※本稿は、桜川シュウ『最強の副業 ライバー社長が教える、ゼロから月100万円を稼ぐライブ配信術』(ワニブックス)の一部を再編集したものです。
■人と人が画面越しでつながる世界
あのとき、なぜか胸騒ぎがしました。
世界がまだコロナという言葉すら知らなかった頃、中国で「原因不明のウイルスが広がっている」というニュースが流れました。チャンネルを替えると、同じ中国の旧正月に合わせて大量の観光客が日本を訪れるというニュースが映し出されていました。
それを見た瞬間、私は直感しました。「これは、大変なことになるかもしれない」と。
ちょうどその頃、ライブ配信の仕事のお誘いをいただいていたのですが、正直、当時はライブ配信にそれほど魅力を感じていませんでした。でももし、この未知のウイルスが世界中に広がったら……真っ先に打撃を受けるのは、舞台・映画・イベントなど、リアルに人が集まるエンタメの現場なのでは?
その一方で、画面越しでつながる“ライブ配信”の世界は、むしろ伸びていくかもしれない。そう考えた私は、直感に従ってライブ配信の世界に足を踏み入れる決意をしました。
そしてそれは、まさに運命のようなタイミングでした。
■才能がない人はうまくいかない?
ライブ配信を始めたのは2019年12月。
ただ、ライブ配信の世界に入ったとはいえ、私にはずっと根深いコンプレックスがありました。芸能界やクリエイターの世界には、才能にあふれた方がたくさんいます。「また、才能がないと批判されるのではないか」と、内心では怖がっていたのです。
トップライブクリエイターたちは、発想力も見せ方もまったく違う。天性のエンターテイナーとして、人を惹きつける空気をまとっている。私はそれとはまったく違うタイプです。だからこそ、生配信という“即興勝負の世界”では、分析や努力なんて通用しないんじゃないか……そんな不安を感じていたのです。
それでも私は、自分が最も得意とする“リサーチ”から始めることにしました。
■マツコ・デラックスの話術から学んだこと
まずは、生配信における「会話」について徹底的に調べました。
人の心を動かすトークというのは、カリスマ性だけでは成り立たない。時にはスマートに、時にはユーモアを交えながら、相手の懐にスッと入り込む。その絶妙な距離感とリズムは、決して偶然ではなく、“訓練と観察”の積み重ねから生まれていると気づいたのです。
特にマツコさんの話には、明確な特徴がありました。強く押し出すというよりも、相手に寄り添う。どんな言葉にも、「私はあなたのことを理解したい」「あなたの考えをリスペクトしている」という気持ちが込められているように感じたのです。
そこに通底していたのは、“共感力”。会話で大切なのは、相手の心を開くこと。そのためには、共感の姿勢が必要なのだと、私は初めて気付くことができたのです。
■配信のゴールデンタイムは20~24時
話し方の研究に加えて、私はライブ配信そのものの“構造”についても徹底的にリサーチしました。どの時間にリスナーが集まり、どの時間にお金が動くのか。
まずわかったのは、配信には“ゴールデンタイム”が存在するということ。夜の20時~24時はリスナー数が最も多く、ギフトのやり取りも活発です。当然、そこには多くのライブクリエイターが集中していて、ライバルだらけの戦場のような状態です。
ここで勝ち抜くには、圧倒的な人気や運、そして長期的な努力の積み重ねが必要で、短期間で結果を出すのは難しい、と判断しました。
そこで私は、「人と違うところで勝つ」方法を探したのです。視点を変えると、たとえ大勢のリスナーがいなくても、“本気で応援してくれる人”が1人でもいれば、トップに立てるチャンスがあることに気付きました。
つまり、大量のアクセスを狙うより、“質の高い応援”を得ることの方が、自分のスタイルに合っていたのです。
■支援力の高い人は「夕方」に集まる
次に注目したのは「時間帯」。深夜帯に配信するライブクリエイターは多く、逆に朝~午前中の時間帯にはライブクリエイターが圧倒的に少ないことがわかりました。
では、リスナーの中でもギフトを贈る“支援力の高い人”は、どの時間帯に現れるのか。会社勤めの方は平日の昼間は仕事をしているし、夜は会食や家庭の時間に使う人が多い。そう考えていったとき、私の中でひとつの答えが浮かびました。
それが「夕方」だったのです。
理由については後で詳しく触れますが、この分析結果に基づいて夕方を自分の勝負時間に設定し、そこにすべてのリソースを注ぎました。最初は少しずつの積み重ねでしたが、着実に応援してくれる人が増えていき、配信の質と見せ方を工夫し続けた結果、私はトップライブクリエイターと呼ばれるようになったのです。
■座ってマイクの前で喋る+昭和歌謡
人には必ず、何かしらの才能がある――私はそう信じています。ただ、その持っている才能を活かせるかどうかはその人の能力によるところがあると思っています。
本当に天性の才能を持っている人はごくわずかかもしれません。でも、努力や工夫次第で、彼らと肩を並べるほどに自分の持ち味を磨くことはできる。私はそう確信しています。
私は、自分を天才ではなく“秀才タイプ”だと思っています。突出した発想力や企画力があるわけではありません。それでも、「どうすれば人気が出るのか」をひたすら研究し、寝る間も惜しんで試行錯誤し、実践して結果を積み上げてきました。
現在は“ドール”になりきったスタイルでライブ配信をしていますが、始めた当初はごく一般的な配信スタイルでした。当時流行っていたのは、椅子に座って大きなマイクを前に喋るシンプルな形式。私はこれをベースに、新しい切り口を加えて配信を始めました。
ターゲットに設定したのは、経済的に余裕のある“大人世代”。ライブ配信には幅広い年齢層のリスナーがいますが、ギフトという収益構造を考えれば、経済力のある層を狙うのが最も効率的です。
では、その世代に響くテーマとは何か? 私が辿り着いたのが「昭和歌謡」でした。
■大人世代は「癒し」や「安らぎ」を求めている
山口百恵さん、中森明菜さん、中島みゆきさんといったレジェンドの歌は、テレビかYouTubeで耳にしたことはありますが、リアルタイムでは聞いたことはありません。ただ、カラオケで年配の方がよく歌っているのも印象的でしたし、いい曲だなと思っていました。
大人世代の方々は、日々新しい情報に触れている半面、カラオケではつい懐かしい曲を選びたくなる。
次は配信時間です。
先ほど紹介したように、20時~24時の“ゴールデンタイム”の配信では私は結果を出すことが難しいと感じていました。そこで、あえて16時~17時という“空白の時間”を狙うことにしたのです。
この発想の背景には、経営者である母や、私のまわりにいた多くのビジネスパーソンの生活リズムがありました。どれだけ遅くまで飲んでも、朝は早く起きてはたらき、ジムに行く方も多い。
午前から15時頃までは非常に忙しいが、仕事をダラダラ長引かせることはなく、きちんと区切って切り上げる。そして、16~17時に一旦家に帰って身支度を整える。まさにその“隙間時間”が、私の狙い目でした。
■“昭和歌謡スター”になりきり、大成功
そして私はこの隙間の時間帯に“昭和歌謡スター”としてひな壇に座り、MCになりきって配信を行ったのです。画角も工夫し、当時のテレビ番組を思わせる引き気味のアングルに設定。
この戦略は見事に当たりました。
当初はトップライブクリエイターに比べればリスナー数も少なく、100人程度が視聴する配信でしたが、その100人が非常に濃く、熱量の高い“少数精鋭”だったのです。配信開始初月で月収50万円、2カ月目には100万円に到達。数は少なくても、ギフトの伸びとして顕著に表れ、結果につながっていきました。
「誰が見ているか」「いつ見ているか」。
このふたつの軸を見極めることで、ライバルがいない時間に、お金が動くターゲット層にアプローチする――この“逆張り戦略”が、私のライブ配信成功の第一歩となったのです。
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桜川 シュウ(さくらがわ・しゅう)
女優、タレント、インフルエンサー
1995年3月生まれ。愛知県育ち。TikTokライブクリエイター、経営者。アイドル、女優業を経てライブ配信デビュー。2020年に言葉を発さずに人形のようなキャラクターを演じる「ドール配信」という独自のスタイルで注目を集め、配信で70万人の視聴者を集めるなど、大きな反響を呼んだ。現在はライバー事務所Doulu inc代表も務めながら、多くの生徒にライブ配信を教えるスクール、講習会での経験も多数。教え子は1500人以上にのぼる。TikTok:@shu_.tiktok
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(女優、タレント、インフルエンサー 桜川 シュウ)