※本稿は、近藤悦康『増補改訂版 日本一学生が集まる中小企業の秘密』(徳間書店)の一部を再編集したものです。
■「新卒採用」に対する誤った思い込みが多すぎる
新卒採用において、多くの社長や採用担当者が誤った思い込みをしているために失敗しているケースが見られます。
ここでは、それらの誤った思い込みをいくつか紹介しましょう。
誤った思い込み1 会社説明会では社長や社員が一方的にプレゼンをする
会社説明会では、学生たちは一見神妙に話を聞いているように見えるため、社長や採用担当者は、自分たちの説明に学生たちが真剣に耳を傾けていると思い込んで満足してしまいます。
しかし、会社説明会の終了後に、参加した学生たちにインタビューすると、ほとんどの学生たちは、今、聞いたばかりの会社のことを説明できません。確かにメモ帳やノートには、聞き取った情報が記録されていますが、頭には残っていないのです。
会社側が自社のことを伝えられたと錯覚しているのと同様に、学生たちもまたノートに書き取ったことで説明を理解したと錯覚しているのです。
なぜ、このようなことになっているのでしょうか。
それは学生たちが「受動的な脳」の状態で参加しているためです。その理由は、会社側が一方的な説明をしているからで、これでは学生たちの頭にも心にも何も残りません。
■学生の脳を「能動的な脳」に切り替える
では、どうすれば「能動的な脳」で参加し、頭や心に御社のことを刻み込んでくれるのでしょうか。
それには、学生たちが自ら考えて行動しなければならない状況を用意する、つまり参加型のワークショップを行えばいいのです。そのために、座席も6人前後のグループ単位でディスカッションしやすいように島型に設置し、各テーブルの中央には会社に関する複数の資料を置いておきます。
「さて、これから20分間かけて、各テーブルに置かれた資料を読んで私たちの会社について理解してください。その後の15分間は、グループでディスカッションしながら、テーブルに用意された模造紙に、私たちの会社の強みや魅力についてまとめてください。そしてその成果を、5分間でプレゼンテーションしていただきます」
このように、学生たちが能動的に頭を働かせなくてはならない状況を用意することで、学生たちは頭をフル回転させて御社を理解しようとします。しかも、グループでわいわいがやがやとディスカッションしながらプレゼンの準備を行うという体験は、思いのほか楽しいものです。
その様子を見ると、社長や社員の方々は、これまでの会社説明会と打って変わった学生たちのイキイキとした表情に驚かれるはずです。
この結果、学生たちは御社をより深く理解し、しかも「楽しかった」「充実した時間を過ごした」「ユニークな説明会だった」などと口コミをしてくれるのです。しかも学生たちの頭や心には、しっかりと御社のことが刻み込まれているので、口コミにもその記憶が反映されるのです。
■履歴書、面接だけの採用はあまりにリスキー
誤った思い込み2 履歴書(エントリーシート)や筆記、面接で選考をする
採用で人材を評価する際、どうしても履歴書や筆記試験、短時間の面接を頼りにしてしまいます。しかしこれは、かなりリスキーな選考方法だといえます。
想像してみてください。
ところが新卒採用になると、途端にこのリスキーな方法に頼った選考をしているのです。
たとえば営業部門に配置する人材の採用では、履歴書上の学歴や筆記テストの点数が良く、短時間での面接もそつなく対応できたとしても、それらの評価だけでは営業職として活躍できるかどうかわかりません。
■自己PR欄より書き方、写真の貼り方を見る
実際、私は履歴書に書かれた自己PRを真剣に読んでいません。これは、なんとでも書けるためです。「私は粘り強い人間です」と書いてあっても、上司から些細な注意を受けたり、顧客から企画書の再提出を求められたりすると、簡単に心が折れてしまうかもしれないのです。
自己PRに書かれていることや面接で語っていることは、主観による思い込みかもしれませんし、就職マニュアル通りに書いたり語ったりしているだけかもしれません。
ですから私は、履歴書を見ても、書き方が見やすいように配慮されているかとか、写真は丁寧に貼られているかといったことのほうが気になります。他は学歴や部活動、アルバイト経験などの基本情報を確認しているだけです。
それでは、どうすれば人材を見抜くことができるのでしょうか。
それには、行動を観察することです。前述のグループワークに参加しているときの様子や、インターンシップで共に行動しているときです。行動というものは、急に繕うことが難しいものです。人は普段から行動している通り、考えている通りに動いてしまうのです。
ですから、人材を見抜くためには、行動せざるをえない状況を用意することが肝心です。
■企業が学生と接する時間が短すぎる
誤った思い込み3 選考はなるべく短縮化する
最近の傾向として、学生の労力を軽減するために選考期間を短くする会社が増えています。しかし、この取り組みは逆効果です。学生と会う頻度を減らすことで入社動機が高まるとは考えにくいからです。
一般的には、会社説明会から内定が出るまでの期間はおおよそ2~3カ月ほどです。その間に企業側が一人の学生と接する時間はわずか5~6時間程度。説明会が約2時間、筆記テストや面接を3回行っても合計で3時間程度です。
このようなわずかな接触で、企業は学生を評価できませんし、学生もその企業にどうしても入社したいという強い気持ちを持つことは希(まれ)でしょう。
よく就職活動は結婚に似ていると言われます。どちらも、これから長い年月を共に過ごす相手を選ぶ行為だからです。しかし、結婚相手をわずか5~6時間の一方的な話しかけで決めてしまうことはありません。
学生が自社を理解し、理念や事業内容に共感し、入社したいという気持ちを醸成するためには接触回数や接触時間を増やすことが正しいのです。
とはいえ、採用活動にそこまで時間と労力を割くのは難しいという現実もあるかもしれません。
■「課題」を与えて企業と関わる時間を増やす
それならば、学生により多くの時間を使ってもらう発想をしてはいかがでしょうか。
次回の面接日時を告げる際に、日時と会場だけを伝えるのはもったいないということです。このとき、「1次面接は合格ですので、2次面接を行います。つきましては、次回面接までに、私どもの会社の魅力を10個あげ、入社してからのキャリアをどのように描きたいのかをまとめて、次回の面接時に5分間のプレゼンテーションができるようにしておいてください。その間、疑問点などがありましたら遠慮なく連絡してください」と伝えるのです。
このことで、学生は、実際には企業の担当者と接していなくても、企業のことを調べたり考えたりする時間を過ごすことになります。この時間で、共感を醸成するのです。
「そんな手間のかかることを学生に強(し)いたら辞退されてしまう」
そのように思われるかもしれませんが、それは誤りです。簡単に取れた内定ほど、簡単に辞退されてしまいます。努力して勝ち取った内定であれば、簡単には手放しません。ここまで頑張ったのだから、この次も頑張ろう、と思うものなのです。
そもそも、このような課題を学生が面倒くさいと思った時点で、そのような人材が入社しなくて良かったと考えるべきです。なんとしてもこの会社に入りたい、というモチベーションの高い人材を見つけ出すことが大切です。
■慌てて内定を出してはいけない
誤った思い込み4 内定辞退を見込んで内定をたくさん出す
新卒採用活動において、売り手市場になると、会社は早く人材を囲っておきたいとの思惑から、早めに内定を出しがちです。役員面接や社長面接の段階で、欲しい人材を見つけると内定を出してしまうのです。まだ、学生自身の入社意思が固まっていないにもかかわらずです。
このようなときは、むしろ内定をできるだけ後出しにしたほうが確実な採用につながります。
このあたりも結婚に似ており、「まだ他に、もっといい相手がいるかもしれない」と、どちらかが思っているうちは結婚は成立しません。
したがって、内定を出すタイミングというのは、学生側も入社の意思を持っているという状況になったときになります。
レガシードでは、内定を出す際に、内定を出してから基本的に1週間以内に親も署名した承諾書を返送していただくようにお伝えしています。そうすると、まだ入社を迷っており、もっといい会社があるかもしれないと考えている学生は、内定を出されても困るため、「もう少し考えさせてください」と言います。
そのようなときは次のように言います。
「ウチはありがたいことに多くの学生たちが志望してくれているので、みんな採用したいところだけども、事業計画上、今年は10名という採用枠を決めているんだよ。だからウチからの内定を早く承諾してくれた学生から優先的に採用を決めているんだ。私はあなたと働きたいと考えているけれども、この事情は知っておいてね」
企業が内定を出すと、その時点で学生が優位に立つことになります。学生と五分五分の立場で関係を維持し続けるためには、あわてて内定を出してはいけません。
■内定から入社までの1年で「即戦力」に仕上げる
誤った思い込み5 新卒人材は即戦力になりづらい
新卒は即戦力にならない、と決めつけている社長や採用担当者は多いでしょう。新卒は社会経験もないし、入社後3年間は教育期間だと割り切り、戦力としては見込めないと諦めているのではないでしょうか。
しかしこれは、戦力にならないのではなく、戦力にする取り組みをしていないだけです。企業側が学生と出会って内定を出し、その後入社するまでには1年間もの教育期間があります。これを使わない手はありません。
たとえばレガシードでは、新卒入社1年目ですでに自分の担当する顧客を持ち、コンサルティング業務を行えるようになっています。立派な即戦力です。
また、私がいた会社でも、4月1日の入社式が終わると、早速入社したての新人が営業に行き、「契約をいただきました」と契約書を持ち帰ることがありました。
なぜこのようなことが起きているのでしょうか。
彼らは入社前のアルバイト期間中に、「ぜひ、私が入社したら最初に提案させていただけませんか」と見込みの高い方にアポをとっていました。そして入社後、実際に提案をして契約をいただいていたのです。
つまり入社初日には、すでに自社の商品やサービスをきちんと伝えることができ、契約書を交わせるだけの力が身についていることになります。
ここで大切なのは、採用側は学生が入社した時点でどの職務についてどのレベルまで仕事ができるようになっているかという目標を明確にし、そこから逆算して、必要な知識や経験を入社するまでに持たせるような計画を立てることです。
このことは新卒が即戦力になるということだけでなく、学生と企業側がお互いのことをより深く知ることができる採用計画を立てられるという意味でも価値があることです。
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近藤 悦康(こんどう・よしやす)
レガシード社長
大学院に進学と同時に、人材教育会社に入社。営業部に配属される中、新しい新卒採用人事の仕組みを作り出し、1年間で2万人以上が応募する人気企業へと発展させた。その後独立し、人材採用と人材育成のコンサルタントを経て、2013年11月レガシードを設立。人材採用コンサルティング、社員教育・組織活性コンサルティング、学生向けキャリア教育事業などを手掛け、創業6年で応募者1万7000人企業にする。同社のユニークかつ画期的な人材採用コンサルティングの手法と採用活動が話題となり、テレビや雑誌をはじめ多数のメディアに採用の様子が取り上げられる。著書に、『伸びてる会社がやっている「新卒」を「即戦力化」する方法』(クロスメディア・パブリッシング)、『内定辞退ゼロ』(実業之日本社)などがある。
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(レガシード社長 近藤 悦康)