※本稿は、建部洋平『第一志望合格率96.8%の塾講師が教える 中学生の成績は「親の声かけ」で9割決まる!』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。
■言ってしまいがちな「子どもをつぶす声かけ」
【テストの順位が上がった】
×つぶす言い方
「ほら。お母さん(お父さん)の言った通りだね。次もしっかりやりなさい」
「このくらいは点数取れて当たり前だよ」
○ほめてやる気にさせる言い方
「やっぱりできると思った。あなたを信じてよかった」
「あなたの勉強のやり方がうまくいったね」
「がんばったね!」
子どもがテストでよい点を取れば、親としてもうれしいですよね。しかし、つい「ほら、お母さん(お父さん)の言った通りだね。次もしっかりやりなさい」と声をかけていませんか?
こうした言葉が続くと、子どもは「自分の努力ではなく、親のおかげで点が取れた」と感じてしまうかもしれません。
「私の言うことを聞いていればいいんだよ」というメッセージになってしまうと、子どもが「自分で考えて努力する力」を育てる機会を奪いかねないのです。そして何より、「がんばった自分を認めてもらえない」と感じると、子どものやる気が下がってしまいます。
大切なのは、まず「がんばったね!」と、子ども自身の努力をしっかり認めること。
■「○点も取れたなんてすごいね」に潜むリスク
一方、子どもがテストでよい点を取ってきても、あまり反応しない親御さんもいます。
新しい内容を学び、そのテストがよい点数だったのは、お子さんががんばったからです。「がんばったね」と声をかけるだけで、子どもは自分の努力が認められたと感じ、自信につながります。
もしくは、子どものテストがよい結果だったとき、その点数を見て、「90点も取れたなんてすごいね!」と喜びの声をかけるパターンもありますね。このほめ方が絶対にダメなのではありませんが、こういうほめ方はよい点のときはいいけれど、悪かったときは「こんな点数を取ってしまった僕(私)は、親から認めてもらえない」という恐怖心をもちやすくなります。
■子どもを「本当に伸ばす」一言
ですから、できるだけ点数ではなく、そのよい結果をもたらした子どもの行動にスポットを当て、そこをほめてほしいのです。
「今回は英単語を本当によく勉強していたよね。スペルミスが1つもないなんてすごいなぁ!」
「社会はあの暗記ノートが効いていたのかもね。あなたの読みがバッチリ当たったね!」など、子どもなりに考えてやってみた対策が功を奏したら、そこは大きなほめポイントです。
ただ、これは親が子どもを普段からよく見ていないと言えません。なぜなら、親御さんがよかれと思って言ったことが正しいとは限らないからです。
「じゃあ、どうしたらいい?」と言いたくなりますよね。だから、とっておきの一言がこれなのです。
「やっぱりできると思った。あなたを信じてよかった」
■大人の「信じる」は子どもにずっと残る
「えっ⁉ そんなセリフ、私は言えない……」と思った方もいると思います。でも、この「あなたを信じている」という言葉は本当に効くのです。だまされたと思って、一度試してみてください。子どもは大人の「信じている」という言葉を、思っている以上に感じ取っています。
私の塾では、卒業生が大学生や社会人になってからもたびたび顔を見せに来てくれます。みんなそれぞれ自分の選んだ道へ進み、充実した日々を送っているように感じます。そんな子どもたちと昔話に花を咲かせているときに、よく出てくるのが「先生は俺たちのことを信じてくれとったもんね」という言葉です。
「信じている」という言葉が照れくさいのなら、「あなたならやれると思った」とでもいいと思います。でも、口先だけではダメですよ。本当に心からそう思い、思っているからには、その子のダメなところを追及せず、そっと見守り続ける。この姿勢を続けていくと、子どもは自らがんばるようになります。そして、そのがんばりが勉強の結果にもつながっていくのです。
■宿題をしない子が「本当に反省する」一言
【学校から宿題が出していないと連絡があった】
×つぶす言い方
「宿題くらいちゃんと出しなさい!みんな普通に出しているんだよ!」
○ほめてやる気にさせる言い方
「ついうっかり忘れたのかな?ちょっと理由を話してみて」
内申点に大きく影響する提出物。しかし、これを出さなかったからと、ただ叱るだけでは、改善していきません。
まずファーストリアクションとして、次のように聞いてみてください。「ついうっかり忘れちゃったのかな?」あくまでも子どもには悪気はなかった。そう信じて、こう聞いてみるのです。すると、子どもは「えっ!?」と驚きます。
これが結構効きます。「ついうっかりだよね?」は子どもを信じているから出る言葉です。そう子どもが感じると、自分の行動を自ら反省し、「次はやっちゃダメだ」と心を改めることは、案外多いもの。そのときに子どもが言い訳をしたり、スジの通っていない理由を述べたりしたとしても大人は反論はせず、「そうか、そうか」と聞く。そして、「次はがんばろうね」と応援するだけにとどめておく。ただ、これは相当できた親でなければ、成し遂げられないリアクションです。でも、これができるようになると、お子さんは確実に変わります。
■「提出物が出せない」の背景にあるもの
「提出物が出せない」理由は、他にもあります。それは親が思うよりも負担が大きい場合です。たとえば、数学の宿題が何ページにも及んでいたり、社会や理科の課題が子どもだけで調べるのは難しかったり……。
ところが、多くの親御さんは提出物の内容や量まであまり把握していません。
こうした事情を知らずに、「出したか・出していないか」で子どもを叱るべきではないと思うのです。だからこそ、子どもに聞いてほしい。「ついうっかり忘れちゃったのかな? ちょっと理由を話してみて」と。
そのときに、「困っていることがあったら言ってね」と、子どもが話しやすい雰囲気をつくります。もし勉強が難しくて先に進めないようだったら、いっしょに考える。または学校や塾の先生に相談をしてみる。そうやって、宿題の中身にも関心をもっていただきたいのです。
ですが、これも中3の2学期くらいの大事なときになると、「そんな悠長なことは言っていられない」状況になります。だからこそ、もっとその前の中1や中2の早い段階から気にかけていただきたいのです。そして、前にはできなかった問題が解けるようになった、忘れがちだった提出物が出せるようになったなど、少しでも成長が見られたら、そこをほめる。
■わかりやすい「反抗期」は減ってきている
【学校であったたわいもないことを話してきた】
×つぶす言い方
「ふーん」
○ほめてやる気にさせる言い方
「へぇ、それでどうなった? うんうん、それで?」
思春期で口数が減る子がいる一方で、中学生になっても親とおしゃべりをしたい子どもも案外いるものです。むしろ今の時代は、昭和時代のようなわかりやすい思春期、反抗期の子どもは減ってきているように感じます。
子どもがうれしかったことを報告してくれるときは、たいていの親は「えっ、それで、それで?」と前のめりになって聞きますよね? または、子どもが深刻な話や悩みを打ち明けてきたときは、親身になって聞く親もいます。だけど、子どもの話は、いつもうれしかったことや深刻なことばかりとは限りません。むしろ、多くは学校や習い事であったとくになんてことのない話だったりします。
■「オチがない話」を聞き流してはいけない
「今日の給食のカレーすごくおいしかったよ。たくさんおかわりしちゃった」「国語の先生が黒板に書いた字が間違えて、みんなで言ったんだよ」とか、子どもの話は、必ずしもどこに重要ポイントがあるのかがわからない。それどころか、オチがないときだってあります。要は大人に聞いてほしいだけなのです。
子どもが小さかったころはそんな話でも、つたない言葉で一生懸命に話す子どもを愛おしく思い、「うんうん、そうだったんだね」と聞いていた親も多いと思います。
でも、中学生になると、大人は「いったい何の話?」と話の結論を求めたり、「ふーん」と聞き流したり、聞いているようでスマホを見ていたり、家事に没頭していたりしてあまり聞いていなかったりといった対応になりがち。
親としては「うれしいときにはいっしょに喜んでいるし、困っているときには相談に乗っているのだから、それでいいだろう」と思ってしまうのでしょう。
ですが、それが積もり積もっていくと、子どもは「お母さん(お父さん)は私のことなんてどうでもいいんだ」と感じ取り、次第に話をしなくなります。そして、親御さんが「あ、この子も思春期に入ったね。静かになったなあ」なんて思っているうちに、子どもの心は親からどんどん離れていってしまうのです。そうすると勉強にも身が入らなくなります。
■たった3分が親子関係を変える
ですからどんなに忙しくても、どんなに子どもの話がたわいなくても、3分でいいから「へー。それは笑えるね。そのあとどうなった?」などと、お子さんの話をしっかり聞いてください。この3分が、その後の親子関係を変えていきます。
ちりも積もれば山となります。気づいたら変わっているのです。この3分を大切にしている親子では、そこから自然と会話が増え、子どもの小さな問題も見つけやすくなるのです。ちょっと勉強でつまずいていることや、その日の授業での疑問点など、それを親が直接教えなくても、「明日学校の先生に質問してみな」「塾の先生に連絡しておくね」など、早い段階で解決できる行動にもつながるので、勉強にとってもプラスです。
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建部 洋平(たてべ・ようへい)
学習塾Ability 塾長
1977年生まれ、愛知県育ち。大学卒業後、大手学習塾に就職し、歴代最速で本部長に就任。独立後、小学生~高校生を対象にした学習塾Abilityを2校舎経営し、のべ約1万人の生徒を指導。高校受験の第一志望合格率は96.8%(2024年度)、95.2%(2025年度)。また、「ほめる教育」の重要性を伝えるため、日本ほめる達人協会の特別認定講師資格を取得。企業研修や講演活動も行い、2023年認定講師コンテストでは準優勝。
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(学習塾Ability 塾長 建部 洋平)