※本稿は、井上皓史『無敵の早起き』(三笠書房)の一部を再編集したものです。
■社会人1年目の夜型生活で心身ともに不調に
子どもの頃から、22時に寝て朝の5時に起きるという生活を送っていたものの、私が社会人になると、この生活は崩れました。
大学を卒業後、あるIT企業に入り営業部門に配属になりました。
社会人としてのいろはを教えてくれた先輩方には、いまでも感謝しています。
しかし、社会人1年目で、仕事の要領がまだよくわからなかったこともあって、その職場での生活は、どうしても夜型になっていきました。そして、それまでの生活習慣との違いに大いに戸惑うことになりました。
当時の一日の流れは、朝8時半起床。9時に出発。満員電車に乗って通勤し、10時始業。朝のミーティングや、メールの返信で気づけば12時。ランチを終えて、一番集中して仕事に取り組むのは15時過ぎ。
これでは定時で帰ることなど、できるわけがありません。
夜遅くまで残業し、その後も上司や同期との付き合いで飲みに行くこともしばしば。24時前に帰宅して1時に就寝。
平日は疲労困憊で、週末は疲れが溜まり、昼まで寝溜めをするような過ごし方でした。
これではダメだ、心身ともに調子がおかしくなってしまうと感じました。
■2時間早く出社するので、2時間早く帰る
22時に寝て朝5時に起きるのも、深夜1時に寝て朝8時に起きるのも、得られる睡眠時間は同じ7時間です。しかし、疲労の度合いは、まったく違います。
後者のほうが、朝起きたときの疲れがはるかに残っているのです。
やはり人間は朝早くに起床して、まず日の光を浴びること、そして夜は骨や筋肉などの成長を促す成長ホルモンを出すためにもしっかりと睡眠を取ることが大切です。
心身の不調を感じた新入社員の私は、この点を、身をもって経験したわけです。
どうすればもとの生活習慣に近づけるのだろう。私は思い切って上司に相談することにしました。
当時の職場は、始業は10時と遅い代わりに、夜は定時を越えても多くの人が残業しているようなところです。
そんな職場で、新入社員だった私は上司にこう言いました。
「2時間早く出社するので、2時間早く帰っていいでしょうか」
最初、上司は私の発言を信用していませんでした。
「まだ何も会社に貢献していない入社1年目の社員がいったい何をいっているのだ」という顔をしていたのを覚えています。
私は真剣に話しました。自分の育った環境について、そして、早寝早起きを実践することで自分の能力が発揮できることなどを説明しました。
上司は私が本気であることを感じて、ではいったんやってみるかと、こちらの申し出を受け入れてくれました。
さっそく私は、以前の生活習慣に近づけるようにしました。朝の6時に起床して、8時前に出社、20時前には退社して23時より前に就寝するような過ごし方です。
すると、生活は激変しました。
■朝型生活で起こった大きな変化
朝型の生活にして得られた、もっとも大きな変化は、仕事に集中できる時間の量が圧倒的に増えて、効率的に時間を使えるようになったことです。
朝の8時前に出社しても、まだオフィスには人がいません。
8時から10時までの2時間は、資料づくりなど優先順位の高いことに使います。
すると、他の社員が出勤してきてパソコンを立ち上げようとしている10時過ぎに、私のほうはその日のうちでもっとも重要な仕事が、ほぼ終わっているという状態になります。
そして昼頃には、もうだいたい仕事の目処はついており、午前中一杯でその日にやらねばならない重要な仕事は、ほぼ片づいているという状況になっています。
こうなると、午後は余裕をもって、その他の仕事に引き続き集中することができます。すでにもっとも重い仕事は午前中に終わっているので、心の余裕を感じながら午後も仕事を進めることができるのです。
■午前中の時間帯に重要な仕事を詰め込む
これが遅い時間に寝て遅く起き、10時に出社するようだったらどうでしょう。かつての私がそうであったように、10時に出社して業務を始めても、人に話しかけられたり、電話が鳴ったり、仕事を振られたりと、なかなか集中して自分の仕事に取り組めません。
さらに寝る時刻が遅いために前日の疲れが残っていることもあるでしょう。これでは仕事をスムーズに進めることができません。
結局、集中して仕事に取り組めるのは、昼休みをだいぶ過ぎてからということになりかねません。
午後に外出や会議の用事が入っていると、まだやらなければならない大事な仕事を残したままなので、焦りや不安が生じてきます。誰かに話しかけられたり、相談を持ちかけられたりしても親身に対応することも難しくなります。
そして夜遅くまで残業しながら、疲れた頭と体でもっとも重い仕事をしなければならないことが頻繁に起きます。これではひどい悪循環です。
まず早く出社して、午前中の時間帯に重要な仕事を詰め込んでみることです。それだけで大きく生活が変わり出します。
朝の2時間が、圧倒的な集中力を生む。
早く仕事を始めるだけで、まわりと差が付く。
■上司からの評価・信頼度がアップする
先程の続きになりますが、私が2時間早く出社して、午前中に集中して仕事をするようになると、しばらくして上司からの評価が変わりました。
朝型の出勤を始めた当初は、おそらく上司も続けられるのか様子見だったと思います。
ところが、当の私は毎日遅れることなく朝8時には出社して仕事を始めます。
申し入れを受け入れてくれた上司は私のことを、「とてもきちんとしていて、しっかりと仕事をする人物」と評価し、褒めてくれるようになりました。
入社1年目の社員にとって、上司に褒められるのはうれしいことです。モチベーションが上がるので、午前中の仕事にさらに集中するようになり、結果を出すようになりました。
また午後になっても気持ちの余裕があるので、お客様へのアポイント件数を増やしたり、会議に積極的に参加したりすることもできます。
そうなると売り上げの実績も徐々に上がるようになりました。またこれによって、さらに上司からの評価や信頼が高まるという好循環もつくることができました。
一日のスタートを他の人よりも2~3時間早めることが、こんなにも人からの評価を上げることにつながるものなのかと実感しました。
■ベンチャー転職でも朝型生活を徹底
幼少の頃から実践していた早寝早起きは、ただの生活習慣です。しかし、社会人になってからも早寝早起きを続けると、単なる習慣ではなくなります。人から信頼を得るための武器になるのです。
新卒で入社した会社はこうして私を評価してくれたわけですが、「ベンチャー企業で自分の力を試してみたい!」という気持ちが募り、1年ほどで転職しました。
転職した次の会社も前の職場同様に、10時が始業時刻でした。しかし新しい職場でも、私は引き続き朝型の出社を続けることにしました。
転職する際に、その会社の社長と話をして、早寝早起きの生活を実践したいという旨を打ち明けると、社長は快く了承してくれました。さらにこの社長のありがたいところは、私の早寝早起きの生活に興味をもってくれたことです。
新しい職場は社員5名のITベンチャー企業で、意欲の高いメンバーばかりでした。睡眠以外はすべて仕事に注力をするような環境で、まさに私が求めていたものでした。
しかし、よいことばかりではありませんでした。その職場の社員は皆、終電などを気にせずに仕事に没頭します。その代わり朝が遅く、10時始業といっても午前中は皆どんよりとしていて、エンジンがかかりません。
そういう職場の雰囲気にあって、私だけが朝の8時には出社して、てきぱきと仕事を進めていきました。他の社員が仕事に取りかかろうとしているお昼くらいには、私は一日の仕事の山場をすでに越えていました。
■結果的に、会社の始業時刻の変更へ
また、入社したばかりの社員ですから、自分の業務以外にもいろいろと頼まれる仕事があります。「明日の夕方くらいまでにやっておいてくれ」と言われた仕事を、翌朝一番に取り組んで、完成した書類を、その人が出社する前にデスクの上に置いておきます。
こうすることで、新しい職場でも周囲からの評価が上昇し、信頼されるようになりました。
このような私の姿を、社長は見ていました。そして社長は、朝型の勤務が仕事の生産性を大きく上げることに気づいたのです。ついには、会社の始業時刻が変更されるに至りました。
朝9時を始業とし、夜はなるべく遅くまで残業しないようにと社長自らがルールを変えました。そしてそれまでは10時出社だった社長自身も、私と同様に朝の8時にはオフィスに出社するようになりました。
このように、ひとりの経営者が会社の始業時刻を早め、また自らの生活習慣を改めることにつながったのも、私の振る舞いが評価されたからだと感じています。
朝早くから仕事をしていると、
上司やまわりからの評価が上がる。
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井上 皓史(いのうえ・こうじ)
朝活コミュニティ「朝渋」代表、Morning Labo取締役
1992年、東京都生まれ。朝活コミュニティ「朝渋」代表。株式会社Morning Labo取締役。2児の父。2016年より朝活コミュニティ「朝渋」を東京・渋谷で立ち上げ、読書や英会話、ゲストを招いたトークイベントなどさまざまな活動を行う。これまで3万人以上に「早起き」のメソッドを伝えている。著書として『昨日も22時に寝たので僕の人生は無敵です』(小学館)がある。
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(朝活コミュニティ「朝渋」代表、Morning Labo取締役 井上 皓史)