※本稿は、退職代行モームリ、大山真司『今の会社、ヤバいかも⁉ 3万人の「もう無理!」でわかる会社の見分け方』(小学館クリエイティブ)の一部を再編集したものです。
■「どの時代でもアウト!」なトンデモ上司たち
退職代行をしていると、「令和のご時世に⁉」と耳を疑うようなセクハラやパワハラをやっている上司がまだまだ多いことがわかります。しかし、なかにはそんなレベルをはるかに超越した「どの時代でもアウト!」というトンデモ上司の事例もあります。
ここでは、私たち退職代行サービス業者でさえ驚いた、あまりにぶっ飛びすぎている、ヤバ度★5以上の「モンスター上司」たちを紹介していきましょう。
●生命保険をかけて自殺しろ!(建築業・S社勤務 20歳/男性)
九州某県の土木・建築会社に勤めて2年経つが、パワハラがひどい。殴る蹴るは当たり前だし、口癖のように「生命保険をかけて自殺しろ!」と言ってくる。人の話を聞かないからまともな会話にならない。退職代行を使うしかなかった。
依頼者にいつどこで誰に言われたのかを確認すると、「言ってくるのは“ヤンキーあがり”のバカ社長で、何回も言われているので、場所や時間は憶えていない」とのことでした。「株式会社○○(会社名) 社長」で検索するとTikTokのアカウントがあり、社長ががっつり出演していました。見た目も話し方も「さもありなん」という印象の方で、この感じで話を聞かない社長なら、退職代行を利用するしかないだろうなと思いました。
■「辞めるなら陰陽師代120万円を請求する」
●陰陽師代120万円を払え!(情報通信業・Fソフト勤務 43歳/男性)
朝礼で「○○(社長の名前)を信じる!」などと唱和させて、洗脳されているみたい。
ほとんど詐欺や恐喝に近い事例で驚きましたが、結局、依頼者の方は陰陽師代なるものを払うことなく、無事に退職することができました。
これと同様ではありませんが、退職時に金銭の返還を要求される事例は散見されます。よくあるのが、宅地建物取引主任者(宅建)などの資格や各種免許を会社負担の費用で取得していて、退職時にその費用の返還を求められる事例です。会社としても、自社でより活躍してもらうために費用負担したのに、すぐに辞められてしまうと損失が大きくなるため、「資格取得から○年以内に退職した場合には費用の全額を返還する」といった内容の契約書にサインさせることがあります。しかし、こうした契約は、従業員に対する罰金制度と同様、労働基準法第16条で禁止されており、無効となります。
ただしグレーゾーンもあります。会社側が従業員個人に資格などの取得費用を貸し付けた形を取り、「資格取得から○年以上勤務した場合にはその費用の返還(債務)を免除する」としていた場合、その「○年」未満で退職すると返還に応じなければならない可能性もあるので注意が必要です。
■男性上司が女性社員の私服のワンピースを着用
●女性社員の服を勝手に……(サービス業・B社エステティシャン 25歳/女性)
退勤時、ユニフォームから着替えようとした時に私服がなくなっていました。
入社して2カ月しか経っておらず、直属の上司でもあったので、ほかの人に相談できる環境でもありませんでした。その後もセクハラ発言が多く、「○○(同僚の従業員)とホテルに行った」などの話を聞かされ、精神的なストレスで退職に至りました。
冗談のつもりだったのでしょうか? 見た瞬間の衝撃の大きさは、想像を絶するものだったでしょう。そんなことをされて笑ってくれる女性がいると思う思考回路がヤバいです。しかも、そのワンピースは破れてしまい、使い物にならなくなったそうです。
ちなみに、これは退職代行の依頼事例ではなく、弊社従業員が前職で経験したことです。その後、彼女は「自分と同じような経験をしている人の力になりたい」という思いで弊社に転職してきてくれました。
■ノルマ未達者に四つん這いでトンネルをくぐらせる
●神様へのお祈りが足りないから!(サービス業・Y社宅配営業 26歳/女性)
新規顧客獲得のノルマがきつく、未達分を自腹買取していました。稼ぐために働いているのに自社製品を買うなんてアホらしいと思いましたが、先輩から「買わないの?」と圧をかけられます。また、上司がデスクの間に板を架け渡してトンネルを作り、ノルマ未達の者はここをくぐって帰れと言われ、四つん這いになってくぐらされました。その上司が「新規顧客が増えないのは、お客さんが増えますようにと神様にお祈りしないからだ。
上司や先輩が圧力をかけて自社商品の購入を強要するような場合は、パワハラに該当する可能性があります。圧力の程度に関しては、「社会通念に照らして相当と言えるかどうか」という観点で判断され、具体的には上司や先輩からの働きかけの回数やその時の態度、手段などを総合的に見て判断されます。上司などから頻繁に「買わないの? なんで?」などと言われたり、この事例のようにノルマ未達の人に屈辱的なことをさせたりする場合は、パワハラと判断されるのではないでしょうか。
■宗教に関する嫌がらせ「レリハラ」
また、神様にお祈り云々ですが、「レリハラ(レリジャス・ハラスメント)」、つまり宗教に関する嫌がらせの一種になるでしょう。レリハラの事例は増えていて、このほかにも「社長から新興宗教の勧誘があり、会社経費で入信費用が支払われて入信したが、以後、毎月の会費は自腹で払わされた」という事例や「会長や社長が某宗教の信者で、選挙で某政党に投票するように言われた」といった事例がありました。断りにくい関係性の相手に入信を勧誘するというのはレリハラの典型例で、かなりヤバい会社です。
■「あなたの話は聞きませーん」と連呼する総務担当
●嫌がらせ電話が40回以上!(小売業・F社U店販売員/パート 20歳/女性)
ファッションアイテムを販売する店舗で働いています。前から退職を考えていたのですが、雰囲気的になかなか辞めたいと言い出せませんでした。
モームリを利用して辞めた後、社長がモームリに昼夜を問わず40回以上も嫌がらせ電話をかけたらしく、本当に辞めてよかったと思いました。
依頼者も社長の粘着質な性格をわかっていたので、退職を言い出せなかったのかもしれません。このほか、退職意思を通知する電話をかけた際にヤバい対応をする会社や上司は少なくありません。
同じ職場で電話に対して「あなたの話は聞きませーん」と機械的に連呼している人がいることを想像したら、かなり滑稽ですよね。でも、それが自分の会社だと考えると、滑稽などと言っている場合ではありません。
■体調が悪くて退職の意向を伝えると…
●電波ゆんゆん 陰謀論上司(サービス業・K社アルバイト 29歳/女性)
店長の特殊な思想に疲れてしまいました。具体的には「日本人は優秀な民族であるため、欧米諸国が秘密裏に根絶やし作戦を行おうとしている」と考えているようです。そのため、輸入された小麦粉や砂糖、乳製品、食品添加物などすべてが毒だと考えていて、日々の食事などに過度に干渉してきます。また、西洋医学も悪だと信じていて、体調が悪くて退職の意向を伝えたところ、「西洋医学の治療法ではなく、東洋の治療法で克服できるように試してみてほしい」という趣旨のことを言われました。もしもこの会社で働いている時に大病になったら、治療に理解が得られず命に関わる可能性があると感じました。
これはフラワーアレンジメントの会社の事例でした。日本文化の「生け花」ではなく、西洋文化の「フラワーアレンジメント」の会社です。使用する切花や生花も輸入物を避けては通れないと思うのですが……、そのあたりのことに関して、この店長さんはどうしているのでしょうかね?
■いつ電話しても「ろれつが回っていない」泥酔店長
●ろれつが怪しい、いつでも泥酔店長(接客業・ガールズバーSアルバイト 27歳/女性)
休日でも客と連絡を取り続けなければいけないストレス、指名客を呼ばなければいけないプレッシャー、質の悪い客への接客ストレスなどの積み重ねで限界を超えました。
加えてオーナーがいつでも酔っぱらっていて、あまり相談などもできません。
ただ、このような辞め方になったことを申し訳なく思っているとお伝えいただければ幸いです。
この事例の人からは依頼時に、「オーナー店長はいつでも泥酔しているので、話が通じるかどうか……」と聞いていました。正直なところ、まさかそんな人はいないだろうと思っていたのですが、オーナーは本当に昼でも夜でも深夜でも、朝に電話をかけてもろれつが回らないほど酔っていて、何をしゃべっているのかが判別できず、なかなか退職代行の業務が進みませんでした。水商売の経営者は破天荒な方も多いですが、そもそも会話が成立しない、といった事例は初めてでした。
それにしても、あんなにずっと泥酔していて、仕事とか体とか、大丈夫なのだろうかと心配になってしまいました。
驚くようなモンスター上司はまだまだいます。傾向としては、ワンマン経営が可能なオーナー社長に多いようですが、会社というものは実際に入社してみないとその実態がわからないことがほとんどです。運悪くこういった上司や社長が野放しになっている職場に来てしまったら、自身が大きなダメージを受ける前に、少しでも早く辞めることをお勧めします。
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退職代行モームリ
アルバトロスが管理する退職代行サービス。顧問弁護士監修×労働組合提携×株式会社の管理により、安心安全・確実に業務に取り組んでいる。退職代行業界ではシェアの半分以上を有しており、ダントツの業績となっている。
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大山 真司(おおやま・しんじ)
転職アドバイザー
1989年生まれ、岡山県出身。
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(退職代行モームリ、転職アドバイザー 大山 真司)