※本稿は、菊原智明『1年目からうまくいく!職場の人間関係のコツ』(日本能率協会マネジメントセンター)の一部を再編集したものです。
■“ランチの相手”が重要である
飲み会やランチなどは大切な人間関係を築く絶好の機会になります。ここからは飲み会、ランチの時間をワンランク上げる話をします。飲み会やランチで社内の人たちとうまくコミュニケーションが取れるようになったら、次のステップに進みます。
普段であれば、ランチの時間が近づけば「だれとどこのお店で何を食べるか」と考えるでしょう。いつものメンバー、もしくは一緒の職場の人を誘う感じです。気軽に「一緒にランチをしましょう」と声を掛けられる人がいる、これだけで素晴らしいことです。
もちろんこれも大切なことですが、さらに一歩踏み込んでランチの時間を「いかに有意義に過ごすか」と考えるのです。まずはご一緒する相手です。いつものメンバーもいいですが、このような人にも声を掛けてみましょう。
・話をして勉強になる人
・尊敬している人
・会社のキーマンで関係を深めたい人 などなど。
「この人に声を掛けても大丈夫かな?」と思っていても案外承諾してくれるものです。飲み会は少しハードルが高いものの、ランチであれば気軽にOKしてもらえます。
■“ランチで得たいこと”を準備しておく
承諾を得られたら好みを聞いて場所を決めます。それと同時に「ランチの時間内に何を得たいのか?」ということを決めておくのです。ランチの時間は限られています。雑談をしていればあっという間に終わってしまいますから。
・プライベートの面を聞き出す
・意外な一面を発見する
・仕事のやり方を聞く などなど。
もろちん、自分で話す時間を最小限にして聞き役にまわるのです。相手の回答から、さらに深堀していくのもいいことです。短い時間であっても“その後の仕事人生を左右する言葉”をいただけるかもしれません。
また、シンプルに仲良くなりたいという目標を持つことでもかまいません。共通の趣味や興味を見つけ出し、それを通じて会話を広げることで、相手との親密度を高めることができます。
飲み会やランチを価値ある時間にするのもあなた次第。どの人と、どういった目的で臨むのか、ということを決めて臨んでください。これができればあなたはランチ時間のプロになれます。
■飲み会では“共感”を意識する
ランチ時間のプロになったら、次は飲み会のプロを目指しましょう。飲み会はランチより時間的に余裕があります。最低2時間、二次会まで行けば3時間、4時間となることもよくあります。アルコールも入りリラックスして深く交流できる場でもあります。
ただ飲み過ぎには注意をしてください。調子に乗って飲み過ぎて、翌日は強烈な二日酔い。しかも「誰と何を話したかも覚えていない」というのでは、デメリットしかありません。
飲みにケーションの初級編は“人間関係の構築重視”で臨んでください。
上司が巨人ファンなら、たとえ阪神ファンだとしても「今年の巨人の投手陣はいいですね。とくに中継ぎから抑えが強力です」という話をします。とにかく相手を気持ちよくさせることを心掛けてください。これでいい人間関係が築けるのです。
飲み会に慣れてきたら次のステップに進みます。仲良くなって盛り上がるだけで満足するのではなく、ランチ同様「この飲み会で何を得たいのか?」というゴールを設定するのです。
・結果を出している人から秘訣を聞く
・習慣、ルーティーンを聞き出す
・社内のキーマンの攻略法を教えてもらう などなど。
■飲み会の“一区切り”で、ぐずぐずしてはいけない
結果を出す秘訣などを聞き出すのは難しく感じるかもしれませんが、お酒が入っていることもあり案外教えてもらえることも多いのです。目的を持つことで会話がより具体的で生産的なものになります。ただ単に飲んで終わり、というのではなく飲み会を“結果を出す秘訣を学ぶ場”に変えてください。
今まで飲み会を人間関係構築や成長に活かす、という話をしてきました。しかし、人によっては「それはわかっているけど、飲みの付き合いは最小限にしたい」という人もいるでしょう。
その方のために“飲み会を最短で切り上げる方法”についてご紹介します。会社での飲み会は少なくなったものの、ゼロにはなりません。お酒が嫌いな人、飲みの場が苦手な人はどうやっても苦痛に感じます。次のような時は特にしんどいでしょう。
・会社の人と時間外に過ごす気分じゃない
・翌日に大事な予定がある
・疲れているので早く寝たい などなど。
こんな時は「できることなら一次会で帰りたい」と思うものです。早いところは90分、飲み放題コースであれば120分で一区切りつきます。この時に“帰るタイミング”が訪れます。ここでぐずぐずしていると「なにもう帰るの? まだ9時じゃない」などと引き留められてしまいます。
■伏線を張り、誰かのトイレの隙に「明日早いので帰ります」
この状態になってから断って帰ると「アイツ、付き合い悪いな」といった印象を与えてしまいます。これではせっかく無理して一次会に出たのに台無しです。できれば、印象を損なわずにスマートに飲み会から去りたいものです。
では、どうすればいい感じに一次会だけで終わることができるのか? これからいくつかスマートに変えるテクニックを紹介します。
まずは“早く帰る伏線を張る”ということです。飲み会に誘われた際、すぐに承諾するのではなく「明日早いのでキツいのですが、一次会だけは参加しますよ」と言っておきます。このように事前に帰る理由を仕込んでおけば一次会でスッと帰れるようになります。
ただ、時間制でなくいつ帰っていいかわからない、という飲み会もあります。その場合は、「今日は9時になったら上がりますね」と伝えます。9時に近づいたらすぐに帰れる準備をしておき、だれかがトイレに立ったタイミングを見計らい「明日早いので帰りますね。お疲れ様でした!」と言ってさっと帰るのです。
明るく、気持ちよく挨拶すれば「あいつ、感じいいな!」といった印象を植え付けられます。
なんとなく二次会に行っても疲れるだけです。一次会でしっかり印象を残し、爽やかに去るほうがメリットがあります。今回紹介した“撤退するスキル”をぜひ試してください。
■上司からの誘いには「今日は予定があって難しい」
部署単位の飲み会はまだしも“上司との飲み”はさらにきついものがあります。サシ飲みとなれば、どんなに退屈でも途中で帰りにくくなります。尊敬する上司は別として、嫌いな上司からの誘いはなんとかして断りたいものです。
とはいうものの、「今日ちょっと飲みに行かないか?」と声を掛けられて「パスです」と断れるでしょうか? 直属の上司であれば「行かないと今後悪影響があるのでは」と心配になります。上司とのサシ飲みは人間関係を築くメリットはあります。しかし1回くらいはメリットがあるとして、毎回付き合わされたらたまったものではありません。時間も体力も奪われてしまうのです。
そこで大事なのが、“上司との関係を壊さずにスマートに断る”というスキルです。二つのケースを紹介します。
1.完全には断らず印象良く回数を減らす
2.完全にシャットアウトする
まずは“いい印象を保ちながら回数を減らす”という方法です。誘われたら「今日は予定があって難しいですが、また別の日にお願いします」と言うのです。もしくは「明日のランチでしたら大丈夫です」と言ってもいいでしょう。こういったひと言をつけ加えるだけで「行く気はある」というポジティブな印象を与えられます。
■雑談の中で“予定”を伝えておくといい
ただし、毎回断ると「なんだかんだ言ってオレと飲むのは嫌なのかな」と思われてしまうこともあります。やはり断るときと、行くときのバランスを取る必要があります。たとえば“3回誘われたら1回は行く”くらいの割合にすると、好印象は保てます。その時は“修行の場だ”と思って付き合ってください。もしかしたらその中に“今後の仕事に役立つスキル”が見つかるかもしれません。
次は完全にシャットアウトする場合です。上司に「この新人は飲みに行かないんだ」と思わせる必要があります。たとえば雑談の中で「月水金と資格の勉強をしています」ですとか「仕事後はスポーツジムに行っています」とさりげなく伝えておきます。
誘われる前に布石を打っておくことで、上司も「まあ、予定があるなら仕方ないか」と納得してくれます。勉強やジムなどの自己投資は絶好の断わる理由になります。またアルコールが好きでないのでしたら「私はアルコールアレルギーで一切飲めないんです」と言っておくのも一つの手です。
上司との付き合いが大事ですが、すべての誘いに応じる必要はありません。断るスキルも人間関係を保つための大切なスキルです。うまくかわしながら、自分の時間をキープしてください。
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菊原 智明(きくはら・ともあき)
営業コンサルタント
営業サポート・コンサルティング代表取締役。関東学園大学経済学部講師。社団法人営業人材教育協会理事。1972年生まれ。群馬県高崎市出身。群馬大学工学部卒業後、トヨタホームに入社し、営業の世界へ。自分に合う営業方法が見つからず7年間、ダメ営業時代を過ごした後、手紙で情報を提供する営業に切り替えたことをきっかけに4年連続トップ営業に。2006年に独立し現職。主な著書に『訪問しなくても売れる!「営業レター」の教科書』(日本経済新聞出版社)、『売れる営業に変わる100の言葉』(ダイヤモンド社)、『面接ではウソをつけ』(星海社)、『トップ営業マンのルール』『「稼げる営業マン」と「ダメ営業マン」の習慣』『残業なしで成果をあげるトップ営業の鉄則』(明日香出版社)、『営業1年目の教科書』『営業の働き方大全』(大和書房)、『リモート営業で結果を出す人の48のルール』(河出書房新社)、『仕事ではウソをつけ』(光文社)、『使ったその日から売上げが右肩上がり!営業フレーズ言いかえ事典』(大和出版)などがる。
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(営業コンサルタント 菊原 智明)