
Qolyアンバサダーのコラムニスト、中坊コラムの中坊氏によるコラムをお届けします。
200人以上在籍している、海外組選手の活躍
以前のコラムでも述べたが、あまりにヨーロッパクラブに在籍する日本人選手が多いためにその活躍を追い切れない。これは日本のサッカーファンのごく自然な感覚だと思う。
とにかく毎週毎週誰かしらが活躍しているため、ニュースがとめどなく流れてきて、結果として「日本の選手、みんな海外で活躍してるなぁ」というぼんやりとした抽象的イメージだけで終わりかねない。
だが、ここまで日本人選手が活躍しているのにそんな認識だと勿体ない。そのため、2024-25シーズンにおけるタイトル獲得に至った選手、個人で受賞や特筆すべき結果を残した選手をまとめておく。
タイトルにある通り、長い日本サッカーの歴史の中で、ヨーロッパで結果を残した選手が昨季は過去最高の人数である。また数年経ってあっさりと塗り替えるとは思うが、それでもこの活躍はまとめておくべきだと考え、記載する。
公式戦二桁得点
中村敬斗(スタッド・ランス)12ゴール2アシスト
町野修斗(キール)12ゴール2アシスト
堂安律(フライブルク)10ゴール8アシスト
三笘薫(ブライトン)10ゴール4アシスト
前田大然(セルティック)26ゴール11アシスト
旗手怜央(セルティック)11ゴール7アシスト
古橋享梧(セルティック→レンヌ)11ゴール3アシスト
大橋祐紀(ブラックバーン)10ゴール4アシスト
森下龍矢(レギア・ワルシャワ)14ゴール14アシスト
鈴木唯人(ブレンビー)12ゴール4アシスト
※ゴールはリーグ戦に加え、欧州カップ戦等も含む
「日本人の二桁得点達成者が欧州5大リーグで四人も!」と話題になった。これは本当に凄いことだが、さらに5大リーグ以外でも6人もおり、計10名が昨季ヨーロッパで二桁得点を記録した。どの選手も素晴らしい。
「特に、チームが残留争いどころか降格したのに一人気を吐いて活躍した町野、中村敬斗は凄い。いや、世界最高のリーグであるイングランド・プレミアリーグで二桁達成の三笘が一番凄いか。こんな選手達がゴロゴロいるために堂安に注目が集まらないのが不遇だ。ドイツ・ブンデスリーガで二桁達成したら20年前だったら大騒ぎだったのに」などなど、いくらでも感想が出てくる。
森下はチームで様々なポジションを任せられた末に28歳にして大ブレイク。
鈴木唯人は昨年に引き続き公式戦二桁得点を記録し、以前からの噂通りドイツ・フライブルクへのステップアップを達成。大橋も一時期スタメンから外されていたが、最終的に二桁達成するなど、日本代表候補アタッカー陣の層は本当に厚い。
リーグ最優秀選手
前田大然(セルティック)
公式戦26ゴール11アシスト、得点王こそ逃したものの圧巻の結果だ。2022-2023シーズンに古橋が同タイトル受賞を成し遂げたと思ったら、古橋がリーグアン・レンヌへ移籍した直後に今度は前田が大活躍。もはやセルティックで日本人が活躍するのはおなじみの光景になりつつある。
リーグ年間ベストゴール
三笘薫(ブライトン)チェルシー戦
偉大なる記録。
プレミアリーグでの全1,115ゴールの中で三笘薫のチェルシー戦における、スペシャルなトラップからのゴールがリーグ年間ベストゴールとして表彰された。これはThe Athletic、ESPN、SkySports、BBC、複数のメディアで年間ベストゴールとして選出されたことからも満場一致の表彰。

思えば、三笘は2023-24シーズンにおいてもウォルヴァーハンプトン戦の4人抜きゴールが同様にノミネート。昨季はノミネートにとどまらず堂々たる受賞に至り、二年連続で世界最高の舞台にてインパクトを残した。
チーム年間ベストゴール
田中碧(リーズ) ハル・シティ戦
田中碧はハル・シティ戦の豪快なミドルがベストゴール認定。奇しくも川崎フロンターレ同期の三笘がプレミアでベストゴール、田中碧はチャンピオンシップでベストゴール認定に至ったのは偶然とはいえ不思議な縁を感じる。
チーム年間MVP
渡辺剛(ヘント)
田中碧(リーズ)
渡辺剛はベルギーで「モンスター」と評されるほど評価が高く、CBとして数年間全試合フル出場を続け昨季はついにチーム年間MVP表彰に至った。そしてこのオフシーズン、オランダの強豪フェイエノールトへの移籍を果たしている。これほどまでベルギーで評価を高めた選手が日本代表ではポジションを掴めていない。
田中碧は自身が「ヨーロッパに来て初めて自分がやってきたことが報われたと感じました」とコメントを残したのも頷ける。個人としては大黒柱としてフル稼働、チームとしてはチャンピオンシップ優勝&プレミアリーグ昇格と充実の出来のため、これも当然のチーム年間MVP獲得だ。
なお、ここには記載していないが、クラブ月間MVPを複数回受賞したセリエA・パルマの鈴木彩艶も見事な活躍だった。
ベストイレブン選出
堂安律(フライブルク)
佐野海舟(マインツ)
田中碧(リーズ)
岩田智輝(バーミンガム)
ベストイレブンに関してはリーグ公式が選定したものだけでなく、各メディアが独自に発表しているものも多くあるため、その中の一つに彼らが選出されているというもの。

注目は佐野海舟。走行距離のスタッツでも驚異的な記録を残したが、チーム加入1年目でスタメン獲得、そしてベストイレブンに選出。日本代表選出がなかったため、クラブに専念できた環境も大きかったと個人的には思料する。と同時に、国際Aマッチの度に長距離移動を強いられてコンディションが落とされるのは、他の多くの日本人選手にとっての課題だろう。
リーグ優勝
遠藤航(リヴァプール)
伊藤洋輝(バイエルン・ミュンヘン)
守田英正(スポルティング)
町田浩樹(ユニオン・サン=ジロワーズ)
旗手怜央(セルティック)
前田大然(セルティック)
田中碧(リーズ)
岩田智輝(バーミンガム)
この7人の中で注目は町田と岩田。
町田はなんとユニオンの90年ぶりのリーグ優勝に貢献。渡辺剛と共に、ベルギーからステップアップするに相応しい結果を残した。そして実際に、TSG1899ホッフェンハイムが約8億円の移籍金で獲得。来シーズンからはブンデスリーガでプレーする。
岩田はセルティックでポジションを掴めなかったがEFLリーグ1で主力としてリーグ優勝・チャンピオンシップへの昇格に貢献。大正解の移籍だった。
スポルティングの守田はルベン・アモリン監督がマンチェスターユナイテッドへ電撃移籍するも、主力としてリーグ優勝とカップ戦優勝の二冠を達成。ただし、2026年6月30日までの契約延長を本人が拒否したため、この夏の移籍、または来夏のフリー移籍が確実となっている。
遠藤は去年に比べ大幅に出場時間を落としたが、守備固め要員としてアルネ・スロット監督の計算に組み込まれ、プレミアリーグ優勝に貢献した。
実際に、ウォルヴァーハンプトン戦においては71分から投入され、クローザーとしての役割を完遂。20分程度の出場にもかかわらず、なんとプレイヤーオブザマッチに選ばれたほど重要な戦力と認識されている。守田とともに来季のクラブ選択に注目が集まる。
カップ戦優勝
鎌田大地(クリスタル・パレス)
守田英正(スポルティング)
森下龍矢(レギア・ワルシャワ)※カップ戦得点王・カップ戦決勝MOM
予想外、といっては申し訳ないが、「欧州5大リーグで主力としてタイトル獲得に貢献」という基準で見ると、昨季日本人選手で最も結果を残したのは鎌田となる。

思えば2023-24シーズンのラツィオでもイゴール・トゥドール監督から「鎌田が10人欲しい」とまで言わしめるほど尻上がりに調子を上げ、昨季も旧知のオリヴァー・グラスナー監督のもと、中盤以降は主力の座を掴み、マンチェスター・シティを下してFAカップ優勝。164年のクラブの歴史において初のメジャータイトル獲得に貢献した。
ラツィオでは終盤活躍するも移籍によりリセットとなったが、クリスタル・パレスでは良い流れのまま2年目に突入するため、来季が楽しみである(ヨーロッパリーグへの参加が叶わなかったのは残念だが)。
以上、「ヨーロッパで結果を残した選手」という括りで挙げるとここまでの量となってしまった。前述の記載からは外れているが、ECL準決勝まで進出したSB小杉啓太(ユールゴーデン)等も見事な結果を残しており、日本サッカーの進化を強く感じる。
過去最高の成績を彼らは残したが、近いうちに塗り替える日が来るのだろう。