※本稿は、権藤悠『頭のいい人になる 具体⇄抽象ドリル』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。
■言葉や事柄の構成要素を分解する「具体化思考」
「具体化思考」とは、言葉や事柄の構成要素を分解する思考法です。ピラミッドツリーを下に作っていくイメージです。物事がどんどん細分化していったり、横に枝分かれしていったりすることで、抽象的な物事を細かく分解し、鮮明にすることができます。
ここでは、具体化思考をさらに4つに分けています。この4つの要素を意識すると、具体化思考がまるっと身につきます。
具体化思考はこの4つ。
・分解思考
・相違思考
・分析思考
・推定思考
一つずつ説明していきます。
■具体化思考の本丸「分解思考」
分解思考というのは、言葉や物事を細かく分けていく思考法です。定義は具体化思考そのものとほぼ同じであり、具体化思考の本丸と言えるでしょう。
たとえば、「昆虫」というものを分解すると、チョウやハチ、テントウムシなどに分解できます。「昆虫」が頂点にあるピラミッドから、一つ下の階層に下りるイメージです。
そこに位置するものたちもさらに分解できます。「ハチ」を分解すると、スズメバチやアシナガバチ、ミツバチなどに分けることができます。これは、ピラミッドでいうと3つ目の階層に位置します。
これは無機的な例なので、ある程度知識がないとできない面はあります。けれども、「分解思考」で最も大切なのは、ざっくりした抽象的な物事を細かく分けていく感覚を身につけることです。
■ビジネスシーンに多い「抽象的な課題」
ビジネスシーンにおいては、抽象的な課題に頻繁に出くわします。「環境に優しい新製品の企画書を出して」とか「いい感じに進めておいて」とか。「え? 環境に優しいとは?」「いい感じとは?」というふうに、ふんわりしすぎていて考えようにも考えられないことって、たくさんありますよね。あるいは、「なんか最近調子が悪い」というように、対自分においても抽象的な課題にぶち当たることはよくあります。
いずれにおいても、分解することが解決の糸口になります。たとえば「環境に優しい」であれば、再生可能な素材を使うとか、長持ちする設計にするとか、色々なアプローチに分解できます。「いい感じ」の場合は、重視すべき点や期限を確認したりして、相手が思い描いている「いい感じ」の構成要素を細かく見ていくと、「いい感じ」の解像度が上がります。
また、調子が悪いというのが、具体的には頭が痛いということなのであれば、頭痛薬を飲めばよいということになります。「調子が悪い」という抽象的な状態を、「頭が痛い」というふうに分解するわけです。
このように、抽象的な言葉や事象、概念など、それだけではふんわりしていてよくわからないことは、細かく分ければ対処しやすくなります。つまり、分解思考は、具体的な思考・行動・実践に移す足がかりになる思考法だということです。この思考を使わないと、漠然とした状態のままになってしまうので、行動につながりにくくなり、当然、結果も出にくくなります。
■転職活動でも合コンでも使える「相違思考」
「相違思考」は、違いを探す思考法です。たとえば、合コンに参加したとします。自己紹介をするときに、男性の参加者は自分を含めてみんなマッチョだとしましょう。そうすると「趣味は筋トレです」と言っても、あまり個性をアピールできません。なぜなら、残りの男性たちもおそらく似たような趣味を持っているからです。
そんな中、バキバキのマッチョなのに「趣味は読書です。最近感銘を受けた本は、ドストエフスキーの『罪と罰』です」なんて言う人がいたら、存在感は一気に際立つでしょう。
要するに、単体だと特徴が見えにくいものを、あえて他のものと比べて「違いを見つける」ことで、特徴を浮き彫りにするのです。これができるようになると、自分の強みを見つけたり、自社の製品の良さを見つけたりして、差別化できるようになります。日々の仕事の人事評価に活用できる考え方や、就職や転職活動でも使えますし、仕事なら商品のPR等にも使えます。
反対にこの相違思考ができないと、行動や表現がありきたりになってしまうので、大勢の中で抜きん出ることが難しくなります。
■課題解決のためのスキル「分析思考」
「分析思考」は、分解思考と相違思考の両方を使って、物事の構成要素や関係性、特性を明確に理解する思考法のことです。たとえば、営業成績がふるわないときに、課題を分解したり、優秀な人との比較などを通して、どうすれば成績を伸ばせるのかという道筋を描くようなイメージです。
つまり、分析思考は課題解決のためのスキルだということ。分析思考ができないと、壁に当たったときにどうすればいいかわからず、挫折しやすくなると言えるでしょう。
■外資コンサルなどの採用試験でも問われる「推定思考」
「推定思考」は、抽象的な問いや材料の少ない問題に対して、自分なりの推察、仮説をもとに具体的な状況をイメージして課題を解決する思考法です。これは、外資系のコンサルティングファーム企業や金融企業、ITや総合商社などの採用試験で問われることが多い思考法で、いわゆる「フェルミ推定」と呼ばれるものです。
たとえば、「日本に電柱は何本ありますか」というような問題が出された場合。実際は、こんなことは調べないとわかりません。
具体的には、日本は47都道府県あるよなぁ→そのうちの一つを例にとって考えてみよう→日本の平均的な都道府県はどこだろう?→東京や大阪は大きすぎるし、鳥取や島根は小規模すぎる。
だから○○を基準にして考えてみよう→その都市は何人ぐらいが住んでいて、どのぐらいの間隔で電柱があるんだろう……。こんな感じで、ざっくり仮決めしながら答えをたぐりよせていくのです。
このプロセスにおいては、要素を分解したり、他との違いを比べたり、分析したりするので、「推定思考」は、具体化思考の総決算だと言えるでしょう。
推定思考ができるようになると、未知の抽象的なことに対しても、仮説を立てながら実行、改善して物事を進めていけるようになります。反対に、推定思考ができないと、わからないからできない、進まないということになります。ビジネスシーンではスピードが重視される場面も多いので、仮決めして進めていく力がないと、チャンスを逃しかねません。
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権藤 悠(ごんどう・ゆたか)
キーメッセージ代表取締役社長
1989年、広島県生まれ。 慶應義塾大学理工学部情報工学科卒業。ベンチャー三田会幹事。
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(キーメッセージ代表取締役社長 権藤 悠)