J1のFC町田ゼルビアは11日、Aリーグ(オーストラリア1部)のウェスタン・ユナイテッドからDF今井智基を完全移籍で獲得したと発表した。
町田は今月7日に、DF菊地流帆が右膝骨軟骨損傷で手術を行ったことにより、全治約12ヶ月の見込みであるとアナウンスしており、同選手の不在を埋める緊急補強となる。
現在34歳の今井は、2020年からオーストラリアへ渡り、ウェスタン・ユナイテッドの守備の要としてプレーした。
ウェスタン・ユナイテッドでは2021-22シーズンにリーグ優勝を経験したが、今季はクラブが財政難の影響でリーグから除外され、今井を含む全選手が契約解除となっていた。
ウェスタン・ユナイテッドが財政難に陥った背景には、クラブ創設当初からホームの観客動員数が伸びない慢性的な問題があった。
同クラブは、2019年当時Aリーグの放映権を保有していた『FOX SPORTS』が大都市でのダービーマッチの増加を望み、メルボルンで三つ目のプロクラブとして創設された。
2019-20シーズンからAリーグに参入したウェスタン・ユナイテッドは、参入2年目でリーグタイトルを獲得するなど、好成績を残していた。
だが、地域リーグのプロセスを経ないままプロクラブとして運営が始まったことが影響し、顧客の獲得、ファン層の拡大に苦戦。昨季のホーム平均観客動員数は3709人で、リーグ最下位だった。
2023-24シーズンは1100万豪ドル(約11億円)、負債超過は5500万豪ドル(約53億円)超の赤字に達し、前年度の赤字も1200万豪ドル(約12億円)を計上していた。
さらに、ウェスタン・ユナイテッドのジェイソン・ソウラシス会長は、オーストラリア国税局から300万豪ドル(約2億9000万円)の未納税請求も受けていたという。
同国の連邦裁判所から清算命令を受けた同クラブは、債務の返済に充てるための新たな1500万豪ドル(約22億円)の投資を確保し、手続きを延期するよう求めていたが却下された。
最終的に、ウェスタン・ユナイテッドはAリーグから今季のリーグ参加契約の条件付き休眠処分を課され、所属選手全員と契約解除。事実上のクラブ解散となった。
Aリーグ開幕直前にウェスタン・ユナイテッドとの契約を解除した今井にとっても、急きょ菊地の代役が必要になった町田にとっても、Win-Winな契約となった。