
[J2第14節大分トリニータ0-3 モンテディオ山形、5月6日、NDソフトスタジアム山形]
今季初のリーグ戦4連勝を目指した大分は山形に0-3と大敗し、2014年8月から勝利がない難敵を乗り越えられなかった。この日はJ1サンフレッチェ広島から育成型期限付き移籍中のFW鮎川峻が今季初先発するも、シュートゼロと不発に。
優れた動き出しを見せるも
今季初スタメンの鮎川は何度も動き直しをしながら、ボールを呼び込む巧みなオフザボールの動きで相手守備陣をかく乱しようと奮闘するも、ほしいタイミングにボールを受けられなかった。それでも後半24分の交代まで豊富な運動量で前線から積極的にプレスをかけるなど我武者羅(がむしゃら)に戦った。
ボールをチェイシングする鮎川(右)ピッチ上ではき然と振舞っていたが、ミックスゾーンでは暗い表情を浮かべた背番号21。名門広島ユースで活躍してトップチーム昇格を果たすも、思うような成果を挙げられないでいる。武者修行先の大分では今季初先発と結果が求められる中で、シュートはゼロに終わった。
「この試合にかける思いが強かった分、結果が出なかった。自分としても情けないですし、悔しい思いが強いです。本当にいまのままでは全然通用しない。すべてにおいてもっとレベルを高めなければいけないと、改めてきょう思いました」と唇を噛んだ。
広島で大きな期待を受けて育った若武者はいま大きな壁に苦しんでいる。連戦の中で前線のメンバーを大幅に変えて山形戦に臨んだ中、望んでいた結果を得られなかった。それでも片野坂知宏監督はストライカーに希望を抱いている。

「鮎川は毎試合準備してくれている。前線のワントップのところで、背後へのランニング、ボールを収めるところも非常にうまい。相手の嫌な立ち位置を取れる選手。守備のスイッチや攻撃の起点の仕事を鮎川もやってくれるという期待の中で、今回の起用しました。
そして鮎川も試合でサブが続いていて、先発で出たいという思いもありますし、先発で使って山形さんのディフェンスのかく乱や、チャンスや決定機を作ってくれて、得点でチームの勝利に貢献してほしいと思い切って使いました。
鮎川もその守備のところでも、前線からのチェイシングや攻撃での起点でも良さを出そうとトライしていたと思います。まだまだ彼ももっと成長できる選手だと思うので、チームの力になれるようなプレーができるように、きょうのゲームを糧にしてやってほしいですね」と期待を寄せた。
この日は悔しい結果に終わったが、指揮官やサポーターの期待を背負う鮎川はただでは転ばないと決意を固めている。
自分にベクトルを向ける負けん気の強さ
身長165センチと小柄な背番号21だが、身長178センチの山形FW藤本佳希に空中戦で挑むシーンもあった。一見ミスマッチに見えるが、アクションを起こせば何か起きるかもしれないという負けん気の強さで不得手なエアバトルにも積極的だった。

そんな負けん気が強い男だからこそ、シュートゼロ本は非常に悔しい結果だった。質のいい動き出しでパスを呼び込もうとしたが、自身が望むタイミングのボールはなかなか供給されなかった。
「ボールを呼び込む回数は増やさないといけないと思いました。味方の選手がちょっと苦しい状態でボールを持っているときに、もう少し助けるような動きが、きょうは少なかったかなと思う。そのあたりがもう少し必要ですね」と冷静に自分のプレーを見つめ直していた。
監督記者会見で指揮官が語った「このゲームを糧にしてほしい」という期待の声を耳にせずともミックスゾーンで実践している男は、冷静さと向上心を併せ持っている。大分、そして広島を背負おうと進化の過程にいる鮎川は、自身が成すべき努力を理解している。
「きょうもシュートがなかったので、そういう部分は自分が生きていく中で、ゴール前(の動きの質)が絶対必要になってくると思う。そこはきょうできなかったところなので、そこを改善して動きの部分を突き詰めていきたいと思います」と前を見据えた。

武者修行中の若きストライカーはいま巨大な壁に何度もはじき返されながらも、必死に越えようとしている。課題を克服して成長を果たし、4シーズンぶりのJ1復帰のピースになってみせる。
(取材・文 高橋アオ)