―日本から英国へ、欧州のエネルギーインフラを支える壮大なプロジェクト―
風力発電をはじめとする再生可能エネルギーの需要拡大を背景に、2023年、英国・スコットランドで欧州最大級の電力ケーブル工場を建設する一大プロジェクトが始動しました。チャールズ国王陛下やスコットランドのスウィニー首相が工場建設地へ視察に訪れるなど、英国でも注目度が高いエネルギーインフラ案件であり、地域経済や欧州のエネルギー政策において重要な国家プロジェクトでした。世界中で激しい市況変動が続く中、郵船ロジスティクスグループの担当者たちは、高度な専門性と豊富な経験を結集し、この不確実性の高いプロジェクトに挑みました。プロジェクト概要
本案件は住友電気工業株式会社様(以下、住友電気工業様)が2023年に発表した、スコットランドに建設する最新鋭の電力ケーブル工場向け大型設備輸送でした。製造ラインに組み込まれる特殊な貨物で、形状や重量が多岐にわたるため、それぞれの貨物特性に合わせた輸送計画が求められました。新設工場への搬入を伴うプロジェクトカーゴでは、多くのステークホルダーが存在し、輸送の遅れが建設スケジュールに大きな影響を及ぼすため、綿密な輸送計画の策定と確実な実行力が不可欠です。さまざまなシミュレーションを繰り返しながら関係各所との連携を徹底し、日本国内での集荷、本船への積み込み、海上貨物輸送、英国側での荷揚げに至るまで一貫して手配するプロジェクトが動き出しました。
最大の課題:綿密な輸送計画と着実な実行の両立
2年先を見据えた輸送計画の策定船腹需給や為替、燃料費、人件費などのさまざまな要因を踏まえ、2023年、当社は住友電気工業様にスコットランドまでの輸送に関するお見積もりを提示しました。実際の輸送は2年後の2025年を予定しており、変動が激しい国際情勢の中で、2年先のコストとリスクを見据えた精度の高い輸送計画の策定が必要でした。特に日本からスコットランドまでは長距離の海上輸送となるため、お客さまが求める輸送条件に応えながら、日々変動する船舶のスペース状況や燃料費などについて、船会社との継続的な交渉が不可欠でした。実際の輸送までの情勢変化に柔軟に対応でき、2年後でも問題なく実行できる輸送計画を立案するため、当社の担当者は定期的にお客さまからヒアリングを行うとともに、輸送ルートやスペース状況を踏まえて複数のシナリオを想定し、コストやリードタイムへの影響を粘り強く検証しました。
プロジェクト始動後も、輸送開始まで毎月お客さまとの会議を重ね、プロジェクトの進捗確認を行いながら各工程を一つずつ着実に進めていきました。大型設備輸送のプロジェクトには多くの人が関わるため、単なる輸送手配ではなく、国境を越えてステークホルダーを束ねるプロジェクトマネジメントが求められます。海上貨物輸送や複合一貫輸送など、各分野で経験を積んだ当社の担当者が知恵を出し合い、貨物の特性を一つずつ紐解き、最適な船種、積み付け方式、輸送ルートなど、シミュレーションを重ねながら議論を繰り返した結果、本ブロジェクトでは大型設備一式を在来船で輸送することが決まりました。
さらに大型設備は、お客さまの生産計画に直結する重要な貨物であるため、安全な輸送を実現する上で、適切なリスク管理が必要でした。輸送の準備を進める中で、お客さまが契約していた貨物保険は、今回の大型設備輸送の条件に適用されないことが判明しました。
技術的課題への対応
詳細な輸送計画の策定が進む中、スコット
ランドへ輸送する大型設備は、製造元の工
場で着々と出荷準備が整えられていました。輸送するそれぞれの設備は、新設される工場用に設計された一点物の製品で、輸送中にひとたび事故が発生すると、人命に重大な影響を及ぼす可能性はもちろん、設備の修理や新たな設備の製造に時間を要するため、輸送後の建設・生産計画にも大きな影響を生じます。当社の担当者は、出荷元の設備メーカーとも連携して貨物の詳細情報を入手するとともに、事前に本船への積み込みや輸送に適した最適な梱包方法や荷役方法について協議を重ね、貨物一つひとつの形状や重量に合わせた輸送設計を行いました。また、貨物のダメージ発生リスクを最小限に抑えるため、設備の動作確認を行うタイミングで梱包を実施し、当社の担当者が実際に貨物を確認しながら、梱包会社と連携して慎重に作業を進めました。
長期伴走によるプロジェクト管理と実行
大型設備の動作確認と梱包を経て出荷のめどが立つと、今度は現地の荷役会社と荷揚げ作業に関する打ち合わせを行うため、当社の担当者はスコットランドへ向かいました。郵船ロジスティクスグループの英国法人Yusen Logistics (UK) Ltd.の担当者も交え、安全で効率的な荷揚げ方法に関する議論が始まりました。
当社は受注から実際の輸送までの約2年間にわたり、住友電気工業様と毎月会議を実施し、継続的にプロジェクトの進捗管理を行ってきました。
輸送プロジェクトが始動すると同時に、タスクの整理やリスクの洗い出し、関係者の役割分担を明確にすることで、輸送に関わる各工程を可視化し、それぞれが担う準備の精度を高めていきました。
英国側での輸入手配にあたっては、お客さまをはじめ、製造、梱包、荷役、輸送と、それまで多くの関係者が積み上げてきた工程を無駄にしないために、英国側のプロジェクト担当者との定期ミーティングを通じて、日本側、英国側それぞれの関係者がプロジェクトの重要性を理解し、同じ熱意を持って手配を行える体制を整えました。
2025年冬、ついに英国側での輸入準備が整いました。雪の少ない佐世保でも小雪が舞うほど寒い中、出荷元の工場で搬出作業が開始されました。バージ船⁽*¹⁾による本船への積み込みでは、事前に策定した計画に基づいて、安全確認を徹底しながら、慎重に一つひとつ作業を進め、無事に積み込みを 完了しました。
「とうとうここまできた」
関係者全員が、胸に込み上げるものを感じた瞬間でした。
<本船に積み込む様子>
日本を出港して3カ月、ついに本船がスコットランドに到着しました。当社の担当者も再び現地へ向かい、荷揚げ直前まで、荷役の工程を入念に確認しました。日本での本船積み込み時の経験を生かし、荷役会社と連携しながら、全ての工程を円滑に完遂しました。
⁽*¹⁾大型の貨物を運搬するために用いられる平底の船舶。
スコットランドのニグ港に本船が到着した様子
お客さまの声
弊社海外工場への貨物の輸送にあたり、当該地域における豊富な知見を生かした精度の高いご提案をいただきました。何度も仕様のすり合わせを重ね、梱包形態の最適化や、出荷元とのきめ細やかな連携体制を構築してくださいました。また、貨物が荷揚げされるまで定期的な打ち合わせを重ねたことで、貴社と弊社の連携がいっそう強固になったと感じています。輸送中は、動静が流動的な船便の情報を定期的に展開していただけたため、事前の調整から実際の輸送にいたるまで終始安心して業務をお任せすることができました。確実かつスムーズに本プロジェクトを完遂いただいたことに深く感謝しています。
弊社のグローバル戦略を足元から支えてくださる不可欠なパートナーとして、これからも末永くお付き合いさせていただきたいと考えています。
Sumitomo Electric U.K. Power Cables Ltd.ご担当者様
大型設備のプロジェクト輸送には、綿密な計画力と確実な実行力が求められます。郵船ロジスティクスには、発電設備をはじめとするインフラ関連、船舶、鉄道車両など、さまざまなプロジェクトカーゴの輸送を手掛けてきた豊富な実績があります。
私たちのグローバルネットワークと高度な専門性を生かし、今後もお客さまの事業を物流の面から支えていきます。
<関連ページ>
スコットランド向け電力設備輸送の プロジェクトストーリー紹介ページを公開 | 郵船ロジスティクス | 日本
プロジェクトカーゴ | 郵船ロジスティクス
英国、スコットランドに電力ケーブル工場を設立 | 住友電工
英国 チャールズ国王陛下 Nigg港(当社ケーブル工場を建設予定エリア)ご視察 | 住友電工
スコットランド ジョン・スウィニー首相が当社工場建設地を視察 ~蘇政府とのパートナーシップを強化~ | 住友電工
墨田川造船様のジブチ共和国向け巡視艇輸送プロジェクト|郵船ロジスティクス株式会社のストーリー|PR TIMES STORY