■ビジネスでカラオケは必要なのか
飲み会の二次会といえば定番なのがカラオケですが、「そもそも仕事でカラオケって必要なの?」という疑問を持つ人も多いのではないでしょうか。
私自身もカラオケ特有の内輪ノリには苦手意識がありました。また、コロナ禍以降はカラオケに参加する機会が減ったという人もいるかもしれません。それでも、カラオケは有効なコミュニケーションツールとして、ビジネスの武器になるものだと考えています。
ビジネスは大きく分けて2つの要素で決まります。1つは「ROI(投資対効果)」、つまり利益を最大化するための合理性です。
もう1つは、「人間的・精神的なつながり(エモーショナルコネクト)」です。モノやサービス自体の魅力・コストパフォーマンスだけではなく、「なんとなくこの人と一緒に仕事をしたい」「信頼できそう」という感情による後押しが、最終的な意思決定で大きな影響力を持ちます。
飲み会やカラオケなど、ビジネスの場とは一見かけ離れた非日常空間でのコミュニケーションは、まさにこの感情的なつながりを生む絶好のチャンスです。カラオケという場は、お互いの素の部分が見えやすく、自然と打ち解けやすい。会社の同僚、取引先やクライアントと一緒に行けば、「仕事上では見えない一面」がのぞけて、距離がグッと縮まります。
■新入社員歓迎会で「選んではいけない曲」
一方で、異なる世代の方が一緒の際に、どのような曲を歌えばいいかわからないという人も多いと思います。特に新入社員歓迎会や取引先の若手を交えたカラオケとなると、40代以上が選曲で失敗してしまう例が少なくありません。
ここからは若手が参加するカラオケで「これはやめたほうがいい」というNG曲・NGパターンを紹介します。
アイドル系の曲(特にコアファンが多いグループ)
若い世代に合わせようとして、King & Prince、SUPER EIGHT(旧・関ジャニ∞)などコアファンが多いアイドルの曲を、中途半端な理解で選ぶケースがあります。
完璧に踊りや振りをマスターしていて、あえて“ネタ”として盛り上げる自信があるならともかく、どこかぎこちないまま歌ってしまうと、「おじさん(おばさん)が無理してる」「なんかイタい」という空気が流れがちです。特にコアなファンが見たら不快に思う可能性もあります。
同じアイドル系の曲でも、嵐やSMAPの王道ソングであれば、ギリギリセーフかもしれません。
■LUNA SEA、長渕剛、ハマショーは知らない
上の世代×ニッチな曲
誰もが知っている大御所アーティストの曲でも、アルバムの隠れた名曲やB面曲など、マニア向けの曲は盛り上がりに欠けます。
特に、世代間で知名度にギャップがある歌手の曲には注意が必要です。LUNA SEA(河村隆一)、長渕剛(「乾杯」はOK)、浜田省吾、光GENJIの曲は、上の世代からは熱狂的に愛されていますが、20代・30代の若手にはあまり知られていません。
私が実際に見かけた中で面白かったのが、ある上司がT-BOLANの曲を次々と入れてしまったケース。「離したくはない」や「マリア」など有名な曲ではあるものの、若手社員が誰一人知らず、「これは“ボラハラ”ですね」と話題になっていました。
T-BOLAN世代からすれば青春ソングでも、若い世代には「馴染みがない」「あの暗めの感じが続くとちょっとシンドイ」という声が正直あります。懐かしさで自分だけが気持ちよくなってしまい、周囲を置いてきぼりにするのは絶対に避けたいところです。
間奏が長い曲、過度な下ネタ・セクシャルな曲
90年代やそれ以前の曲には、やたら間奏が長いものが多い。若い世代は「曲は3~4分程度」のテンポ感ですから、疲れてしまいます。たとえば、Mr.Childrenの「終わりなき旅」は名曲ですが、長い間奏の間にスマホをいじり始める……といったことになりがちです。
また、桑田佳祐の曲には、少々下ネタ寄りの歌詞やタイトルがあるものも。「マンピーのG★SPOT」など、昔から盛り上がる定番曲ではありますが、新入社員が引いてしまうおそれもゼロではありません。特に女性の多い職場・クライアントと行く場合には、避けるのが無難です。
■入れるべき曲の「3つの基準」とは
それでは、どんな曲を選べば失敗しないのでしょうか。世代が異なる参加者もオールマイティに盛り上がれる歌手と曲の選定基準は3つです。
①歌手の知名度が高い
②世代を問わず聞いたことのある曲
③アップテンポ(男性歌手の場合は特に)
具体的には次のポイントを押さえれば、大外しすることはほぼありません。
■筆者が「Get Wild」を歌うワケ
紅白歌合戦で歌われた曲
紅白歌合戦は、世代を超えて多くの人が観る番組です。
たとえばYOASOBIの「夜に駆ける」や米津玄師の「Lemon」は紅白出演後、一気に認知度が広がりました。上の世代も「名前は聞いたことある」と感じやすいので、違和感が生じにくい選択といえます。
NetflixやTikTokでリバイバルした曲
去年はNetflixで『シティーハンター』が実写映画化され、TM NETWORKの「Get Wild」が国内外で再び話題になりました。ちなみに、私がよく選ぶ曲のひとつでもあります。
また、槇原敬之の「もう恋なんてしない」や、松原みきの「真夜中のドア~Stay With Me」など、昔の名曲がTikTokを起点にリバイバルヒットする例が増えました。
上の世代には懐かしく、若い世代には新鮮という絶妙な位置づけで、世代を橋渡しする曲として大いに盛り上がります。
■大切なのは「思いやりの心」
カラオケにおいて大切なことは、「全員が知っている曲を入れる」「人の歌をキチンと聞く」という思いやりの心です。
せっかく全員が一緒にいる空間なのに、自分の番以外はずっとスマホを見ている……では盛り上がるはずがありません。次に歌う人のためにマイクを渡したり、拍手や手拍子でサポートしたり。そうした小さな気配りこそが「この人、感じがいいな」「一緒に働きやすそうだな」というポジティブな印象を与えます。
なぜ私がカラオケを重視しているのかというと、AIが人間の多くの業務を代替する時代においては、「感情を通わせる」部分が大きな価値を持つからです。
ぜひ今回あげた「選んではいけない曲」は慎重に避けながら、皆が楽しめるカラオケを実践してみてください。歌の上手さよりも、「どれだけみんなを喜ばせられるか」という姿勢のほうが、ビジネスパーソンとしての成長と信頼を後押ししてくれるはずです。
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yuuu(ユウ)
会食専門家・幹事研修講師
京都大学大学院修了後、非体育会系・アルコールに弱いにもかかわらず、新卒で電通に入社。入社当時は競合代理店である「博報堂の回し者」と社内で揶揄されるほどの落ちこぼれであったが、先輩の言葉をきっかけに会食に全力で取り組むように。最大28回会食/月に及ぶ苦戦苦闘の末に、すべての会食・食事会を誰もが成功に導くことができる、徹底的に実務に即した体系的な会食ノウハウ=「会食メソッド」を独自に生み出す。その後、自らセッティングした会食をきっかけに、念願のスタートアップ企業に就職。「会食メソッド」の一部を公開したnoteは大きな反響を呼び、noteでは異例の約30万PVを達成。X(旧Twitter)フォロワー数4万1500人(2025年5月時点)。著書に『ビジネス会食 完全攻略マニュアル』(ダイヤモンド社)がある。
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(会食専門家・幹事研修講師 yuuu 構成=プレジデントオンライン編集部)