※本稿は、東山一悟『投資で2億稼いだ社畜のぼくが15歳の娘に伝えたい29の真実』(JTBパブリッシング)の一部を再編集したものです。
■個別株投資で気を付けること
投資の第一の目的はリターンを得ることだから、投資先の大部分は国際分散したインデックスファンドにすることをお勧めする。
しかし、投資の世界の奥深さを知りたければ、そのうちの一部をアクティブファンドや個別株投資に回すのもいい。
資産運用のコアの部分をインデックスファンドで、それ以外は別の資産で運用するやりかたを「コア&サテライト」といい、ぼく自身も実践している。もちろん、インデックスファンド100%で何ら問題ないので、むしろ趣味に近いかもしれない。
個別株の投資は、投資信託と違った特徴がある。
資産が少ないうちは集中投資になるため、大儲けや大損といった激しい値動きになる可能性がある。だが、それ以外に、配当金や株主優待のメリットを享受できる場合もある。
企業が利益を出すと、株主に配当金で還元する場合が多いが、日本の場合は株主優待という制度もあり、両方を出す企業もある。配当金がどのくらいかは企業の業績、株主還元の考え方によって異なる。
■利回り3%超も、高配当株が人気なワケ
年間、株価の3%以上の配当金を出す株を高配当株と呼ぶ場合が多い。
例えば2024年11月29日現在、みずほ銀行の親会社のみずほフィナンシャルグループの配当利回りは3.4%。みずほ銀行の預金金利よりははるかに高い。株価が下がれば配当利回りは上昇するし、株価が上がれば配当利回りが下がっても資産価値は上昇する。
配当が支払われるのは会社によって違うが、年1、2回が普通。年金生活者など現金が欲しい人にとっては便利な制度だ。長期投資をする場合は、こうした高配当株投資は個人投資家から人気がある。配当にも通常20.315%の税金がかかるが、NISAを使えば税金がかからないためなおさらだ。
JT、NTTやKDDIなどの大手通信会社、商社、銀行などの大手企業が高配当株として人気がある。
配当金投資についてはマネックス証券の広木隆チーフ・ストラテジストの著書『利回り5%配当生活』(かんき出版)がわかりやすい。
■日本人が熱狂する株主優待の魅力
投信にも分配金といって、配当のように利益を現金で配るものもある。
一方、個別の高配当株はNISAで買えることもあり、配当金を狙うのならば個別株の方が良いだろう。
株主優待制度はもともと19世紀のイギリスでスタートしたといわれるが、最近では日本で異常なほどの盛り上がりを見せ、他国にはあまりないユニークな制度となっており、上場企業の4割程度が行っている。将棋棋士の桐谷広人さんが、優待名人としてマスコミにも多く出ているので知っている人も多いだろう。
外食チェーンや家電量販店では店で使える商品券、食品メーカーは自社の製品、ディズニーランドを運営するオリエンタルランドをはじめとするレジャー施設は入場割引など、会社によって優待の内容は違う。クオカードなど金券や商品ギフトのケースもある。特に外食チェーンなどは優待券目当ての投資家が買い支えるため、株価が割高になるといわれる。
■優待を出す費用は無駄なのか
ただしサイゼリヤが2024年7月に突然、優待廃止を発表したように会社の方針が急に変わることもある。
優待には機関投資家や海外の投資家から反対の意見が上がっている。
例えば、外国企業がディズニーランドのワンデイパスポートを1枚だけもらっても使いようがない。それなのに日本の個人投資家は楽しめる。同じ株主なのに差別であり優待を出す費用は無駄だというもの。
ぼくはその会社の商品を利用する機会になるし、個人投資家の間口を広げることになるから、別にいいのではないかと思っている。保有株ではアサヒビールの親会社、アサヒGHDの株主専用ビール(2024年で廃止)、小田急電鉄の株主優待乗車証などはありがたくいただいている。
■素人には難し過ぎる株価分析
さて、配当金や優待目当てでなく、値上がり益を狙いたいという人もいるだろう。
チャートなど株価の動きから予想するテクニカル分析、会社の決算情報などからフェアバリュー(適正価格)を算出して、割安株を狙うファンダメンタルズ分析が主なやり方だ。
しかし、どちらも本格的な勉強をしなければならない。テクニカルならオシレーター(相場の過熱感を表す指標)、MACD(移動平均収束拡散手法)、「一目均衡表の雲を抜けた」や「三尊天井(トリプルトップ)がだましだった」など、日常生活で使わない用語を覚えて、どの場合に利用できるか理解しないとならない。ぼくも昔FXをやったときに、テクニカル用語を勉強したが、まったく使いこなせなかった。
ファンダメンタルズ分析は会計学の知識が必要で、財務諸表から該当企業の長所、短所を割り出し、ライバル企業との比較をしなければならない。さらに、景気、金利、為替などのマクロ経済指標も頭にたたきこむ。いずれにしろ、よほどの才能がない限り、他に本業がある人が片手間にできる分量ではない。
■プロでも勝てない個別株投資の難しさ
それに、本当にそういった勉強に効果があるかは疑問がある。
なぜなら、こうした方法を駆使していて、勤務時間をすべて会社の取材や分析に費やしているだろうアクティブファンドのファンドマネージャーが、インデックスファンドになかなか勝てないからだ。
こうしたファンドマネージャーは有名大学を出た優秀な頭脳の持ち主で、難しい最新の数式を駆使したり、会社のトップに直接取材したりなど大半の個人投資家にできないことをしていて、さらにいえば高額の給料をもらっているのに、インデックスファンドに勝てないのだ。だったら、素人のような個人投資家は最初からインデックス投資をやっていた方が効率が良いといえよう。
従って、個別株投資で、多くの人が利用できる必勝法というのは見当たらない。
強いてぼくがお勧めするとすれば、リーマンショックやコロナショックなど相場全体が大暴落しているときに、強みのある製品を持つ会社を狙うことだ。これは割安で優良株を買うということである。
■ソフトバンク株で大成功した経験
個人的な成功例はソフトバンク(現ソフトバンクグループ)。記憶にある人もいるかと思うが、2008年に日本で初めて登場したスマートフォンはiPhoneで、取り扱っている携帯電話会社はソフトバンクだけだった。NTTドコモとauは当時、取り扱ってなかったのだ。ぼくは友人が使っているiPhoneを触らせてもらい、これは大ヒットするだろうと驚愕したのを覚えている。
ところが、2008年はリーマンショックの真っ最中で世界中の株価が大暴落していた。
当時、ソフトバンクの株を持っていれば持ち株会社化により現在のソフトバンクグループの株になるが、16年で株価は30倍近くに上がっているのだ。
自分の勤務先の業界動向や身の回りで起きている急速なブームに気づいたら、関連会社に投資するのはいいアイデアだ。
■身近なブームから大勝利をつかむ
コロナショックのときは、外出制限のなかでも健康を維持するためジョギングが流行した。東京オリンピックをはじめスポーツイベントも多数予定されていた。もし、ジョギングシューズのアシックスを2020年3月の安値で購入していれば2024年11月には、株価は17倍になっている。
こういう手法はアメリカの伝説的な投資家、ピーター・リンチ氏がお勧めしている。リンチ氏は13年間で運営しているファンドの資産残高を777倍にした凄腕。彼は旅行先で美味しかった料理チェーン、妻からよく行くスーパーで大人気になっていると教わったパンストの会社などで大儲けした。
リンチ氏の株式投資本『ピーター・リンチの株で勝つ アマの知恵でプロを出し抜け』(ジョン・ロスチャイルドと共著、三原淳雄、土屋安衛訳・ダイヤモンド社)では「一般投資家のなかには町に行ってドーナツを食べることが株式の基礎的調査の第一歩になる、と気づいていない人が多く見られる」と言い、自分がよく知っている会社に投資することを推奨している。もちろん、リンチ氏はお気に入りのドーナツチェーンへの投資でもしっかり儲けた。
こうした手法が百発百中というわけにいかない。
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東山 一悟(とうやま・いちご)
個人投資家
1991年筑波大学卒業後、メディア企業で勤務。20年に戦力外通告を受け同社を退社。投資を続けてきた結果、総資産は2億円を突破。現在は中小メディア企業に勤務しながら、投資に関する情報等を寄稿。
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(個人投資家 東山 一悟)