※本稿は、三上ナナエ『一生使える「敬語&ビジネスマナー」』(大和出版)の一部を再編集したものです。
■有意義な会食で「特別なサプライズ」より大切なこと
ビジネスでは、会食も仕事の一環です。会食のセッティングを頼まれたら、事前準備が何よりも大切になります。
参加者に笑顔で帰っていただくには、何に気をつければいいのでしょう。
それは、「最初から最後まで、相手がいかに快適に過ごせるか」という点です。
そのために大事な心得は「特別なサプライズよりも、マイナスを感じさせないこと」、これを念頭に置いて準備を進めます。
成功のコツをお伝えする前に、私が実際に聞いたことのある会食での失敗を紹介しましょう。
●豚肉のしゃぶしゃぶ屋さんを選んだら、豚肉を食べられない人がいた
●焼き鳥屋さんのコース料理を選んだが、外国人の方が数名いて、レバーをはじめ、珍しい部位は一切食べることができなかった
●足を怪我している人がいたのに、エレベーターがないビルの中にあるお店を選んでしまった……
こんなことがあるので、相手側の情報収集はもちろん、接待や会食の幹事をしたことがある人、慣れている人に相談することも大事です。
■ネットだけで選んで失敗しかねない
セッティングが上手い人は、成功するためのコツをしっかり押さえています。お店選びでは、次の部分をチェックしましょう。
●参加される方は、食のアレルギーや宗教上禁忌なものがないか
●現地までの道のりがわかりにくくないか
●解散しやすい場所にあるか
●トイレはきれいか(特に女性が多い会は重要)
●座敷の場合は、掘りごたつになっているか(腰が痛い人もいるため)
●お店まではエレベーターで移動できるか(階段が負担になる人もいるため)
素敵なお店であっても、道に迷いそうだったり、帰りの手段をいろいろ考えなくてはならない場所にあったとしたら、楽しみも半減してしまいます。
また、会食場所を選ぶ際は、実際に行って食事をするのが望ましいでしょう。
私自身、ネットだけで選んで失敗した経験があります。
当日行ってみると、スムーズに料理が来なかったり、禁煙のはずが分煙で煙が流れてきたり……。実際に見ないとわからない情報もたくさんあるのです。
また、スタッフの方を味方につけるのも大事な要素です。
事前に食事に行くことが難しければ、現地に足を運び店内を確認したうえで、スタッフの方に相談だけでもしてみましょう。
例えば、どの席が落ち着いて話しやすいか、おすすめの料理やお酒、料理の説明はしてもらえるのか、苦手な食べ物に柔軟に対応できるかなど。
「こういう目的の会なんです」「大切なお客様なんです」と事前に伝えておくことで、お店の人も、より気にかけてフォローしてくれます。
■会食の当日に気を配りたい8つのポイント
大事な会になればなるほど、気にかける部分が増え、幹事の負担も増えます。
幹事になるといろんなことを抱え込み、当日予定外の事態が起きるとパニックになってしまうこともあるでしょう。
ただし、一人で背負わないことです。
オーダーをする人、トイレの場所を案内する人、会計をする人、忘れ物がないかチェックする人、手土産を渡す人など、チームで役割分担をすれば、何かあったときにもスムーズに対処できます。
会食の当日に気を配るポイントは、次になります。
●ゲストのグラスが残りわずかになったら、次のドリンクを聞く
●手が汚れるメニューが出たら、替えのおしぼりをお願いする
●アルコール度数の高い飲み物を飲んでいる方には、お水もお渡しする
●食事のペースが落ち着いてきたら、人数分のお水をお願いする
●お手洗いの位置を先に把握して、スムーズに案内できるようにしておく
●終始時間を見ながら終電を気にかけ、お開きの時間も考える
●ゲストには見えないところで会計を済ませる
●手土産は最初に渡すと荷物になるので、帰り際に渡す
相手に快適に過ごしてもらい、「いい会だった」「楽しかった」「有意義な時間だった」と思ってもらえるように、できることを着実にやっていきましょう。
POINT
特別なサプライズよりも、
マイナスを感じさせないことが大事
■常に「会社対会社」の付き合い
接待の目的は、今後の関係性を円滑にすることです。親睦を深めることで、今後の仕事がよりスムーズに進むことを目指します。
あなたも、仕事相手からお誘いを受けることがあるかもしれません。
その際に忘れてはいけないのは、常に「会社対会社」の付き合いであるということです。自社のルールを認識したうえで、振る舞いにもマナーを持ちましょう。
まず、取引先から接待のお誘いを受けたら、個人で判断せず、会社レベルで判断することが大切です。
なぜなら、接待の席で仕事に関わる話になったときに、あなただけだと判断できないことも多いからです。
個人的に誘われた場合でも、「お誘いありがとうございます。上司に確認し、お返事させていただけますでしょうか」と伝えましょう。
中には「接待は受けない」と方針で決めている会社もあります。
その場合は、「社の方針で会食をお受けいたしかねますが、今後も変わらぬお付き合いをどうぞよろしくお願いいたします」と丁寧に伝えます。
お断りになったとしても、最後まで礼儀を忘れないことです。
■過度な遠慮は禁物
接待に出席するときに、到着時間が早すぎるのは御法度です。
相手が事前に準備をしてくださっていることもあるので、「5分前から時間ぴったり」に行くようにします。
会がスタートしたら、接待を受ける側であっても配慮を心がけます。
例えば、相手が話しやすい話題をこちらから振ってみたり、「一緒に有意義な時間を作っていけたら」という姿勢が大切です。
また、接待される側が、料理の追加注文を自らするのはNGです。すすめられたら失礼のない範囲で、「遠慮する」ことも選択肢の1つに持ちましょう。
ただ、せっかく招待していただいた場ですので、過度な遠慮はしないほうがお互いのためかもしれません。あちらの思いも汲み取って、いい塩梅で「受け入れる」「遠慮する」を選んでいきましょう。
■苦手な料理が出たときのスマートな対処法
苦手な料理をすすめられたときに、「○○はちょっと無理なんです」「○○は嫌いです」と返すと、「ただの好き嫌い」といった子どもっぽい印象を与えます。
もし、味が苦手というだけなら、私だったら、その場はお気持ちを受け取る意味でいただきます。
お心遣いに対して感謝の気持ちを伝えてから、お断りの言葉をかけましょう。
「お気持ちがとってもありがたいです。○○はアレルギーが出てしまいまして、せっかくご用意してくださったのにすみません」
■会食の翌日朝までに送るべきメールの内容
会が盛り上がり、二次会に誘われることもあると思います。お誘いを受けるのはいいですが、二次会の席は「割り勘」にする提案をしましょう。
二次会においても、自分が楽しむためではなく、「互いに親睦を深めるために行く」という目的は忘れないことです。
会が終わったら、その場でお礼を伝えるのはもちろんですが、翌日までに改めてお礼を文章で伝えるのはマナーの1つです。
一昔前は、会食後にお礼状を送ることもありましたが、会食のたびにかしこまったお礼をすることは、現在では少なくなりました。
略儀ですが、メールで構いません。
感謝の気持ちやお店の素晴らしさ、会食でのエピソードを添え、「翌日の朝まで」にメールをお送りしましょう。
丁寧なお礼は、昨日の印象をさらによいものにしてくれます。
POINT
「相手の負担を最小限に」
この配慮が心地いい空間を作る
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三上 ナナエ(みかみ・ななえ)
元CA・人材教育講師
新卒でOA機器販売会社に入社し、販売戦略の仕事に携わる。
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(元CA・人材教育講師 三上 ナナエ)