印象を左右する身だしなみで気をつけるべきことは何か。ANAの元CAで研修講師の三上ナナエさんは「身だしなみは、『清潔感はあるか』『違和感はないか』『機能的であるか』の3つのポイントから見ていくといい。
実は、『匂い』は身近な家族でも指摘しづらいため、自分から身近な人に確認してもらうのも1つの方法だ」という――。
※本稿は、三上ナナエ『一生使える「敬語&ビジネスマナー」』(大和出版)の一部を再編集したものです。
■「シャツの汚れやシワ」が「清潔感」と直結する
初対面の人に対して、「身だしなみ」は大きな影響を与えます。業種や職種によって細かな違いはありますが、基本的な考え方は共通しています。
どんな観点で身だしなみに気をつければいいか、ポイントは3つあります。
①清潔感はあるか

②違和感はないか

③機能的であるか
どれも大事な要素ですので、詳しく見ていきましょう。
1.清潔感はあるか
まず、身だしなみの基本中の基本が「清潔感」です。清潔感がある人は信頼されや
すく、専門性が高い印象を与える傾向があります。
特に気をつけたい項目をお伝えします。
「服装」のチェックポイント
シャツの汚れやシワ、スーツの擦れ、糸のほつれ、取れかけのボタン、引っかけた穴、ペットの毛がないかなど、服装全体を確認します。
その中でも特に「清潔感」と直結するのが、「シャツの汚れやシワ」です。
シャツは目がいきやすい場所です。

さらに、薄い色が多く目立ちやすいため、襟元や袖口に汚れがないか、シワが目立たないか、朝着替えるタイミングでチェックしましょう。
チェックする際は、なるべく全身鏡を使って、全体を見ることをおすすめします。
■ミルク入りのコーヒーは口臭の元
「臭い」も大事な身だしなみの1つ
最近はタバコを吸う人が少ないため、ちょっとしたタバコ臭にも敏感な方が多い印象です。衣服の消臭は、こまめにすることをおすすめします。
また、ミルク入りのコーヒーは口臭の元。口をゆすぐだけでも軽減されますので、飲んだあとの習慣にするといいでしょう。
タバコ臭や口臭、汗の臭いなどは、臭いを管理するケア用品が充実しています。ぜひお店で眺めて、自分に合うものを見つけてください。
一方で、香りのきつい柔軟剤や香水は、最近では「香害(こうがい)」と呼ばれることもあり、なるべく避けたいものです。
実は、「匂い」は身近な家族でも指摘しづらいものです。
とは言え、自分の匂いには慣れてしまいやすく、本人では気づけません。勇気を持って自分から、身近な人に確認してもらうのも1つの方法です。

「爪」「髪」「靴」も手を抜かない
細かい部分になればなるほど、自分では気づかないことがよくあります。
しかし、他人は相手の「先端」に目がいきやすいようです。
書類を指しながらお客様に説明する際、爪の長さだけでなく、指のささくれも目立ちます。ハンドクリームや指先用のオイルで保湿するように心がけましょう。
前髪は、目にかかると無意識に手で触れてしまいがちです。また、前髪が長く目が隠れていると、表情を捉えにくいため相手は不安を感じます。整髪料を使って、ベタつきすぎない程度に整えましょう。
つい忘れがちな足元も、意識したいところ。靴に汚れや傷がないよう、クリーナーやブラシで手入れをします。細部の持ち物がきちんと整っていると、「持ち物を大事にできる人」という印象を与え、プラスの評価につながります。
■TPOを無視すると自分勝手な印象を与える
2.違和感はないか
あなたの業種や職種に求められている「期待されているイメージ」と落差はないか。
そして、「なんか変?」と相手の目をひかない配慮も大切です。

例えば、明らかにサイズが合ってない服は気になるものです。パツパツだと苦しそうに見えて、大きすぎると子どもっぽく見えます。
また、手首に付けている大きめのパワーストーン、ダーク系のスーツなのに白っぽい靴下、夏なのに冬素材のジャケット、サンダル調のパンプス、目立つデザインのベルトなど、どれも違和感を与えるでしょう。
TPOを無視した服装や、期待するイメージにそぐわないものは、「自分がよければ、周りがどう思うか気にしない人なんだな」と感じられるので要注意です。
なるべく違和感を与えないように、どれも「控えめ」を選ぶことがポイントです。
■機能性を求めることは相手への配慮にもつながる
3.機能的であるか
「機能的」とは、仕事をするうえで支障がない状態のこと。例えば、足が痛くなったり、音が鳴りやすい靴は、それが気になって仕事に支障が出ます。
また、服のデザインが何かに引っかかりやすいと、怪我や事故の原因になります。
以前、「袖の長いデザインのブラウス」を着た方に対応してもらった際に、動作をするたびに長い袖が邪魔になり、袖をまくり上げるしぐさがとても気になりました。
何度も繰り返すしぐさは、とても目に付くものです。その点で、機能性を求めることは相手への配慮にもつながるということです。
「働きやすい服装」を常に心がけることが、大切だと感じます。

仕事や職場によって、ふさわしい身だしなみはそれぞれです。
ですが、基本は共通しています。ぜひ、下記のリストで自己チェックをするとともに、信頼できる人に定期的にチェックしてもらいましょう。
チェックをお願いする際は、前だけでなく後ろ姿もお願いできると、見えない部分の安心につながります。
POINT

身だしなみは「念入り」に。

他者目線で定期的にアドバイスをもらおう
■意外と知らない「スーツの着こなし」のマナー
ビジネスでは、服装の「着こなし」も印象を大きく左右します。
着用マナーは、誰かが教えてくれるわけではないので、注意するポイントを自分で確認しましょう。
研修でよくある質問と回答をまとめたので、ぜひ参考にしてください。
男性の着こなし

Qジャケットのボタンは全部閉めたほうがいいですか?
Aシングルスーツ(縦一列にボタンが並んでいるデザイン)の場合、動いたときのシワを防ぐため、一番下のボタンは閉めません。これを「アンボタンマナー」と言います。また、ボタンを閉めたまま座ると生地が引っ張られ、傷みにつながるので、着席時はスーツのボタンを全て外してもよいとされています。ただし、就職面接などではラフに見える可能性があるので、念のため留めておくのが一般的です。

ダブルスーツ(ボタンが二列のデザイン)は、ジャケットの合わせの部分が大きく重なるため全てのボタンを閉めます。座る際もボタンは閉めたままです。
■大切な場ではジャケット着用がおすすめ
Qスーツのポケットに物を入れてもいいですか?
Aスーツのシルエットが崩れたり、擦れて生地を傷めるため、基本的に物は入れません。内ポケットであれば、名刺入れくらいなら利用しても問題ありません。
ただ、厚みがあるものを入れていると、「何が入っているのかな」と相手も気になります。また、動くと音が鳴るもの(小銭やカギなど)は、動作のたびに音が鳴り、気になるので入れないのがマナーです。
Q真夏でもスーツのジャケットはお客様先で必要ですか?
Aまずはあなたの会社の決まりを確認しましょう。
初回にお客様先に伺う際や大切な会議の場では、ジャケットの着用をおすすめします。移動中はシワにならないよう、きれいに畳んで持って行くとよいでしょう。
もしジャケットを持たずに伺い、相手が着用していたら、「クールビズで失礼します」とひと言伝えるといいかもしれません。
Q謝罪をするときの着こなしで注意点はありますか?
A正式なものを選ぶことが大切です。スーツはシングルスーツ。
ダブルスーツは襟が主張していて、権威を表す印象があるため避けます。
色は控えめな気持ちを表す、ダークネイビーやダークグレーが理想です。
シャツ、ネクタイは無地を選択し、ストライプや大柄など派手な印象のものはやめましょう。
■女性のスーツはスカートの丈や足元にも注意
女性の着こなし

Q女性のビジネススーツで押さえておくポイントは?
Aお客様先、お取引先など、相手の環境やトーンと合わせることです。初めて伺う企業は、ホームページで会社の雰囲気を先に見ておきます。
もし迷うようであれば、初回はなるべくフォーマルな格好がいいでしょう。
伺った際の印象で少しラフな雰囲気の企業であれば、以降はかしこまりすぎなくていいかもしれません。
また、女性のスーツはボタンを閉めることを前提に作られているので、アンボタンマナーはありません。
なお、動きが多い場合は、パンツスーツがおすすめです。スカートは、丈が短すぎると目のやり場に困るので、膝が隠れるものにします。
私の失敗談として、昔研修後のアンケートで「スカートがタイトで話が入ってこなかった」とご指摘をいただいたことがあります。
それ以来、ジャケットは腰回りが隠れるもの、ピタピタすぎないスカートやパンツを選んでいます。
Q上下別々のセットアップでも問題ないでしょうか?
A問題ありません。なるべく同じ素材感を選び、ベーシックなカラーにするとまとまりがでます。
真っ黒のジャケットは伺う場所によっては重く見えてしまうので、薄いベージュ、グレーやネイビーのジャケットは万人におすすめです。
Qタイツは履いてもいいのでしょうか?
Aスーツにタイツでも、同系色や肌色であれば問題ありません。
ただ、カジュアルさは多少あるので、面接やプレゼンテーションなどフォーマルな場であれば、無難にストッキングを選ぶことをおすすめします。
黒のストッキングは、礼服を連想させるのでビジネスでは避けます。
今後迷ったときに、ぜひ参考にしてみてください。
POINT

迷ったら「無難なほう」を選ぶのがベスト

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三上 ナナエ(みかみ・ななえ)

元CA・人材教育講師

新卒でOA機器販売会社に入社し、販売戦略の仕事に携わる。その後、ANAに客室乗務員として入社。チーフパーサー、グループリーダー、OJTインストラクター、客室部門方針策定メンバーを経験。ANA退社後は、研修講師として活動。著書に『仕事も人間関係もうまくいく「気遣い」のキホン』『マンガでわかる!仕事も人間関係もうまくいく「気遣い」のキホン』『気遣いできる人は知っている! 会話のキホン』(以上すばる舎)、『ビジネストラブル脱出フレーズ80』(学研プラス)、『仕事の成果って、「報・連・相」で決まるんです。』(大和出版)などがある。

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(元CA・人材教育講師 三上 ナナエ)
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