■「中学受験ブーム」に流されないで
新学年が始まり、通塾を検討したり、中学受験を考えたりするご家庭があるかもしれません。ただ、昨今の首都圏などの中学受験ブームを見ていると少し異常な過熱ぶりです。
たとえば、数年前には「小学3年生までに入塾しないと満席で入れなくなる」という言説がありました。少子化の影響で早くから生徒を集めようとする塾業界の影響もあるでしょうが、親御さんたちの焦りも反映されているのでしょう。
特に同世代が多く住むような地域では、局所的な情報に流されてしまいがちな傾向があると感じます。「みんながやっているから、うちもやらなくちゃ」と焦ってしまっているのが実態です。
しかし、小学校のカラーテストの点数がいいからと受験に向いていると結びつけるのは尚早です。授業を真面目に聞いていれば点が取れますし、一人の先生が複数の教科を教えるため、先生との相性も大きく影響します。
また、低学年向けを売りにした講座も出てきていますが、定員やクラスを少なめにして満席をアピールするという塾の戦術であることも考えられます。また、新しい講座には学力向上に直結するかどうか、検証不足なものもあるかもしれません。背景には少子化やブームがあることを改めて認識したうえで、一度立ち止まって考えてほしいと思います。
では、中学受験に臨むかどうかを、何で判断すればいいのか。もちろん一番はお子さんの意向が優先されるべきではありますが、「習い事に臨む姿勢」は一つの判断の目安になります。
■習い事から「プレッシャーに耐えられるか」見る
まず前提として、私自身は「能力的に受験に向かない子」はいないと考えています。30年以上現場で数多くの子供たちを見てきましたが、どんな子にも必ず伸びるタイミングは来ます。
そこで親御さんに注目いただきたいのは、対象のお子さんが、「いま」の時点で、中学受験というプレッシャーに耐えうる「成熟度」に達しているかどうかという点です。
中学受験では、困難な壁にぶつかっても、他人のせいにせず踏ん張れるかどうかが求められます。たとえ理不尽な結果がでても、受け入れ、気持ちを切り替えて前に進めるかどうかです。お子さんがいまその段階にあるのかどうか。「成熟度」が今どのレベルにあるのかを見極めるための目安として、私は「習い事」への取り組み方に注目しています。
小学生の定番の習い事である「水泳」は、よい例です。水泳をやっている子は体幹が鍛えられているため、塾の長時間の授業でも姿勢を崩さずに集中して座り続けられるというメリットをよく聞きます。しかしここで注目したいのは、水泳が「言い訳のきかない個人との戦い」だという点です。
■勉強への向き合い方がわかる「水泳」
あるお母さんは「苦しい水の中で根性をつけてほしい」とおっしゃっていましたが、まさにその通り。水泳は「タイム」という絶対的な数字でシビアに評価されます。
ですから、「コーチの教え方が悪い」といった他責の言い訳がいっさい通用しません。自分が練習をサボればタイムが落ち、真面目に頑張れば上がる。このごまかしのきかない世界で、他人のせいにせず自分を見つめ直せるかどうかが問われます。これは、中学受験と似たようなところがあるのです。
たとえば中学受験の算数などは、日々の積み上げがものをいう科目です。成績は右肩上がりに一直線に伸びるわけではなく、我慢の時期を経て、何かの歯車が噛み合った時に爆発的に伸びる。そういう例を過去に見てきました。
水泳をやっている子は、この「我慢の時期」を耐えればタイムが縮むという感覚が体に染みついているようです。教え子の中には「タイムがどんどん短くなるのが嬉しいし、自己肯定感が高まる」なんて話す子もいました。
また、教え子たちを見ていると、ライバルの存在も健全なメンタリティを育むことにつながっているようです。
■“大人びた感覚”があるかわかる「ダンス」
習い事として人気が高まっている「ダンス」も、水泳とは異なるアプローチで成熟度がわかる例です。
余談ですが、実は今の学校ではダンス部が増加傾向にあります。学校側も、みんなで一つのものを作り上げる力を持った生徒を求めているのでしょう。
私が生徒たちと話していると、ダンスをやっている教え子たちは「自分が踊ることで誰かを笑顔にしたい」と実に明るく語ってくれます。つまり「自分の表現で他者に喜んでもらう」という他者への視点を持てているということでもあります。これは、精神が大人へと成熟し始めている立派なサインと見ていいでしょう。
そして、もう一つ、ダンスを通じて見えた成熟がありました。ある小学6年生の教え子に「なぜダンスをやっているの?」と聞いたら、はっきりと「ストレス解消です」と答えたのです。
小学生の日常は、友人関係や親子関係の悩みなど、大人が思う以上にストレスに満ちています。受験勉強が重なればさらに負荷は増えます。
しかし、純粋に体を動かし、仲間と一緒に踊って発散することで、また机に向かうことができるすべを知っている子は、精神的にもタフです。教え子たちの姿を見ていると、こうした大人顔負けの「ストレス解消法」を知っている子は、入試という極限のプレッシャーにも確実に強いと感じています。
■タイパ・コスパで習い事を辞めさせないで
ここで、塾の現場で子供たちを見ている立場から、親御さんに一つ気をつけていただきたいことを挙げます。それは、習い事を大人の「タイパ」や「コスパ」で評価して安易に奪わないで、ということです。
最近は、習い事を「受験の役に立つかどうか」という損得勘定だけで捉える傾向があるようです。しかし、親御さん自身も学生時代に部活動など、何かに打ち込んだ経験があるはずです。それを「受験に役立ったのか?」と評価されたら、嫌な気分になりませんでしょうか。
子供が純粋に楽しんでいる習い事や趣味は、将来に生きます。あくまでも塾講師という立場ではありますが、「受験に専念させるため」と取り上げてしまうのだけは、やめていただきたいと思います。
今回は水泳とダンスを例に挙げましたが、他の習い事でも共通することはあるでしょう。これらの習い事での姿勢は、そのまま「中学受験という過酷な戦いに挑めるかどうか」のひとつの判断目安になります。
■タイミングの問題、「待つ」のも戦略
しかし、もしお子さんがいま習い事の壁にぶつかったときに、弱みを見せたり、行きたくないなどと態度を変えたりしても、「中学受験しない」「中学受験に向いていない」とは断定してほしくありません。それは単に「いまは中学受験という土俵に上がるタイミングではないかも」ということです。
中学受験の学習は、時に理不尽な結果を突きつけてきます。一生懸命に努力しても模試の結果が振るわないこともあれば、第一志望にご縁がないことだってあります。
そんなとき、親の意向だけで人間的な成熟度合いが途中段階の子を、むりやり受験に向かわせてしまえば、自信を喪失し、心が折れてしまうリスクがあります。過去30年の経験でも、生徒本人が頑張っているにもかかわらず、親の要求が高すぎて頑張り切れず、途中で心が折れてしまう子も見てきました。
私は、中学受験を始めるタイミングに「遅すぎる」はないと考えています。もし、今の習い事への姿勢を見て「時期尚早かもしれないな」と感じたなら、無理に塾へ入れる必要はありません。あえて「心が育つのを待つ」という選択をしてみてもよいと思います。
中学受験は数ある進路(針路)のひとつの過程です。今後の高校受験や大学受験もふまえて、柔軟な選択を考えてもいいのではないでしょうか。急がず、焦らない。
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渋田 隆之(しぶた・たかゆき)
国語専門塾・中学受験PREX代表
教育コンサルタント・学習アドバイザー。神奈川大手学習塾で中学受験部門を立ち上げ、責任者として20年携わる。毎年、塾に通う生徒全員と直接面談を実施。保護者向けにも、ガイダンス、進路面談、カウンセリングを担当し、これまで関わった人数は2万人以上にのぼる。日々の思いを綴るブログ「中学受験熱血応援談」は年間100万件以上のアクセスを獲得している。2022年7月に中学受験PREXを立ち上げ、現在も継続して中学受験の最前線に立ち続ける。国内最大の受験人数を誇る首都圏模試センターの中学受験サポーターも歴任し、中学校と受験生の橋渡しとなる情報提供を日々行っている。一番大切にしていることは、ご縁があり指導することになった子どもたちとご家族のために、誠心誠意、ベストを尽くすこと。著書に『中学受験 合格できる子の習慣 できない子の習慣』(KADOKAWA)、『2万人の受験生親子を合格に導いたプロ講師の 後悔しない中学受験100』(かんき出版)、『親の声掛けひとつで合否が決まる! 中学受験で合格に導く魔法のことば77』(KADOKAWA)がある。
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(国語専門塾・中学受験PREX代表 渋田 隆之)

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