地政学リスクの高まりで、ドローンは「便利なカメラ」から防衛・インフラの主役へ。国産機体で防衛需要を取り込むACSLと、迎撃で急変貌するテラドローンを、米AVAVの成功例とともに解説します。


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なぜ今、防衛ドローンなのか?新防衛銘柄「国産機体のACSL、迎撃のテラドローン」を分析(茂木春輝)
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なぜ今、ドローン株なのか?

 2026年の今、ドローンの役割は「空飛ぶ便利なカメラ」から、国の安全を守る「重要な防衛・インフラ設備」へと劇的に変わりました。


 このレポートでは、日本のドローン業界における上場企業2社、「 ACSL(6232) 」と「 Terra Drone(以下、テラドローン)(278A) 」、そしてドローン市場について解説します。この2社を分析する前に、まずはドローン企業の成長例として、米国市場での大成功事例を見てみましょう。


エアロバイロンメントが示す力

 防衛ドローンへの投資を考える上で、絶対に知っておくべき米国の企業があります。それが米国の AeroVironment(以下、エアロバイロンメント)(AVAV) です。


 エアロバイロンメントは、米軍向けの小型無人機や、ウクライナでの使用で注目された「スイッチブレード」と呼ばれるドローン(いわゆる自爆型ドローン)を製造している企業です。


 ウクライナ戦争で彼らのドローンが実戦で使えることが証明されると、米国防総省からの発注が殺到しました。その結果、売上は急拡大しました。株価はロシアによるウクライナ侵攻前の2022年2月時点で57ドル台だったものが、同年3月には95ドル台をつけて約1カ月で約65%の急騰をみせました。


<エアロバイロンメント(AVAV)2022年からの月足株価(2026年4月21日時点)>
なぜ今、防衛ドローンなのか?新防衛銘柄「国産機体のACSL、迎撃のテラドローン」を分析(茂木春輝)
出所:MARKETSPEEDIIより楽天証券経済研究所が作成

 エアロバイロンメントの成功で注目したいポイントは以下の2点です。


【1】「国の防衛予算」という巨大な財布が開くと、企業の売上は爆発的に伸びる。


【2】「実戦で使える」と証明された技術を持つ企業は、独占的な地位を築ける。


 米国に比べると日本の防衛費規模は小さいですが、それでも日本のドローン企業であるACSLとテラドローンは、上記の二つのポイントに向けて大きな転換点に立っています。


市場の追い風:日本政府も「ドローン防衛」に本腰

 日本政府も、従来の数億円する兵器が数十万円のドローンに負けるという「非対称戦」の現実を重く受け止めています。


 2026年度(令和8年度)の防衛予算では、無人機(ドローン)関連に約2,773億円もの予算をつけました(前年の約2.5倍)。

さらに「中国製などから脱却し、国産化を進めよう」という強い動きがあり、日本のドローン企業にとって極めて強力な追い風が吹いています。


<「無人アセット防衛能力」予算額の推移>
なぜ今、防衛ドローンなのか?新防衛銘柄「国産機体のACSL、迎撃のテラドローン」を分析(茂木春輝)
出所:防衛省「防衛力抜本的強化の進捗と予算」より楽天証券経済研究所が作成

ACSL(6232)は国産ドローンのリーディングメーカー

 ACSLは、ドローンの「機体(ハードウエア)」を作っている会社です。防衛省から大規模な注文を受け、「安全で信頼できる国産ドローンメーカー」としての立ち位置を固めています。高度な自律制御技術と量産体制を武器に経済安全保障の需要に応えています。


<ACSL(6232)2025年からの週足株価(2026年4月20日時点)>
なぜ今、防衛ドローンなのか?新防衛銘柄「国産機体のACSL、迎撃のテラドローン」を分析(茂木春輝)
出所:MARKETSPEEDIIより楽天証券経済研究所が作成

ACSLの売上と株価上昇のポイント

 ACSLの売上の大きな部分は「機体を作って売る」です。防衛省や警察などから「単価×納入台数」でまとまった受注を受けます。これはまさに、米軍からの発注で成長した初期のエアロバイロンメントと同じ軌跡です。国の予算に基づいた受注残高が積み上がりやすく、数年先の売上見通しが立ちやすいのが強みです。


 2026年4月7日、ACSLは防衛省が実施した入札において、「小型空撮機体」を2026年12月納期で約3.5億円、2027年12月納期で約0.7億円の大型案件を受注したと発表しました。


 今後の株価上昇の最大の鍵は「量産の成功による利益率(粗利率)の改善」です。手作り段階から工場での大量生産へ移行し、決算ごとに「利益率」が上がるかが今後に期待するポイントです。


テラドローン(278A)が狙う「システム覇権」と「実戦型ハード」の二刀流

 テラドローンは、ドローンを安全に飛ばす「空の信号機(UTMシステム)」を強みとするIT企業ですが、直近の大きな動きにより、ビジネスモデルが劇的に進化しました。


 UTMとは、まだ聞きなじみがないかもしれません。


 現在、世界中でドローンが安全に飛行するために運用管理システムが求められています。ドローンにとってのUTMは、いわば航空機にとっての管制システム、自動車にとっての信号機や道路の関係になるものです。


<UTMとはドローンを管理するシステム>
なぜ今、防衛ドローンなのか?新防衛銘柄「国産機体のACSL、迎撃のテラドローン」を分析(茂木春輝)
出所:筆者作成

テラドローンの売上二つの柱

 テラドローンの売上には、大きく分けて二つの柱があります。


 一つ目は、UTMシステム領域:国や自治体からの「初期導入費」+「月額利用料」+「ドローンが飛ぶごとの手数料(従量課金)」という、普及すれば利益が伸びるソフトウエア事業です。ドローンなどの社会実装に不可欠なUTM市場において、テラドローン傘下のベルギー企業「Unifly(以下、ユニフライ)」は圧倒的な先行優位を確立しています。


 欧州での豊富な運用実績や、米連邦航空局(FAA)との安全基準策定などを通じ、同社は単なるシステム提供者から、空のルールメイカーへと進化しています。


 カナダの空域でドローンを飛行する場合は、ユニフライのUTMシステムを通じて飛行承認を取得することが必須となっています。現在は、約80%の飛行申請がシステム上で自動承認となっており、飛行申請ごとの従量課金を実現しています。空域のインフラとしてドローンの普及により継続的な収益が期待できるビジネスモデルです。


 二つ目は、新たな防衛ハード領域(エアロバイロンメント化の要素):2026年3月、ウクライナの迎撃ドローン企業「Amazing Drones社」への出資と共同事業を発表。また2026年4月17日には迎撃ドローン「Terra A1」のウクライナでの実運用開始を発表しました。


 電子戦が飛び交うウクライナの「実戦」で鍛えられた迎撃技術を直接取り込んだのです。これは、エアロバイロンメントのように「実戦証明済みの防衛装備」を手に入れることを意味します。


 この3月の、システムの新たな国への「導入発表」が株価上昇の引き金になりました。


<テラドローン(278A)2025年からの週足株価(2026年4月20日時点)>
なぜ今、防衛ドローンなのか?新防衛銘柄「国産機体のACSL、迎撃のテラドローン」を分析(茂木春輝)
出所:MARKETSPEEDIIより楽天証券経済研究所が作成

 テラドローンの業績で留意するべきポイントは2026年1月期通期で、インドネシア子会社での火災事故やユニフライ固定資産における減損損失を計上しました。

これにより期初予想を下回りましたが、これらの要因は2027年1月期以降への重大な影響はないとしています。


<業績比較> 銘柄
コード 社名 項目 単位 2024年度
前期 2024年度
後期 2025年度
前期 2025年度
後期 278A テラドローン 売上高 百万円 1,914 2,522 1,943 2,840     営業利益 百万円 ▲362 ▲265 ▲666 ▲478     営業利益率 % ▲18.9 ▲10.5 ▲34.3 ▲16.8 6232 ACSL 売上高 百万円 2,050 606 976 1,623     営業利益 百万円 ▲1,026 ▲1,267 ▲754 ▲1,086     営業利益率 % ▲50 ▲209.1 ▲77.3 ▲66.9 出所:各社決算資料より楽天証券経済研究所が作成

個人投資家はドローンのトレンドをどう見るべきか

 地政学的リスクの急速な高まりとドローン市場の拡大は目を見張るものがあります。改めて言いたいのは、防衛銘柄ないしドローン銘柄として一くくりにするだけでなく、戦略の違いにも注目するべきということです。ドローンのソフトからハードまで取り扱う2社をピックアップしましたが、戦略は明確に分かれます。


 ACSLは「国の防衛予算」という確実な財布が主軸となる相手です。受注残高の積み上げと工場量産による利益率の改善を目指しながら、初期のエアロバイロンメントのように国家プロジェクト受注の実績を積み上げています。


 一方のテラドローンは、これまでの「将来のインフラ手数料を買う銘柄」という顔に加え、Amazing Drones社との提携で「今すぐ必要とされる迎撃兵器を売る銘柄」へと変貌しました。システムの長期的な成長を待ちつつ、迎撃ドローンの実運用進捗(しんちょく)という短期的な材料の多い企業です。


<ACSLとテラドローンのポジショニング比較> 比較項目 ACSL(6232) テラドローン(278A) エアロバイロン
メントとの
共通点 国家予算を背景とした機体量産 実戦証明済みの防衛技術を保有 収益の安定性 受注残高を積み上げ継続販売と
国家プロジェクトの補助金 UTMの収益モデルは市場拡大で安定するものの
新領域での成長段階でブレがある 株価上昇の要因 量産効果が段階的に顕現 複数カタリストが重なる リスク 量産遅延・コスト超過 事業多角化による焦点の分散 出所:各社決算資料より筆者作成

まとめ

 2026年、日本のドローン産業は、「防衛需要による相場」の入り口に立っています。


 日本の高い技術力によって安全保障を支える防衛企業。ドローンという巨大な成長テーマの中で「製造の効率化」と国家プロジェクトを進めるACSLと、ソフトとハードの二刀流で「グローバルな防衛テック」へと新領域を拡大するテラドローン。日本と世界のドローン市場が拡大することは大きな潮流であり、長期のトレンドとなると考えます。


(茂木 春輝)

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