※本稿は、西本朱希『女性のための50歳からの筋トレ入門』(かんき出版)の一部を再編集したものです。
■なぜウエイトトレーニングは50歳以降にお勧めか
はじめまして。パーソナルトレーナーの西本朱希(あき)と申します。私は40年近くウエイトトレーニングを続け、更年期を過ぎた今でも筋トレを欠かさない日々を送っています。30~40代のころには、女子日本ボディビル選手権大会で7回の優勝を経験したこともあります。
こう書くと、プロやそれを目指すような人向けに、ストイックでハードな筋トレを指導していると思われるかもしれませんが、私は独立前には、地方公務員として中高年対象の筋トレ指導を担当していました。
今でも、自分と同年代や年上の一般の方々に、筋トレを指導しています。「でも、筋トレってやっぱり男性のほうが得意なのでは?」「気にはなるけど、実際できるかは半信半疑」と思っている方も多いかもしれませんね。
でも私は心から、50歳からの女性にこそ、ウエイトトレーニングをしていただきたいと思っていますし、50歳からの女性こそ、ウエイトトレーニングの効果が見た目に出やすいとすら思っているのです。
最近は、女性がウエイトトレーニングでつくり上げた身体を競う、さまざまな競技が開催されています。なかでも「フィジーク」というカテゴリーは、各筋肉の発達度やバランス・体脂肪の薄さ・女性らしい美しさを競うもので、50歳を過ぎてからトレーニングを始めた方も多く参加されています。
■トレーニングによって見た目の身体が若返る
最初は「健康づくり」のためにトレーニングを始めただけだったのが、いつの間にか人に見てもらいたくなるようなメリハリのついた身体へ変貌していくため、フィジークを目指される方が増えてきているようです。
実は、ここ最近この競技で主に活躍している選手は、全日本チャンピオンも含めて50~60代が中心です。年齢を重ねて女性ホルモンの影響をさほど受けなくなってくると、若い女性がとても気にする「ムチムチした身体」から解放されて、付けた筋肉が減量によってきちんと見えやすくなるため、歳をとったことが評価に有利に働くのです。
一方で、50代と言えば、更年期症状に悩まされる方も多いでしょう。私もその一人です。私が肉体的にも精神的にもきつかった更年期を乗り越えられたのは、ウエイトトレーニングのおかげでした。
50代は、年齢を重ねて出てくるさまざまな変化に自信を失いがちな時期ですが、「筋トレの効果は、むしろ今が出やすいのだ!」と前向きにとらえて、50歳を過ぎてからでもトレーニングでどんどん身体の見た目を若返らせていってもらいたいなぁ……と、私は思うのです。
女性の身体と男性の身体は、筋肉の強さも、骨の強さも大きさも違うので、女性には女性向けのトレーニング方法があります。ぜひ、あなたのこれからの人生にウエイトトレーニングを加えて、身体の見た目をどんどん若返らせていきましょう!
■バーベルを使うトレーニングも怖くない
トレーニング未経験者や初心者にとっては、ダンベルやバーベルの置いてある「フリーウエイトゾーン」自体が入りづらい場所かもしれません。中でも「パワーラック」は、「いかつい男性専用」のようなイメージを持たれる設備です。
実際に、筋トレを数年続けていた女性から「デッドリフトやスクワットは以前からやってみたかったのです。でも、軽い重量での練習しかできない私がパワーラックを使うと迷惑になりそうで、ずっと使えませんでした」と言われたことがあります。
また、クライアントとのトレーニング中に「どうしたらこの使い方を教えてもらえるのですか?」と、尋ねられたことも。そんな、女性が「本当は使ってみたい」と思いつつも、ハードルが高くて諦めてしまうのが、バーベルを使ってトレーニングをする器具、パワーラックです。
私のところにトレーニングに来られる方々にまず覚えてもらう種目は、この器具を使う「デッドリフト」です。「足首・膝・股関節を曲げて、スネの前にあるバーを持ち上げる」、この基本動作を、大きな負荷をかけても正しくおこなえるようになることがトレーニングの基本です。これは、トレーニングを教えるうえでのトラディショナルな考え方です。
■更年期の自分を助けてくれるのは筋肉
デッドリフトは、スポーツ競技で巧みな動作をおこなううえでも、大きな力を怪我なく出すうえでも、とても重要な種目です。そして、年を重ねれば当たり前に弱くなっていく筋力や運動機能の低下抑制のためにも、同じように重要な種目です。
そのため、60歳を過ぎてからジムデビューをされる女性や、腰の手術をしてボルトがまだ腰に数本入っている高齢の男性にも、この動作の習得から始めてもらっています。初めて教わる種目がパワーラックを使う種目だと、「いかつい男性専用」などと感じずに、なんの抵抗もなくラックを使ってくださいます。これ、本当はとても大事なことだと私は思います。
はじめはトレーナーの助けを大いに借りてみてください。パワーラックを当たり前に使えるようになってしまえば、あとは何も怖いことはありません。
年を重ねると「あっちが痛い、こっちも痛い」と、つらくてやりたくない動きが増えていくと思います。そのときに本当の意味で自分を助けてくれるのは、筋肉(筋力)なのです。「そのうち」と言っていると始められません。勇気を出して「今」、トレーニングデビューを果たしてみてはいかがでしょうか?
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西本 朱希(にしもと・あき)
プロトレーナー、元アジア&全日本ボディビル(女子)チャンピオン
日本女子体育大学卒業後、練馬区地方公務員主事として健康づくりや介護予防を中心とした運動教室・運動個別相談などを受け持ち、「家で簡単にできる筋トレ教室」などの実技指導・講師を担当。1998年アジア女子ボディビル選手権大会ヘビー級優勝、99年、2004~09年全日本ボディビル選手権大会女子の部で優勝。05年、ウエイトトレーニングを教える仕事に就くために公務員を退職。専門学校講師・セミナー開催・パーソナルトレーニング指導などフリーでの活動を始める。
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(プロトレーナー、元アジア&全日本ボディビル(女子)チャンピオン 西本 朱希)