※本稿は、森豊、松生恒夫『血糖値は「腸」で下がる』(青春出版社)の一部を再編集したものです。
■麦飯三食の時代に糖尿病が少なかった理由
食物繊維と糖尿病との関連を考える上で見落としてはならないのが、日本人の食事内容の変化です。
現在の糖尿病の罹患率は、昭和30年~40年代と比較すると35倍以上にも増加しているといいます。
当時の多くの日本人は、麦飯(米5~8対大麦5~2)を三食とっていました。しかも、一日の摂取エネルギーの中で穀物(炭水化物)が占める割合は、現代よりはるかに高く、70%前後もありました。現在、この割合は50%を切っています。要は、炭水化物を多くとっていたにもかかわらず、麦飯の時代は糖尿病が少なかったともいえるのです。
これは、大麦が入った麦飯の時代は食物繊維、とくに水溶性食物繊維を多くとっていたことが大きいと私は考えています。
糖尿病の新薬GIMMは、2カップのブルーベリーと2.5gの大麦β–グルカン(大麦100g相当)を中心に構成されているので、GIMMを服用しなくても、朝食に、たとえばもち麦(大麦の一種)とブルーベリーをとると、血糖値が上がりづらく、しかもセカンドミール効果(最初にとった食事=ファーストミールが血糖値を上げにくいものだと、次にとった食事=セカンドミール後の血糖値上昇も適切に抑えてくれること)が期待できます。
β–グルカンは大麦やオーツ麦などに多く含有されています。米や小麦には含まれない、大麦ならではの成分です。
GIMMに含まれるもう一つの水溶性食物繊維であるイヌリンは、野菜(たまねぎ、アスパラガス、ごぼうなど)のほか、穀物、果物(バナナ、ブルーベリーなど)に主に含有されています。またイヌリンは、人の消化管で消化・吸収・代謝され、排便量を増やし、健康的な腸内フローラの形成に貢献するばかりでなく、血糖値の上昇抑制効果も知られています。
これらの食材の組み合わせは、糖尿病予防や腸内環境改善のために、とても理にかなった組み合わせといってよいでしょう。
■知っているようで知らない食物繊維
腸の健康を維持・向上させ、さらには糖尿病を予防する食べ物・栄養素として、いの一番に挙げられるのが食物繊維です。食物繊維は、腸の健康に関わるだけでなく、糖尿病予防にも大きな役割を持っています。しかも、現代の日本人に不足している栄養素でもあるのです。
食べ物として取り入れた食物繊維は、最終的に大腸まで到達し、多くは便のもとになりますが、一部は腸の善玉菌によって分解されて短鎖脂肪酸になり、吸収されて小腸のエネルギー源になります。
さらに食物繊維は善玉菌のビフィズス菌のエサとなり、結果として腸内の善玉菌が増殖し、腸内環境が改善されます。
ちなみに、小腸の一番のエネルギー源はアミノ酸の一種であるグルタミン(うま味成分のグルタミン酸ではありません)で、二番目が、食物繊維が分解されて生じる短鎖脂肪酸の一種である酪酸です。大腸の場合は、酪酸が一番のエネルギー源です。
つまり、食物繊維をたくさんとると腸のエネルギー源が十分に供給されるだけでなく、腸の善玉菌のエサが増えて腸内環境がよくなり、さらには糖尿病を予防・改善することにつながるのです。
では、実際に食物繊維の摂取量を増やすと、糖尿病にどのような影響を与えるのでしょうか。
■食物繊維の増加で糖尿病の改善効果
2013年にブラジルの研究者シルバらは、2型糖尿病に対する食物繊維の効果をまとめたデータを提示しています。
対象研究数は13で、合計対象者は605例、平均年齢は62歳です。2型糖尿病の平均罹患(りかん)期間は9.2年で、食物繊維摂取量を増やした期間は、最短で1カ月半、最長が6カ月とされています。
その結果、糖尿病の状態を示す検査値の一つであるHbA1cが、食物繊維摂取量を増やした群(食物繊維を15g増加させた研究が多い)では、全体の平均としては0.52%程度改善する効果が認められました。この数値の正常値が5.6%以下ということを考えると、大きい数値といえます。
つまり、食物繊維摂取量を増加させることは、HbA1c値の改善に結びつくため、糖尿病の症状を改善させる効果が期待できるのです。
では、そもそも食物繊維とはどんなものなのでしょうか? 簡単におさらいしておきましょう。
「日本食品標準成分表」によると、食物繊維は「ヒトの消化酵素では消化されない食品中の難消化成分の総体」と定義されています。
カニの甲羅(こうら)やエビの殻の成分(キチン・キトサン)のように、動物性食品に含まれる食物繊維も一部ありますが、大部分は植物性食品に含まれています。
■キウイやバナナがコレステロール値の増加を抑制
食物繊維は、人間の体に消化・吸収されない成分ということで、その意味では、ビタミンやたんぱく質など、ほかの栄養成分のように消化・吸収されて力を発揮するものとは性質が根本的に異なります。
食物繊維が本格的に研究されるようになったのは、第二次世界大戦後のことです。
食物繊維には、大きく分けて二つの種類があります。
水に溶けない不溶性食物繊維と水に溶けやすい水溶性食物繊維です。糖尿病の新薬GIMMの主要成分であるβ–グルカンやイヌリンは、水溶性食物繊維に属しています。
まずは、この二つの食物繊維の特徴を整理しておきましょう。
◇不溶性食物繊維
穀類やいも類、豆類、根菜類に比較的多い。ほかに前述したキチン・キトサンなど。
特徴1 保水性が高い
・胃や腸で水分を吸収して大きく膨らむ
↓
・腸を刺激して蠕動(ぜんどう)運動を活発にして排便を促す
特徴2 硬くて食べづらいものがある
・よく噛んで食べる
↓
・満腹中枢を刺激し、食べ過ぎを防ぐ
特徴3 大腸内で発酵する
・善玉菌が増加する
↓
・大腸の環境がよくなる
(ただし、発酵性は水溶性食物繊維より小さい)
◇水溶性食物繊維
水に溶ける食物繊維。ペクチン(キウイやバナナ、柑橘類に多い)、アルギン酸(昆布、わかめなどの海藻類に多い)など。
特徴1 ネバネバしている
・水に溶けてゲル状となり、食べ物を包み込む
↓
・ 食べたものがゆっくり消化吸収されるようになるため、腹持ちがよくなる。血糖値の急激な上昇を抑える
特徴2 吸着性がある
・コレステロールを吸着して、便と一緒に排出する
↓
・コレステロール値の増加を抑制する
特徴3 大腸内で発酵する
・善玉菌が増加する
↓
・大腸の環境がよくなる
不溶性食物繊維と水溶性食物繊維は、どちらか一方だけとればいいというものではありません。それぞれをバランスよくとるのがポイントです。
■二種類の食物繊維の理想的なバランス
私が長年、腸の不調を訴える患者さんを診てきた経験から導いた理想的なバランスは、不溶性食物繊維と水溶性食物繊維を2対1の割合でとることです。
このことは、2002年に日本食物繊維学会誌に、次のような実験に基づいて、論文として発表しました。
アロエやセンナなどが主成分のアントラキノン系下剤を長期間連用したために、大腸の内側の粘膜が変色する大腸メラノーシス(大腸黒皮症(こくひしょう))の症状を認めた23例の慢性便秘症の人に対して、水溶性食物繊維の一種であるポリデキストロースを7g含有した健康飲料水100mlを30日間摂取してもらいました。
その結果、硬便を認めた20例中17例(85%)の人に便の性状の改善が認められました。また、下剤を常用した23例中14例(60.9%)で薬の減量が可能になりました。
つまり、ポリデキストロース(水溶性食物繊維)7gを30日間連続摂取することで、症状の緩和やQOL(クオリティ・オブ・ライフ=生活の質)の改善が可能であることが明らかになったのです。
長年にわたって慢性便秘の患者さんの食事指導を行ってきた経験から、不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の摂取量は、おおよそ2対1の割合が効果的であると考えていました。
そこで、日本人の食物繊維摂取量の平均が14~15g前後(その多くは不溶性食物繊維)であることから、この実験では患者さんに水溶性食物繊維の一種であるポリデキストロース7gを摂取してもらい、不溶性食物繊維2対水溶性食物繊維1の割合に近づけたわけです。
実験の結果、「不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の割合は2対1」が理想の割合であることが証明された形となりました。
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松生 恒夫(まついけ・つねお)
松生クリニック院長
1955年生まれ。東京慈恵会医科大学卒業後、同大学第三病院、松島病院大腸肛門病センターなどを経て開業。医学博士。
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(東京慈恵会医科大学客員教授 森 豊、松生クリニック院長 松生 恒夫)

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