※本稿は、菅原圭『お金持ちが肝に銘じているちょっとした習慣』(河出書房新書)の一部を再編集したものです。
■お金持ちはビニール傘をこう使う
最近の日本は明らかに気候が変わってきた。熱帯地方のスコールのように、突然、すごい勢いで雨が降ってきたかと思うと、30分~1時間ほどで晴れ上がる。
でも、約束の時間までに行かなければ大事な商談に遅刻してしまう。そこで、駅前のコンビニなどで数百円程度のビニール傘を買ってその場をしのぐ。
こういう状況では多くの人がそうするだろう。問題は、このビニール傘のその後の行方だ。ほとんどは、雨がやんでも捨てるわけにもいかないと、なんとなく家に持ち帰る。そして、また出先で雨に打たれればビニール傘を買う。持ち帰る……。
折りたたみ傘を持って出るようにすれば、こんなムダは防げるのだ。
ある著者と、カフェで打ち合わせをする予定があった日のことだ。突然、スコールのような雨が降ってきた。
約束の時間が近づいたころ、激しい雨の中を、著者は、時間どおりにきちんとやってきた。手にはビニール傘を持っている。突然降りだしたので、タクシーが拾えなかったのだそうだ。
打ち合わせは1時間ちょっとで終わったが、そのころには、雨はすっかり上がっていた。彼は傘を手に立ち上がると、カフェの店主に向かって、「これ、お客さんが雨に遭ったときに使えないかな」と話しかけた。
■お金持ちになる理由がわかった
「あ、ありがたいです。お客さまにも喜ばれますから……」。店主も明るく彼の申し出に応じてくれた。
前から行きつけのカフェというわけではなく、互いにとって便利な場所、というので選んだ初めてのカフェだった。「お金持ちって、こんなことがさらりとできる人なんだ」私は、大事なことをひとつ教えられたような気がした。
いらないものは手元に置かない。でも、手放すなら、できるだけそれが最後まで“生きる”形で、と心がける。こういう気持ちが、しだいに豊かな人間性を育んでいき、結果、お金持ちに近づいていくことになるのではないだろうか。
それ以来、家にビニール傘が3本以上たまったら、私は余分な傘はまとめて行きつけの飲食店などに持っていくことにしている。使うアテのないものをため込んでいるのは、かえって心の貧相さをもろ出しにするだけだと思うからだ。
■なぜか資産家は忘れ物をしない
私が尊敬してやまないたくさんの著者たち、その多くは超の字がつくお金持ちだが、中でも、年を追うごとにお金持ちになっていく方がいる。
著者と編集者として知り合って10年になるM氏だ。その間の成長発展ぶりは目を見張るものがある。当然、収入も相当のものだと推測される。
M氏の本業はドクター。
ドクターとしての経験や、多忙な中で自分を磨き上げてきた成果を講演したり、出版したりしておられるのだが、こちらのほうもどんどん活動領域が広がっている。
M氏と仕事をご一緒するたびに感心するのは、忘れものをしないということだ。打ち合わせに持ってくるべき企画書や参考資料はいうまでもなく、話の途中で、「もし、参考になるデータがあったら送ってください」などと頼んだことも、一度として忘れたことがない。
秘書を連れているわけではなく、すべてを自分で管理している。どんなに忙しいだろうかと思うのだが、とにかく、M氏から「うっかり忘れてきてしまった……」という言葉を聞いたことがない。
■毎日カバンを空にする
ある日、思い切ってその秘訣をうかがってみた。M氏は複数の仕事をこなしているから、1日にいくつもの打ち合わせをこなすことも珍しくない。その場合、打ち合わせと打ち合わせの間に30分程度のインターバルを取り、その間に、カバンの中をきちんと整理し直すのだという。
じつは、彼の経営する病院は地方にあり、活動拠点も原則、地方にある。だが、それでは講演の講師や本の著者としての活動はしにくい。
打ち合わせは、ほとんどの場合、彼が拠点にしているそのホテルや、都内の高級ホテルのラウンジで行っている。
打ち合わせと打ち合わせの間にインターバルを取り、カバンの中を整理したり、入れ替えたりができるのはそのためだ。ひとつの打ち合わせが終わると次の打ち合わせまでの時間に、ホテル内の自分の部屋に戻り、カバンを整理してくるわけだ。
彼流のカバンの整理のコツは、次のとおり。
「一度、カバンをひっくり返し、完全に空にしてしまう。それから、次の打ち合わせのために必要なものをイチから入れていく。つまり、毎回、カバンの中を完全にリセットするわけですね。こうしているうちに、頭の中もリセットされて、1日に何テーマか打ち合わせしても、混乱することがなくなります」
■思っている以上にすっきりする
カバンの整理と同時に、頭のスイッチも切り替えているというわけだ。ちなみに、前の打ち合わせに使った書類やメモは、プロジェクトごとに、大きな紙袋に入れて、こちらもすっきり整理しているそうだ。
1日の終わりにこれを整理することも習慣にしているから、「Aさんに参考資料を送る」「Bさんに○○について返事をする」というようなこともチェックでき、約束を忘れることもないという。
この話をうかがってから、私もさっそく、毎日カバンを完全に空にして、全部入れ替える習慣を取り入れている。
また、カバンの入れ替えと同時に、次の仕事についての発想も入れ替える効果があり、頭の中が以前よりずっとすっきり整理できるようになった。カバンの入れ替えは、その方や私のようなフリーランサー、つまり、日々、異なるプロジェクトを同時進行していくという仕事では、とくに効果を期待できる。
だが、毎日、決まった職場に通う仕事でも、取り組む仕事は日々、微妙に違うのではないか。
とにかく、カバンの整理を習慣づけることをお勧めしたい。何が、どのくらいすっきりするか。一度、体験してみれば実感できるはずだ。
■これにあてはまったらSNS依存症
電車に乗っても、カフェに入っても、いまやほとんどの人がスマホに見入っている。その多くはLINEでやりとりをしているといって間違いないだろう。
LINEは国内ナンバー1の利用者数をもつSNSメディア。会話のように短い一言、二言でさくさくコミュニケーションが進んでいくテンポもいいし、何より無料だという魅力も大きい。
だが、魅力的であるばかりに、LINE依存の人が急増しつつあるという新たな問題も起きている。
LINEが来ていないかどうか、気になってしかたなく、しょっちゅうスマホに見入っている。自分が送ると、それがいつ既読になるか、気になって仕方ないという人もいる。既読にならなければならないで、それが気になってたまらず、仕事もうわの空で、ちらちらスマホに目をやってばかりいる。
■LINE依存症とお金の関係
もともとLINEは、通話やメールと同じようにコミュニケーション手段のひとつ。「用があるから送る」ものなのだ。それなのに、「おはよう」とか「何してる?」などと意味のないメッセージをしょっちゅう送るようになったら、明らかに依存症の気味があると自覚したほうがよい。
こうした依存症になりやすい人には、以下の傾向が見られることが指摘されている。
*自分のやりたいことを抑えられない。
*目立ちたがり。
*ひとつのことに、こだわりやすい。
*人からすすめられると断れない。
*現実をしっかり受け止められない。
改めていうまでもなく、こういう人は、しっかり自分を貫いていくことが不得意だ。そのとき、そのときの気分任せで、やりたいようにやってしまう。これはお金の使い方にも現れるから、お金は意味もなくだらだらと出ていってしまう。
一見、なんの関係もなさそうなLINE依存症とお金とは、想像以上に深くつながっていることを自覚したい。
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菅原 圭(すがわら・けい)
フリーライター
早稲田大学文学部卒業後、コピーライター、出版社を経て、執筆活動に入る。ライターとして、ビジネス界のキーパーソンや作家、文化人などを数多く取材。著書に『育ちのいい人が身につけている ちょっとした習慣』(KAWADE夢文庫)、『ものごとに動じない人の習慣術(新装版):冷静でしなやか、タフな心をつくる秘訣 』(KAWADE夢新書)などがある。
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(フリーライター 菅原 圭)