■クルマ好きによる「カーオブザイヤー」の基準
2025年がまもなく暮れようとしています。日本の自動車業界には、トランプ関税という大嵐が吹きましたが、秋になって嵐はおさまり、意欲的な新型車もいろいろ登場し、豊作と言える年になりました。
現在販売されている新車は、内外問わずどれもこれも品質は十分高くなっています。一般ユーザーの皆さんは、デザインや色といった表面的な好みだけでクルマを選んでも、何の問題もありません。
“間違いだらけのクルマ選び”なんて、したくてもできない世の中なわけですが、私のようなクルマ好きは、趣味性や志の高さといった一般的には不必要な要素でクルマを選びますから、クルマの良い悪いを常にはっきり判定しています。
そんな一クルマ好きの私が、2025年に登場した新型車のベスト10を選んでみよう! と思ったわけですが、そこで問題が発生しました。新型車だけでは、10台に届かなかったんです。
■輸入車がまったく魅力を失っている
今年日本市場に登場した新型車は、国産車10モデル、輸入車25モデル(「日本カー・オブ・ザ・イヤー2025~2026」のエントリーカーに準拠)、合計35モデルですが、そこから10台を選ぶことができない。なぜなら、輸入車がまったく魅力を失っているからです。
欧米メーカーは、近年EVの開発に力を入れてきた結果、革新的な内燃エンジン車(ハイブリッドやPHEVを含む)がリリースされなくなっています。そこに円安等による価格の上昇が追い打ちをかけました。個人的には、現在日本で販売されている輸入車の中には、新車で買いたいと思えるモデルが1台もありません。
一方、国産勢のニューモデルは10台。こちらはモデルチェンジ周期がどんどん長くなっていて、ニューモデルの絶対数が漸減傾向です。10台でベスト10を作るんじゃ、あんまりじゃないですか!
そこで今回は、ベスト10の範囲をマイナーチェンジモデルや、今年10月に開催されたジャパン・モビリティ・ショー2025で公開された「近い将来販売されるであろうモデル」に広げました。その中から、2025年を代表するクルマを主観で選びました。
まだ販売開始していないクルマを判定しても無意味ですが、少し早い初夢のようなものと思ってご容赦ください。
■軽自動車市場に乗り込んできた「中国車」
第10位 アルファロメオ・ジュニア(マイルドハイブリッドモデル)
「今の輸入車には魅力がない」と言っておいていきなりの輸入車ですが、このクルマは久しぶりにアルファロメオらしい、カッコよくて美しいデザインをまとっています。
パワーユニットは、1.2リッターガソリン+マイルドハイブリッド。燃費もパワーも大したことないですが、アルファロメオファンでも、「まあまあかな」と納得できる小気味よさがありました。
価格は420万円から。決して安くはありませんが、実はこのクルマ、イタリア本国価格は3万750ユーロからです。現在の為替レートだと約550万円! 日本で買うほうが断然安いわけですね。
実は多くの輸入車が、同じような状況で、日本のほうが安く買えます。
第9位 BYDラッコ(ジャパン・モビリティ・ショー2025出展車両)
中国の自動車メーカーであるBYDが、2026年夏に日本で販売開始予定の軽EVです。
海外の自動車メーカーが、日本の軽市場に完全な新規開発モデルを投入するのは史上初。国産勢が絶対的な強みを持つ軽自動車の分野に、輸入車が対抗馬を出すなんてありえない! と思われていただけに、画期的な出来事です。
デザイン的には、日本製の軽ハイトワゴンと瓜二つですが、おそらく破壊的な価格競争力を持って登場するはず(そうでなければ意味がない)。まだ詳細はわかりませんが、BYDの積極果敢な姿勢に感服しました。
■軽自動車らしくない軽自動車
第8位 ホンダN-ONE e:
日本ではEVはまったく不人気で、市場シェアは1~2%程度しかありません。私も当分買うつもりはありませんが、買うとしたら軽自動車規格のEVしかないと思っています。価格が下がってくれば、近所の移動用には快適です。
N-ONE e:は、軽EV分野における新たなエースです。航続距離がライバルの日産サクラの約1.5倍あって、価格差はわずか10万円ほど。
ここ数年、日産サクラが日本のEV販売台数の約4割を占めてきましたが、N-ONE e:の発売以来、サクラの販売台数は激減しました。航続距離がまるで違うので当然でしょう。
第7位 日産ルークス/三菱デリカミニ
安定感抜群で、「軽自動車に乗っている」という感覚はゼロです。軽ハイトワゴンの分野では、ホンダN-BOXがずっと独走を続けてきましたが、クルマのデキとしては、ルークス/デリカミニはN-BOXに肉薄し、わずかに上回っているかもしれません。
第6位 スバルフォレスター
フォレスターは、新開発のストロングハイブリッドが素晴らしい。スバルの水平対向エンジンと、トヨタハイブリッドシステムが見事に融合しています。
スバル車は燃費の悪さが弱点でしたが、このクルマは、従来のスバル車の2倍くらい燃費がよく、走りもゆったりおおらかで気持ちいいです。
■復活した「80年代のアイドル」
第5位 ホンダプレリュード
かつてのデートカーをなぜ今ごろ復活させるのか? と話題になりましたが、乗って目から鱗が落ちました。これぞ新しいスポーツカーの形だ!
キモは、速さではなく、走りの気持ちよさを優先していること。かつてプレリュードに憧れた中高年のクルマ好きには、特に最高です。
ホンダは「グライダーのような走り」と表現していますが、まさにグライダーのように路面を滑ります。アクセルを踏み込めば、それほど速くはないけれど、ホンダのスポーツエンジンらしい、実に心地よいサウンドに包まれる。
スピーカーからの合成音が手助けしているのですが、人工的なイメージはまったくなく、アクセル全開では、レーシングカーのようにシフトアップして行きます。これも疑似的なステップ変速なのですが、真剣に気持ちいいので文句は皆無です。
デザインには、かつてのプレリュードらしさはほとんどありませんが、適度にシュッとカッコよく、なぜか懐かしく感じます。80年代のアイドルが、AIで今どきっぽくなって復活したみたいで、目頭が熱くなりました。
■「顔の整形」に大成功したSUV
第4位 スズキクロスビー
8年前に登場したクロスビーが、ビッグマイナーチェンジを受け、顔付きとパワートレインが刷新されました。特に顔付きに関しては、「これほど整形が成功した例はない!」というくらい、魅力的になりました。
パワートレインは、従来の1リッターターボから、1.2リッターのマイルドハイブリッドに変更。パワーはだいぶ落ちましたが、実用性能は向上しているし、スズキらしい接地性のいい足回りのおかげで、自由自在に走ります。
かわいいデザイン、コンパクトなサイズ、適度に広い室内、適度に高い視点。室内は静かで、長距離でも疲れない。軽ハイトワゴンよりちょっとだけゼイタクですが、価格は同レベル。クルマ好きでも、これ1台で満足できそうです。
3位 ダイハツK-OPEN(ジャパン・モビリティ・ショー2025出展車両)
ダイハツの軽オープンスポーツカー「コペン」の次期モデルで、発売は約1年後? と噂されています。
これまでのコペンはFF(前輪駆動)でしたが、今回はFR(後輪駆動)に変更されます。これぞ世界最小の後輪駆動車!
世界的に小型車の採算性が悪化し、欧米メーカーが次々と撤退する中、国産メーカーは、究極の小型車である軽自動車をますます進化させ、ついにこんな超小型スポーツカーまで作ってしまうのです。
新型コペンは、日本の自動車産業の勝利を象徴することになるでしょう。
■国内屈指の超高級車が誕生
第2位 センチュリークーペ(ジャパン・モビリティ・ショー2025出展車両)
トヨタは2年前、センチュリーSUVを発売しましたが、次の一手はセンチュリーブランドを独立させること。そして、この超ゴージャスなクーペも、2027年前後に発売することになりそうです。
このクルマのハイライトは、左側のドアが前後2分割のスライド方式であることと、左側が超贅沢な一人乗りで、合計定員3名であることです。クーペでありながら、SUV的なフォルムを持ち、周囲のクルマから見下ろされることもない。まったく新しい超高級車の提案です。
■驚愕の「3列6輪ミニバン」
第1位 レクサスLSコンセプト(ジャパン・モビリティ・ショー2025出展車両)
堂々の1位に輝いたのは、あの6輪ミニバンです。乗用車のタイヤを6つに増やすなんて、トヨタは本当にとんでもないことをやりますね!
目的は、後輪の直径を小さくして、車体後部のスペースをよりフラットに、贅沢にすることですが、そんな実用性より、タイヤが6つあることのインパクトは絶大。市販化されれば、誰もが「すげえ!」と見とれるはずです。
レクサスの新たな最高級車として君臨するのにふさわしい。トヨタならやってくれるでしょう。
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清水 草一(しみず・そういち)
モータージャーナリスト
1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。代表作『そのフェラーリください!』(三推社)をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高はなぜ渋滞するのか⁉』(三推社)などの著作で道路交通ジャーナリストとして活動している。
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(モータージャーナリスト 清水 草一)

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