5月25日(土)と26日(日)に横浜赤レンガ地区野外特設会場にて開催される日本最大級のサーフカルチャーフェスティバル<GREENROOM FESTIVALʻ24>。19回目の開催となる今年は、JUNGLEやTONES AND Iといった海外アクトから、KREVAやPUNPEE、Awich、RIP SLYME、羊文学など国内の豪華アーティストが出演。チケットは全券種ソールドアウト、アート作品やショップが並ぶ無料エリアも充実の内容となっており、まさに日本を代表する都市型フェスだ。

「Save The Beach, Save The Ocean」をコンセプトに、様々な歴史を潜り抜けてきた<GREENROOM FESTIVAL>。今回はそのオーガナイザーであり、<Local Green Festival>などのフェスティバル運営も手掛けるGREENROOM CO.(株式会社グリーンルーム)の代表取締役である釜萢(かまやち)直起に対談インタビューを敢行。お相手は小学館クリエイティブより著書『フェス旅 ~日本全国音楽フェスガイド~』を刊行したばかりのFestival Life編集長津田昌太朗。古くから<GREENROOM FESTIVAL>を知る津田と共に、その歴史を辿りながら、確固たるブランドを築いた背景、そして来年に控える20周年への構想などを訊いた。

釜萢直起(GREENROOM CO.) × 津田昌太朗(Festival Life)

【対談】釜萢直起(GREENROOM CO.)× 津田昌太朗(Festival Life)|<GREENROOM FESTIVAL>が体現するサーフカルチャーの精神と都市型フェスの未来
釜萢直起(GREENROOM CO.)× 津田昌太朗
写真左:釜萢直起/写真右:津田昌太朗

音楽とアートを通して海のカルチャーを伝える

──まず、改めて<GREENROOM FESTIVAL>がどういうフェスなのか、お伺いできますでしょうか。

釜萢直起(以下、釜萢) <GREENROOM FESTIVAL>は「Save The Beach Save The Ocean」をコンセプトにしていて、サーフカルチャーやビーチカルチャーをテーマにした音楽とアートのカルチャーフェスティバルです。MUSICの部分にはライブがあり、ARTは今年でいうと24名のアーティストがアートギャラリーエリアで展示しています。外にはツリーハウスや流木で作ったトーテムポールなど、フィールドアートがある。そして、サーフマーケットにはいろんなサーフブランドやセレクトショップが立ち並んでいて、マーケットも充実しているフェスティバルですね。何か一つにこだわっているというより、音楽とアートという全体を通して海のカルチャーを伝えていくことを大切にしています。

──世界中のフェスに足を運んでいる津田さんにお伺いしたいのですが、<GREENROOM FESTIVAL>にはどういった特徴があると思いますか?

津田昌太朗(以下、津田) 海をテーマにしていて、「Save The Beach Save The Ocean」といったコンセプトを打ち出している音楽フェスって世界的にもあまり見かけません。また、日本にもコンセプトやテーマがあるフェスはあるけど、全面的にそれを打ち出してるフェスは実はそこまで多くない。音楽フェスなんだけど、音楽以外のコンセプトをしっかりと打ち出しながらこの規模で行われているフェス、ということ自体がすごく突出してるんです。そのコンセプトをベースに、<Greenroom Beach>や<Local Green Festival>などを展開しているのもユニークな点です。釜萢さんは音楽フェスではなく、「アートとカルチャーのフェスなんだ」ってよく言いますよね。

釜萢 カルチャーフェスを作る方向性はずっと変わらずですね。

津田 軸がありつつ、ラインナップは旬のアクトや常連がいて、お客さんも毎回入れ替わっているような気がするし、他のどのフェスにも似ていない雰囲気がある。定着しすぎて見落としがちだけど、なぜ<GREENROOM FESTIVAL>だけはこれが成立するんだろうというようなことがフェスの細部にたくさん散りばめられている。もちろん運営面などで国内のフェスカルチャーがベースにあるとは理解しつつも、日本のフェスの影響をそこまで感じないというか。

それと<GREENROOM FESTIVAL>は海外のアクトも多く出演しますよね。今回、釜萢さんに一番聞きたかったのは、海外のアーティストの流れです。今年は世界的に「ヘッドライナー不足」「アーティストのフェス離れ」ということが語られていたりすることもします。個人的にはその論調にはまだ懐疑的なのですが、日本目線に立つと、円安や物流などの影響で、海外のアーティストを呼ぶのは以前より厳しくなっているように感じます。

釜萢 円安の影響はありますよね。それと、コロナ禍でコール&レスポンスができないような状況になってから、お客さんとどう楽しむかを考えたときに、ダンスミュージックの存在がすごく大きくなってきたと感じています。それで今年はJUNGLEやSG Lewisなどが出演したりと、コロナ禍の影響があってもみんなで楽しめる方向に向かっていきました。Fred Again..がフェスのヘッドライナーを務めていたり、世界的にもダンスミュージックの存在は大きくなっているし、各フェスのオーガナイザーも同じようなことを感じていたのではないかなと思います。

【対談】釜萢直起(GREENROOM CO.)× 津田昌太朗(Festival Life)|<GREENROOM FESTIVAL>が体現するサーフカルチャーの精神と都市型フェスの未来
釜萢直起(GREENROOM CO.)× 津田昌太朗

津田 その中で、JUNGLEとTONES AND Iはずっと狙っていた感じですか?

釜萢 JUNGLE、めちゃ踊れるでしょ。彼らは初期の頃からずっと呼びたくて、今年うまくいってオファーを受けてくれた。前回の来日は2018年、渋谷のWWWだったかな。BRIT AWARDS 2024ではGroup of the Yearだったし、勝負の年だよね。

津田 彼らがデビューした頃、僕はイギリスに住んでいたんですが周囲の音楽好き、フェス好きの反応もとても良くて、特にイギリス国内ではフェスバンド的な扱いで、どんどんプロップスが上がっていって、どのフェスでも話題をかっさらった感じがありました。でもそれ以降、しばらくは大規模フェスでいうとラインナップの三列目くらい、中堅から上がらない感じもあった。そして、コロナ禍を経てから徐々に良いラインに入るようになってきて、今年は特にJUNGLEにとって大事な年なのかなと。「フェスでよく見るバンド」から、どう進化できるか。そんな中でJUNGLEをヘッドライナーとして呼んでいる意味は大きいですよね。

Jungle - Back On 74 (Live at the 2024 BRIT Awards)

釜萢 TONES AND Iに関しては、<GREENROOM FESTIVAL>が延期・中止を繰り返して頃に、彼女の曲を一番聴いてたんですよ。“Dance Monkey”がラジオとかでも流れてたりしていて、シンプルに音楽の力を感じた。コロナ禍の混沌とした中で助けられた部分があったから、コロナ禍が明けてからも、ぜひ呼びたいと思っていて、オファーをさせていただきました。

津田 もともと2020年に来る予定だったけど、コロナ禍でなくなってしまったんですよね。あのときに来ていたら“Dance Monkey”が中心になっていたかもしれないけど、時間を経て、それだけではない彼女が観られるのも楽しみです。

釜萢 自分はオーストラリアに留学していた経験があって、なかでもバイロン・ベイがものすごく好きなんですよ。去年出演してもらったTASH SULTANAだったり、TONES AND Iはバイロンやメルボルンのカルチャーがベースにあるから、自分の中では繋がりのあるブッキングだと思います。

TONES AND I - DREAMING (OFFICIAL VIDEO)

津田 グリーンルームというか、釜萢さんはオーストラリアのアーティストをフックアップして、日本に紹介する流れというか、そういう狙いを持っていると昔から感じます。最近だとTASH SULTANAもそうだし、初期だとBLUE KING BROWNも、<GREENROOM FESTIVAL>がいち早く日本にプレゼンテーションした感じがあった。

釜萢 バイロンでは<Splendour In The Grass>や<Byron Bay Bluesfest>といったフェスもあるんですよね。音楽の街であり、サーフィンの街でもある。

津田 釜萢さんと話すと、その2つのフェス、そして開催のきっかけにもなったカリフォルニアの<Moonshine Music Festival>の話題がよく上がります。そういうフェスのブッキングや歴史を見ていると、グリーンルームが作ってきたものとリンクする点もあって面白いんです。

またとない1日を演出するブッキング

──全体のラインナップに関してはいかがですか?

津田 今年のラインナップは抜け目なく、すべての層を網羅していると感じました。まさにオールジャンルフェス。そして初日はヒップホップ勢も充実しています。

釜萢 今年はPUNPEEさんに初めて出演していただける、というところですね。

津田 PUNPEEさんのライブは本当に楽しみです。横浜だからこそ、初出演だからこその何かに期待したい。あと同日に出演するKREVAさんと何かあるかなあとか。僕は主催者じゃないから、お客さん目線で何でも言っていこうと(笑)。

──(笑)。

PUNPEE - 夢追人 feat. KREVA

津田 そもそも<GREENROOM FESTIVAL>のブッキングはどう進めているんですか?

釜萢 リストを作ってどんどん当たるという、昔から変わらないやり方で、シンプルに自分で選んでる。基本はこちらからオファーを出します。

津田 普段はどう音楽をチェックしているんですか?

釜萢 ライブを観に行くのが原則ではあるけど、SpotifyやYouTubeもよくチェックしてるし、世界中のフェスのラインナップもみてる。それと、ミュージックビデオが好きで。そこで全体のクリエイティブを見るというのが一番大きいかな。アーティストのカラーやトンマナがわかりますよね。

【対談】釜萢直起(GREENROOM CO.)× 津田昌太朗(Festival Life)|<GREENROOM FESTIVAL>が体現するサーフカルチャーの精神と都市型フェスの未来
釜萢直起(GREENROOM CO.)× 津田昌太朗

──<GREENROOM FESTIVAL>のラインナップは、毎年きれいなグラデーションがありますよね。

津田 フェスには縦の並び(同じステージに前後誰が出るか)と横の並び(同じ時間の別ステージとの重なり)があるじゃないですか。ステージやタイムテーブルに関して、何を大事にしていますか?

釜萢 縦と横の両方、意識的に組んでいます。メインステージ「GOOD WAVE」でのライブが終わったら、「BLUE SKY」「RED BRICK」のどちらかにいくという選択肢がちゃんとある。それがちゃんとチョイスできるということが、フェスとしては重要なポイントだと思ってます。「GOOD WAVE」にヘッドライナーが出演する時間は、他のステージの音は全て止めてます。フィナーレはメインステージで、ヘッドライナーで踊ろうぜというスタイルですね。

【対談】釜萢直起(GREENROOM CO.)× 津田昌太朗(Festival Life)|<GREENROOM FESTIVAL>が体現するサーフカルチャーの精神と都市型フェスの未来
釜萢直起(GREENROOM CO.)× 津田昌太朗
【対談】釜萢直起(GREENROOM CO.)× 津田昌太朗(Festival Life)|<GREENROOM FESTIVAL>が体現するサーフカルチャーの精神と都市型フェスの未来
釜萢直起(GREENROOM CO.)× 津田昌太朗

津田 各ステージにトリがいて、メインステージと同じ時間に横並びでライブが行われるフェスも多いですが、<GREENROOM FESTIVAL>はヘッドライナーを最後みんなに観て欲しいという意思が感じられるタイムテーブルなんですよね。たとえば初日はJUNGLEがヘッドライナーで、横のアクトはいない。実はそれって<GREENROOM FESTIVAL>の大きな特徴かなと思います。最後はみんなで集まって楽しもうよというメッセージみたいな。

釜萢 そうなんです。そこに演出も合わせていて、今年はディスコ仕様になります。年々アーティストも大きくなりブッキングのハードルは上がっているし、19年間続けてきてそのことを強く感じているので、ヘッドライナーを迎えるにあたって、オーガナイザーとしては世界のフェスに負けないクオリティやステージスペックを準備すべきだと思っています。

大量生産・大量消費に向き合って

──アーティストからもオーディエンスからも、ラインナップのジェンダーバランスなどに対するフェスティバルの姿勢はかなり重要視されていますよね。<GREENROOM FESTIVAL>では環境問題への取り組みが注目されています。

釜萢 そうですね、海岸へのゴミ箱の設置やビーチクリーンをやっています。フェス当日はノープラスチックの活動をしていて、バイオマスの容器を使ったり、今年から新たにリフィルでアルミカップを採用してます。プロバスケチームの試合に行ったりすると、アルミカップにビールを入れてくれたりするんですけど、その形式になります。アルミカップにはロゴが入っていて、記念品として持ち帰ってもらえたりもする。極力、捨てるゴミを減らすようにしています。

コンテンツとしても、たとえばアートギャラリーのペインターたちは海からインスパイアされていて、海の大切さをアート作品を通じて常に伝えている。ミュージシャンも海から影響を受けている方も多くて、さまざまな取り組みが集約されていると思います。

津田 イギリスの<Glastonbury Festival>もペットボトルの使用を廃止して、水もアルミ缶で提供されたりしていますね。それと去年、北欧のフェスに行ったんですが、環境に対する意識の高さを体感しました。ノルウェーのではそもそも車を使わないように自転車での交通を推奨して、フェス会場の真横に大きな駐輪場が用意されていたり、フェス全体でもクリーンエネルギーを使っていたり、会場内の食事にも環境意識の高いお店が多かったりと、フェスをどうサステナブルに継続するか、そして社会に貢献していくかみたいな意識が高い。

【対談】釜萢直起(GREENROOM CO.)× 津田昌太朗(Festival Life)|<GREENROOM FESTIVAL>が体現するサーフカルチャーの精神と都市型フェスの未来
釜萢直起(GREENROOM CO.)× 津田昌太朗

津田 スウェーデンの<Way Out West>は、アーティストグッズは販売されていたけど、フェスのオフィシャルとしてはグッズを売ってなかった。その代わり、古着や無地のTシャツを買って、バックプリントを入れるサービスがある。なぜかというと、フェスという一大産業の中で何千枚というTシャツを作ること自体が環境への負担が大きいんじゃないかという考えがあるから。でもフェスのTシャツって、とても大きい収益でもある。その葛藤はあるだろうけど、ある意味フェスのメッセージとして、既存のTシャツ販売をやらないことに踏み切った。全部のフェスがそうなるべきだとも思わないけど、そのフェスが打ち出すメッセージに共感してよりファンになっていくみたいなことはあるんじゃないかと。<GREENROOM FESTIVAL>も日本の他のフェスに比べると、オフィシャルの物販はほとんど作っていないですよね。

釜萢 そうだね。<GREENROOM FESTIVAL>のオフィシャルを買ってもらうことよりも、カルチャーとして、サーフブランドやセレクトショップが出店しているから、そこを楽しんでほしい。ブランドが協力しあって、みんなで作ってるお祭りだからね。

津田 フェスではどうしても大量生産・大量消費が発生してしまう。スタッフTシャツとか、必要なものもたくさんある。もちろん一気には変えられないけど、日本でも少しづつ兆しはあって、例えば、着なくなったバンドTやフェスTを回収したりして、そのお返しがあるフェスも出てきています。そういった取り組みを意識的に行っていることで、印象も変わっていきますよね。

物販の話を続けると、面白いのが<Coachella>は5年前くらいから物販に並ぶという文化が定着しました。以前と比べると、並ぶ時間は3倍以上になったんじゃないかなかと。客層が変わって、「コーチェラに行ったことを自慢したい」みたいな気持ちからマーチが飛ぶように売れるようになったのだと思います。ちなみに<Glastonbury>は5分で買える(笑)。国やフェスによっても全然違うんですよね。

釜萢 そうなんだ。最近、刺繍サービスも増えたね。

津田 昨年タイで開催された<Rolling Loud Thailand>に行った時にいいなと思ったのは、リーバイスが出店していて、何百種類ものワッペンやプリントを用意していて、ラインアップやロゴを購入したTシャツやアウターに付けたりできる。自分だけのオリジナルなものが作れて思い出にもなる。もし仮にTシャツが売れ残っても、店舗にはプリントされていない真っ白なものが残るので、別のフェスやイベントでも使えて無駄も少なくなる。物販を見るだけでもそのフェスや出店しているブランドのメッセージや意思みたいなものが感じられるのもフェスの面白いところかなと思います。

絶えず考え続けるフェスの在り方

──GREENROOM CO.では海への愛や環境問題への意識を軸に、さまざまなフェスをやられていますよね。

釜萢 5月に<GREENROOM FESTIVAL>があり、7月には<OCEAN PEOPLE>を稲毛海浜公園の「SUNSET BEACH PARK INAGE」でやります。<OCEAN PEOPLE>は完全にリニューアルして、プールとビーチのフェスティバルにしたいんですよ。海岸と稲毛海浜公園プール(INAPOO)というすごく大きなプールがあるんですが、そこを全て使ってやる。イビザなど、ビーチとプールをあわせたフェスをやってる場所はいくつもありますよね。やっぱり水着とかになると、すごく自由を感じる。でも、日本ではプールフェスが根付いてこなかったんですよ。挑戦ですね。

津田 <OCEAN PEOPLE>は代々木公園でも毎年盛況で成功しているように思っていましたがどうでしょう?

釜萢 <GREENROOM FESTIVAL>のコンセプトにより近づけていくためには場所もすごく重要で、プールとビーチが目の前にある環境で、それを肌で感じないと伝えられないんですよ。<OCEAN PEOPLE>は当初から海にふれあうきっかけを作っていくことがコンセプトにあるから、思い切って。水着を着て、プールでライブを楽しんだ後、そのまま海にも出れる。マーケットもあればフードもある。夏のいい思い出がちゃんと作れるんじゃないかなって。

OCEAN PEOPLES'24 7月6日(土)-7日(日)は稲毛海浜公園へ❗️

釜萢 8月には<MARINA SUNSET>があって、これは<GREENROOM FESTIVAL>のアフターパーティーという立ち位置。<GREENROOM FESTIVAL>の規模が大きくなってきた中で、原典的なイベントをやりたいと思っていて、今年はDJに加えてバンドライブもあります。

また、今年からアートギャラリーのエリアも作って、湘南のアーティストの作品を展示したり、逗子や葉山、鎌倉のアパレルブランドによるマーケットもあります。よりコンセプチュアルにしたいんですよね。会場のリビエラ逗子マリーナは、とにかくサンセットが群を抜いて綺麗ですよ。

津田 それと、今年は<Local Green Festival>が9月から11月に移動します。

釜萢 <GREENROOM FESTIVAL>のあとに開催するフェスは、それぞれ制作期間がかなり短いんですよ。それを前から考えていたのと、9月が暑すぎる。秋のフェスとして立ち上げたのに、9月はもはや夏じゃないですか。植物をテーマにしていて、いろんな植物屋さんに出店してもらってるけど、暑すぎると植物が枯れちゃうんだよね。植物にとって、2日間はものすごいダメージになってしまう。そういった観点から、日本では<朝霧JAM>が最後のフェスと呼ばれていたけど、それよりもさらに後ろ倒しにして新しく作り変えたいと思っています。その時期、アーティストはワンマンツアーを回っていることが多いので、ブッキングしにくいという点はもちろんあるんだけど、チャレンジしたい。晩秋って、食べ物も美味しいじゃん。

津田 日本の夏が暑すぎる問題はありますよね。先ほどおっしゃっていたように、10月の<朝霧JAM>が夏フェスからの流れの締め括りで、それ以降は野外だと11月頭に<FRUE>がある。それからは少し落ち着きつつも、屋内開催のものを中心年末まで繋がっていくけど、大きいフェスはやはり少ない。昔は<Hostess Club Weekender>などもありましたが、11月には日本にフェスが少ない。そこで、11月の中旬、横浜の屋外での開催はチャレンジですよね。それに新しい市場を作る可能性を秘めていると思います。

11、12月は海外アーティストが単独ツアーで回ってきて、香港は<Clockenflap>、インドネシアは<Joyland Festival>、タイは<Mahorasop Festival>などがあるタイミング。<Local Green Festival>は邦楽メインだと思うんですが、その辺りの展望はありますか?

釜萢 ある。海外のフェスとの連携は年々増えていて、<GREENROOM FESTIVAL>でいうと<Seoul Jazz Festival>がある。より深く連携して、いいアーティストを招聘できるのであれば積極的に組んでいきたいと思っています。

──11月と海のカルチャーはどう関係しているのでしょうか?

釜萢 <Local Green Festival>のテーマは植物ですが、海を綺麗にするには緑が絶対必要なんです。海の水が蒸発して山に雨を降らせ、川になって流れていくという循環がある。山と川は綺麗だけど、街を通ると汚れてしまい、海はその最終地点になってるんですよ。ビーチクリーンを19年もやっていると、海という最終地点でゴミを拾ってるだけでは解決しないことを痛感するんです。だから根本的な部分から取り組んで啓蒙できることはないか、という思いが詰まっています。

<Local Green Festival>は<GREENROOM FESTIVAL>ほどまだ知名度が高くないから、これからがっちり作り込んでいきたい。<GREENROOM FESTIVAL>は19時まで明るいから、21時まで2時間しか夜はない。でも11月は17時から日が落ちるから、夜の演出も増やせる。星も綺麗だし、野外でクリスマスソングとか聴いてみたいよね。

【対談】釜萢直起(GREENROOM CO.)× 津田昌太朗(Festival Life)|<GREENROOM FESTIVAL>が体現するサーフカルチャーの精神と都市型フェスの未来
釜萢直起(GREENROOM CO.)× 津田昌太朗
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釜萢直起(GREENROOM CO.)× 津田昌太朗

何かが起こる<GREENROOM FESTIVAL>20周年

津田 もうひとつ訊きたかったのは、釜萢さん的に<SUMMER SONIC>のタイ進出をどう捉えていますか?

釜萢 とてもすごいことだと思います。<GREENROOM FESTIVAL>も以前ハワイで5年間やっていた経験があるので、難しさも分かるから。自分もチャンスは感じていて、ハワイでの<GREENROOM FESTIVAL>は復活させたい。

【対談】釜萢直起(GREENROOM CO.)× 津田昌太朗(Festival Life)|<GREENROOM FESTIVAL>が体現するサーフカルチャーの精神と都市型フェスの未来
釜萢直起(GREENROOM CO.)× 津田昌太朗

津田 僕は個人的な話になりますが、世界中回っているのに、ハワイは行ったことないんです。デビューは<GREENROOM HAWAII>にしようと思っています。ハワイ、いつ復活させましょう?(笑)

釜萢 来年は<GREENROOM FESTIVAL>が20周年を迎えるので、何かやりたいですね。特別なものを用意しています。

津田 2010年代を経て、<GREENROOM FESTIVAL>はフェスシーンで圧倒的な存在感を示したし、たくさんのフェスに影響を与えたと思います。フェスという文化が、現在のように一般化するのにもかなり貢献したと僕は捉えています。そんな<GREENROOM FESTIVAL>の次の10年の展望が気になります。

釜萢 そんなことないですよ。これからもクオリティーを上げていきたいし、まだ満足できてない。まだ届いていない部分がある。理想としているものには、20年やり続けてもまったく届かないくらい。赤レンガのキャパシティから考えると、巨大フェスのやり方を求めていくのは難しいから、あのキャパシティでベストなものを作る方向になりやすくて、それはある種、完成系に近づけていくという作業に近い。

でももう一方で、より大きく展開したい願望もある。例えば、みなとみらいの街一体で考えて、<Austin City Limits Music Festival>や<Lollapalooza>のような形にしたらいいかとか、どこまでチャレンジできるのかも含めて、模索していますね。

Interview:船津晃一朗 Photo:高見知香 Text:風間一慶

INFORMATION

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GREENROOM FESTIVAL’24

【会場】 横浜 赤レンガ倉庫 【日程】2024年5月25日(土)・26日(日) 【主催・企画・制作】グリーンルームフェスティバル実行委員会

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フェス旅 日本全国音楽フェスガイド

2024年4月17日(水) 文:津田昌太朗 定価:1,815円(税込) ISBN:978-4-7780-3630-0 仕様:A5判・144頁並製 発行:小学館クリエイティブ 発売:小学館

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津田昌太朗×照沼健太×伏見瞬 「フェス大国ニッポンの音楽業界&世界のフェス事情」 『フェス旅 日本全国音楽フェスガイド』(小学館クリエイティブ)刊行記念

2024.05.30(木) 19:30 - 21:30 本屋B&B(東京都世田谷区代田2-36-15 BONUS TRACK 2F) 【来店参加(数量限定・1ドリンク付き)】2,750円(税込) ¥2,750 【配信参加】1,650円(税込) ¥1,650 【サイン入り書籍つき配信参加】1,650円+書籍『フェス旅 日本全国音楽フェスガイド』1,815円(いずれも税込)※イベント後発送 ¥3,465 【サインなし書籍つき配信参加】1,650円+書籍『フェス旅 日本全国音楽フェスガイド』1,815円(いずれも税込)※イベント後発送 ¥3,465

チケットはこちら津田昌太朗

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