家計を助ける節約術にはどんなものがあるのか。ファイナンシャルプランナーの横田健一さんは「9月末までに行えば、実質負担2000円で食材などが手に入る上にポイントまでつく制度がある。
かなりお得なので、ぜひ検討してもらいたい」という――。
■申請すれば誰でも得をする「最強の節約術」
ふるさと納税が2025年10月から改悪されます。ふるさと納税ポータルサイトによるポイント付与がなくなり、おトク度が3割近く下がるとも言える改悪です。
本記事では、ふるさと納税の基本的な仕組みや手続きと注意点、そして2025年10月からのポイント付与廃止について解説します。
ふるさと納税は自分が指定する自治体に寄附を行うことで、実質的な負担2000円で寄附額の3割相当を上限とする返礼品を受け取ることができるおトクな制度と言えます。近年はふるさと納税の各ポータルサイトが独自のポイント付与を行うことで競争が加熱、おトク度がさらに高まっていました。
しかし、こういったポイント付与は、ポータルサイトへ手数料を支払う自治体の負担増につながっているのではないかという懸念から、2024年6月にふるさと納税に関する総務省の告示が改正され、2025年10月1日以降はポータルサイトによるポイント付与ができなくなるのです。つまり、今年ふるさと納税をやるのであれば9月30日までにやった方がポイントの分だけおトクなのです。
どのくらいおトクなのか、大まかに試算してみましょう。サイトによって異なりますが、各ポータルサイトでは寄附額の5~10%程度をポイントとして付与しています(現在はキャンペーンなどでさらに高還元率のところも)。例えば、5万円のふるさと納税で10%付与されるなら、ポイントだけで5000円分もらえるのです。
ふるさと納税では寄附額の3割を上限とする返礼品を受け取れますから、さらにポイントで1割程度もらえるなら、実質的には寄附額の4割相当の経済的な価値を受け取れることになります。
ポイント付与がなくなれば返礼品のみの3割相当に低下しますので、ふるさと納税により得られる経済的な価値が4分の3に、つまり25%程度下がると言えます。
■まだほとんどの人が利用していない
ふるさと納税の利用者数は年々増加しており、図表1のグラフの通り、直近の令和7年度課税における控除額は約8710億円、控除適用者数(ふるさと納税利用者数)は約1080万人といずれも過去最高となっています。
ここで一定の所得がある人の人口として20歳から64歳と仮定すると2024年10月時点で約6827万人ですから、大まかに言えば6.3人に一人がふるさと納税を利用している状況と言えます。筆者はかなりおトクな制度だと考えていますが、まだ使っていない人も多いのが現状と言えます。
ふるさと納税の仕組みと具体的な手順についてご説明します。図表2をご覧ください(青い矢印がお金の流れです)。
ふるさと納税を利用する人は、いずれかの自治体を指定して納税を行います(①)。税制上の取り扱いは寄附金となり、ふるさと納税先の自治体は必ずしも出身地の自治体である必要はありません。結果的に、現在はどの自治体からどんな返礼品を受け取ろうかといったスタンスで利用している人が多くなっています。
ふるさと納税を行うと、寄附先の自治体からふるさと納税額の3割を上限とする返礼品と受領書が送られてきます(②)。そして利用者が確定申告することにより、その年の所得税と翌年の住民税が減額されます(③)。
このようにふるさと納税は、実質負担2000円でふるさと納税額の3割相当を上限とする返礼品を受け取ることができるおトクな制度と言えるのです。

■「実質負担2000円」の仕組み
ここで税制上の取り扱いについて、図表2の例でもう少し詳しくご説明します。所得税率20%の方が3万円のふるさと納税(寄附)をした場合で考えてみましょう。
まず所得税は3万円から自己負担2000円を差し引いた2万8000円が所得控除になります。つまり、所得税率は20%と仮定していますから2万8000円×20%=5600円分の所得税が減額されることになります。
続いて住民税です。税率は10%ですから2万8000円×10%=2800円が税額控除として減額されます。これは基本分と呼ばれ、一般的な寄附金控除の場合も同様です。ふるさと納税の場合にはさらに特例分があり、住民税の所得割額の2割を限度として追加的な税額控除を受けられます。今回の例ですと、2万8000円×(100%-10%-20%)=1万9600円が住民税から減額されます。
このような形で3万円のふるさと納税を行うと2万8000円の減税となるため、実質的な負担は2000円になるのです。さらに寄附額の3割(この場合は9000円)を上限とする返礼品が受け取れますので、2000円の自己負担を考慮しても、7000円程度お得に受け取れるというわけです。
■控除上限額の調べ方
では、ふるさと納税で返礼品はどれほど選べるのか。
それには控除上限額を調べる必要があり、1年の所得が最終的に確定しないと正確には計算できません。
2025年9月時点でふるさと納税を行う場合には、前年の所得額を参考にしつつ、今年の所得について前年からの変動を考慮して概算金額で試算することになります。12月末までの残りの所得金額を見積もりながら、少し保守的な金額で行うのが現実的かと思います。
ここで給与収入のみの方の控除限度額の目安を確認しておきましょう。図表4は総務省「ふるさと納税ポータルサイト」に掲載されている給与収入のみの方の家族構成別の全額控除されるふるさと納税額(年間上限)の目安です。例えば、年収700万円で子のいない共働き夫婦の場合、10万8000円が目安となります。
この上限金額は、生命保険料控除、小規模企業共済等掛金控除(iDeCoや小規模企業共済の利用)、医療費控除などの金額によって変わります。ふるさと納税を行う際は、ご自身の控除上限額について、各ポータルサイトのシミュレーション(計算精度の高い詳細版がおすすめ)で確認してから行うようにしましょう。
■寄附先が5つ以内なら確定申告は不要
ふるさと納税で税金控除を受けるためには原則として確定申告が必要になりますが、「ふるさと納税以外の確定申告が不要でふるさと納税の寄附先が5自治体以内」の場合は、確定申告が不要となるワンストップ特例制度を利用することも可能です。
この場合、寄附した翌年の1月10日までに手続きを完了する必要があります(仮にこの期限に間に合わなかった場合は、原則通り確定申告すれば問題ありません)。
税金控除の手続きが適切に行われていれば適切に控除されるはずですが、たまに手続き上の不備などで減税額が適切に反映されていないこともあります。ふるさと納税を行った年は住民税の税額控除が適切に反映されているか、翌年の住民税決定通知書でしっかり確認しておきましょう。

ふるさと納税では、いくつか注意しておくべき点もあります。1つ目は、ふるさと納税の返礼品の税制上の取り扱いです。
■納税額は167万円以内に
返礼品は税制上、「一時所得」の対象となります。
一時所得の金額 = 総収入金額 - 収入を得るために支出した金額 - 特別控除額(最高50万円)
例えば、10万円のふるさと納税を行って、3割、つまり3万円相当の返礼品を受け取った場合、一時所得の対象となる収入が3万円になります。ただし、一時所得には特別控除額(最高50万円)があるため、50万円を超えない限り課税関係は生じません。
ふるさと納税の返礼品のみで50万円を超えるのは、ふるさと納税額が約167万円とかなりの高所得者のみが対象となりますので、通常は気にする必要はありません。ただし、生命保険の満期保険金等を受け取った場合は一時所得の対象となり、ふるさと納税の返礼品など他の一時所得と合算して計算することになりますので注意が必要です。
2つ目はふるさと納税の決済におけるクレカのポイントについてです。2025年10月から各ポータルサイトによるポイント付与は廃止されますが、ふるさと納税の決済を行うことによるクレジットカード会社などからのポイント付与はこれまで通り行われます。
支払いは銀行振込など他の方法もありますが、いずれにしても支払うのであればポイントが貯まりやすいクレジットカード払いなどがおすすめです。
■筆者が選んでいる返礼品
ふるさと納税ではどんな返礼品を選ぶのがいいのでしょうか。
せっかくのおトクな制度だから普段はなかなか買いづらい高級品などを返礼品として受け取ろうという考え方もあれば、日常生活で確実に使うものを返礼品として受け取ることで生活費を節約しようという考え方もあるでしょう。

行動経済学で言うところのメンタルアカウンティング(同じ金額でも入手経路などによって異なる価値として認識してしまう心理的傾向)を考えると、後者のように日常的に購入するものを受け取るのが合理的と言えますが、筆者はどちらかと言うと前者寄り、つまり、普段の買い物では買いづらいもの、ちょっとした贅沢気分が味わえるものを選択することが多くなっています。
ここ数年で実際に筆者がふるさと納税した自治体と返礼品には次のようなものがあります。
シャインマスカット:山梨県甲州市、長野県中野市、長野県須坂市、岡山県矢掛町、山梨県笛吹市

みかん:和歌山県有田市、和歌山県美浜町、熊本県荒尾市、和歌山県湯浅町

梨:熊本県荒尾市

桃:和歌山県紀の川市

アンデスメロン:山形県酒田市

うなぎの蒲焼:宮崎県宮崎市、佐賀県上峰町、鹿児島県大崎町

いくら醤油漬け:北海道白糠町

スイーツ:シュークリーム(山形県上山市)、ういろう(岐阜県山県市)、ムッシュフロマージュ(福井県坂井市)、バスクチーズケーキ(佐賀県佐賀市、高知県四万十町)、アイス(北海道上士幌町)

おせち料理:京都府京都市

ちなみに、日常の食品としてお米(熊本県御船町)も返礼品として受け取っています。
たまに所得が高いにもかかわらずふるさと納税をやったことがないという人がいらっしゃいます。しかし、本記事で説明したように、ふるさと納税は一定の所得がある人にとっては、おトクな制度で利用すべき制度と言えます。
ポータルサイトによるポイント付与が廃止されるとは言え、今後もおトクな制度であることには変わりません。生活で必要なモノや旅行のクーポン券などさまざまな返礼品がありますので、楽しみながら積極的に利用していただければと思います。

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横田 健一(よこた・けんいち)

ファイナンシャルプランナー

1976年生まれ。東京大学理学部物理学科卒業、同大学院修士課程修了。マンチェスター・ビジネススクール経営学修士(MBA)。野村證券でデリバティブ商品の開発やトレーディング、フィンテックの企画・調査などを経験後独立。情報サイト「資産形成ハンドブック」やYouTubeなどで情報発信しながら、個人の資産形成をサポート。
CFP®、ウェルビーイング学会会員(ファイナンシャル・ウェルビーイング分科会所属)。「ファイナンシャル・ウェルビーイング検定」監修。著書に『新しいNISA かんたん最強のお金づくり』(河出書房新社)、『増やしながらしっかり使う 60歳からの賢い「お金の回し方」』(KADOKAWA)がある。

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(ファイナンシャルプランナー 横田 健一)
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