昨年秋に、イギリスのタイムズが発行している高等教育情報誌「Times Higher Education(THE)」で世界の大学ランキング2025が発表された。日本のトップ大学である東京大学は28位。
※本稿は、『プレジデントFamily2025春号』の一部を再編集したものです。
■「少人数教育」が目玉で勉強三昧のイギリス上位校
トップ100にランクインする半数が、英米の大学だ。実際に日本から海外大を目指す学生のほとんどが英米大志望だという。
※THE世界大学ランキング2025年版では、教育(学習環境)、研究環境、研究の質、国際性・国際的展望、産業の5つの領域における18の指標により各大学が評価されている。
そのなかで堂々の1位に9年連続で輝いたのはイギリスのオックスフォード大学だ。現存する英語圏の大学では最も古い歴史(設立は11世紀)を持つ。
そして5位に、同じくイギリスのケンブリッジ大学がランクイン。13世紀にオックスフォードの街の人々と対立した学者らが設立した名門で、オックスフォードと合わせて「オックスブリッジ」と呼ばれる。
大学院時代から計7年をイギリスで過ごし、現在は海外トップ大進学塾「Route H」カウンセラーとして活躍する篠塚伸夫さんは「オックスフォードはPPEという哲学・政治・経済を学ぶ学科が看板。一方、ケンブリッジは物理・生物・化学などの自然科学系学科が人気です。
オックスフォードはマーガレット・サッチャー、トニー・ブレア、ボリス・ジョンソンなどイギリスの歴代首相を輩出。一方のケンブリッジは万有引力を発見したアイザック・ニュートンや、進化論のチャールズ・ダーウィン、多数のノーベル賞受賞者、学究肌として知られる国王のチャールズ3世が卒業した。
日本では、教員が大教室で大勢の学生相手に講義を行い、ゼミもある程度の人数で進められることが多い。さらに、講義外の学びは学生の自主性にゆだねられているが、オックスブリッジではどうなのか。「オックスフォードでは“チュートリアル”、ケンブリッジでは“スーパービジョン”と呼ばれる徹底した個人指導が有名です。教員と学生が1対1(または1対2~4などの少人数)で、専門分野について白熱したディスカッションを行う時間です。少人数で教授とディスカッションを深める中で、学生は非常に高い専門性を身に付けていきます」と語るのは、スタンフォードオンラインハイスクール校長の星友啓さんだ。
イギリスは二大巨頭のオックスブリッジ以外に、インペリアル・カレッジ・ロンドン(ICL)も9位にランクイン。名前通り、まさに大英帝国最盛期の20世紀初頭に設立された大学だ。
ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンやキングス・カレッジ・ロンドン、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスと同じロンドン大学の一つであり、オックスブリッジが地方都市にあるのに対して、ロンドンにあるので都会生活を楽しめる。
「イギリス屈指の理系の名門大学ですね。
■好奇心豊かな異才が集うMITが2位
2位にランクインしたのは、アメリカのトップ大学・マサチューセッツ工科大学(MIT)だ。「世界最高峰の技術とイノベーションを生み出す、実践重視の理系トップ大学です。ボストンにあるので比較的治安もいいですね」と篠塚さん。
Route Hカウンセラーの入谷和良さんいわく「好奇心のままに突き進む、ちょっとクセの強い異才の集まりです(笑)。MITでは入学時の選考で、いかに面白くふざけることができる人間かを見られる印象です。例えば『ハック』と呼ばれる、大学当局の目を盗んで行われる、知的かつ洗練されたいたずら(MITのシンボルとして知られるグレートドームのてっぺんにMIT Policeのパトカーにそっくりの模型を置き全米を驚かしたことも)を行うことが伝統になっているのもMITならではでしょう」とのこと。
■アイビーリーグの3校が10位以内にランクイン
アメリカには「アイビーリーグ」と呼ばれる東海岸の八つの名門私立大学があり、そのうち3校がベスト10にランクインしている。
その筆頭が3位のハーバード大学で、全米で最も歴史が古く(17世紀設立)、最も有名な大学といってもいい。ハーバード大はMITと車で20分の距離に位置し、学生がお互いの授業を受けられるように提携もしている。
「合格率はわずか3%台と最難関の大学。海外大を目指す誰もが入りたいと思う憧れ校です。
英語塾「J PREP」代表の斉藤 淳さんは「大学院教育に重点を置いていて、他の大学に比べて大学院生が圧倒的に多いのも特徴。政治エリートになるための、社会科学が特に人気です」と語る。
ジョン・F・ケネディ、ジョージ・W・ブッシュ、バラク・オバマなど大統領を多数輩出している大学でもある。
4位にランクインしたのは、アイビーリーグのプリンストン大学。総合大学ながら学生数が少なく、指導の手厚さに定評があるという。学部教育に力を入れているようだ。また、ハーバード大と比較したときに、実践よりも理論に重きをおいた指導を受けられると聞く。
「物理学・数学の分野で歴史的な研究が行われていることで有名です。卒業生にノーベル賞受賞者が多く、大学に潤沢な資金があるので、学生の研究にお金をかけられます。ただし大学の入学時に論文提出が求められるので、早めに準備することが求められます」(入谷さん)
(後編につづく)
(プレジデントFamily編集部)
上位には、どんな学校があるのか。世界の大学事情に詳しい4人に話を聞いた。
※本稿は、『プレジデントFamily2025春号』の一部を再編集したものです。
■「少人数教育」が目玉で勉強三昧のイギリス上位校
トップ100にランクインする半数が、英米の大学だ。実際に日本から海外大を目指す学生のほとんどが英米大志望だという。
※THE世界大学ランキング2025年版では、教育(学習環境)、研究環境、研究の質、国際性・国際的展望、産業の5つの領域における18の指標により各大学が評価されている。
そのなかで堂々の1位に9年連続で輝いたのはイギリスのオックスフォード大学だ。現存する英語圏の大学では最も古い歴史(設立は11世紀)を持つ。
そして5位に、同じくイギリスのケンブリッジ大学がランクイン。13世紀にオックスフォードの街の人々と対立した学者らが設立した名門で、オックスフォードと合わせて「オックスブリッジ」と呼ばれる。
大学院時代から計7年をイギリスで過ごし、現在は海外トップ大進学塾「Route H」カウンセラーとして活躍する篠塚伸夫さんは「オックスフォードはPPEという哲学・政治・経済を学ぶ学科が看板。一方、ケンブリッジは物理・生物・化学などの自然科学系学科が人気です。
ランキング上は差があっても、学力的にはほとんど同じですね」と語る。
オックスフォードはマーガレット・サッチャー、トニー・ブレア、ボリス・ジョンソンなどイギリスの歴代首相を輩出。一方のケンブリッジは万有引力を発見したアイザック・ニュートンや、進化論のチャールズ・ダーウィン、多数のノーベル賞受賞者、学究肌として知られる国王のチャールズ3世が卒業した。
日本では、教員が大教室で大勢の学生相手に講義を行い、ゼミもある程度の人数で進められることが多い。さらに、講義外の学びは学生の自主性にゆだねられているが、オックスブリッジではどうなのか。「オックスフォードでは“チュートリアル”、ケンブリッジでは“スーパービジョン”と呼ばれる徹底した個人指導が有名です。教員と学生が1対1(または1対2~4などの少人数)で、専門分野について白熱したディスカッションを行う時間です。少人数で教授とディスカッションを深める中で、学生は非常に高い専門性を身に付けていきます」と語るのは、スタンフォードオンラインハイスクール校長の星友啓さんだ。
イギリスは二大巨頭のオックスブリッジ以外に、インペリアル・カレッジ・ロンドン(ICL)も9位にランクイン。名前通り、まさに大英帝国最盛期の20世紀初頭に設立された大学だ。
ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンやキングス・カレッジ・ロンドン、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスと同じロンドン大学の一つであり、オックスブリッジが地方都市にあるのに対して、ロンドンにあるので都会生活を楽しめる。
「イギリス屈指の理系の名門大学ですね。
AI(人工知能)、ロボティクス、コンピュータサイエンスなど最新の学問を追究できます。建物が、ガラス張りの研究室みたいな感じでスタイリッシュです」(篠塚さん)
■好奇心豊かな異才が集うMITが2位
2位にランクインしたのは、アメリカのトップ大学・マサチューセッツ工科大学(MIT)だ。「世界最高峰の技術とイノベーションを生み出す、実践重視の理系トップ大学です。ボストンにあるので比較的治安もいいですね」と篠塚さん。
Route Hカウンセラーの入谷和良さんいわく「好奇心のままに突き進む、ちょっとクセの強い異才の集まりです(笑)。MITでは入学時の選考で、いかに面白くふざけることができる人間かを見られる印象です。例えば『ハック』と呼ばれる、大学当局の目を盗んで行われる、知的かつ洗練されたいたずら(MITのシンボルとして知られるグレートドームのてっぺんにMIT Policeのパトカーにそっくりの模型を置き全米を驚かしたことも)を行うことが伝統になっているのもMITならではでしょう」とのこと。
■アイビーリーグの3校が10位以内にランクイン
アメリカには「アイビーリーグ」と呼ばれる東海岸の八つの名門私立大学があり、そのうち3校がベスト10にランクインしている。
その筆頭が3位のハーバード大学で、全米で最も歴史が古く(17世紀設立)、最も有名な大学といってもいい。ハーバード大はMITと車で20分の距離に位置し、学生がお互いの授業を受けられるように提携もしている。
「合格率はわずか3%台と最難関の大学。海外大を目指す誰もが入りたいと思う憧れ校です。
もともとオックスブリッジを模範に設立され、人文科学、社会科学、自然科学、ビジネス、医学、法学と、今では幅広い分野で全米トップクラスになっています」(篠塚さん)
英語塾「J PREP」代表の斉藤 淳さんは「大学院教育に重点を置いていて、他の大学に比べて大学院生が圧倒的に多いのも特徴。政治エリートになるための、社会科学が特に人気です」と語る。
ジョン・F・ケネディ、ジョージ・W・ブッシュ、バラク・オバマなど大統領を多数輩出している大学でもある。
4位にランクインしたのは、アイビーリーグのプリンストン大学。総合大学ながら学生数が少なく、指導の手厚さに定評があるという。学部教育に力を入れているようだ。また、ハーバード大と比較したときに、実践よりも理論に重きをおいた指導を受けられると聞く。
「物理学・数学の分野で歴史的な研究が行われていることで有名です。卒業生にノーベル賞受賞者が多く、大学に潤沢な資金があるので、学生の研究にお金をかけられます。ただし大学の入学時に論文提出が求められるので、早めに準備することが求められます」(入谷さん)
(後編につづく)
(プレジデントFamily編集部)
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