ翌年の住民税が減ります。それに対して手に入るものは返礼品と(9月中ならば)ポイントです。
わが家の場合、20万円の住民税がふるさと納税に置き換わったことで追加の持ち出しは2000円だけ。それで返礼品6万円とポイントが最低でも2万円、上乗せポイントの分を加えるとさらにたくさん手に入ります。
つまり収支で考えると、国と自治体から実質合計で8万円以上も、わが家にお金が返ってくる計算になるのです。制度を作ってくれた菅元総理にありがとうと言いたくなります。
ただこの還元はやはりマクロで見れば大盤振る舞いすぎたということでしょう。来月(10月)からはポイントが禁止され、ふるさと納税で還元されるのは返礼品の30%分のみということになるわけです。
■贅沢品にパーっと使う「ハレ消費」もアリ
さて、最後に経済評論家として別の戦略を紹介しましょう。
今回お伝えしたように、今の日本経済の状況下ではふるさと納税を生活防衛に使うのが一番いいというのが私のアドバイスでした。しかしそれではつまらないと考える読者の方も多いかもしれません。
消費にはハレとケがあって、ふるさと納税のようにもともと出ていくはずだったお金があぶく銭で戻ってくるのであれば、日ごろ買わない贅沢品にパーっと使ってしまおうというハレ消費の考え方はアリだと思います。
その観点からふるさと納税では高級な黒毛和牛のサーロインステーキを選んだり、自腹では買わないような高額な美容家電を選んだりというのもふるさと納税の楽しみです。
その視点で、今買うべき贅沢品といえば何でしょうか?
■来年になると値上がりが予想される「贅沢品」
実はお米と同じく、来年になると経済環境の変化で大幅な値上がりが予測できる贅沢品があります。それが北海道のホタテです。
海産物はふるさと納税でも人気のジャンルです。ところが中国との関係悪化で日本の海産物が輸出できないという状況が発生しました。その結果、特に国内市場で商品が余ってしまったのが中国で大人気のホタテです。
そのためホタテ業者は生き残りをかけてアジアから南米まで新しい販路を開拓していきます。ふるさと納税もその生命線のひとつとして機能してきました。
その中国がいよいよ日本の海産物の輸入解禁に動きます。すると経済的に確実に起きることは、ホタテ価格の上昇です。なにしろ中国がいないあいだにアジアやアメリカでホタテがおいしいという事実がPRされ、新たな消費市場が生まれました。そこに今回、中国という巨大な消費市場がふたたび復活するのです。
ふるさと納税で和牛やうなぎ、フルーツを購入するのもいいのですが、この国際的な経済情勢を考えると、今年はホタテを多めに手に入れるのが得策かもしれません。
とはいえふるさと納税はサラリーマン個人のお楽しみの機会。この記事でのアドバイスはあくまでアドバイスです。ご自分が欲しいものを買うのが本当は一番いいことだと私も思います。
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鈴木 貴博(すずき・たかひろ)
経済評論家
経済評論家。未来予測を得意とする。経済クイズ本『戦略思考トレーニング』の著者としても有名。元地下クイズ王としての幅広い経済知識から、広く深い洞察力で企業や経済を分析する独自のスタイルが特徴。テレビ出演などメディア経験も多数。
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(経済評論家 鈴木 貴博)