古巣に帰還した元日本代表、シーズン初黒星もチームの道標として存在感を発揮
古巣に帰還した元日本代表、シーズン初黒星もチームの道標として存在感を発揮

[J2第3節大分トリニータ 0-2 ベガルタ仙台、3月1日、宮城・キューアンドエースタジアムみやぎ]

大分は仙台に0-2で敗れ、今季初黒星を喫した。立ち上がりから相手のコンパクトな4-4-2ブロックに手を焼き、素早い寄せから繰り出される鋭いカウンターに押し込まれ、前半8分、同23分に失点を許した。

それでも後半は大分が主導権を握るシーンもあったが、ゴールが遠かった。

この日元日本代表MF清武弘嗣(ひろし)が後半開始から途中出場した。圧倒的な存在感、効果的なポジショニングと動き出しでチームの道標となり、停滞していた攻撃を活性化させた。

大分のレジェンドがチームの道標に

道標と例えるに相応しい選手だ。

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ピッチ上で圧倒的な存在感を見せた清武(左)

前半は仙台の勢いに押し込まれる形で防戦一方だった大分だが、後半は清武が攻撃の道標となるようにライン間でボールを受け、優れた技術で仙台のプレッシャーをはがしながらゴールへと迫ってチャンスを演出した。

だがチームの決定力は精彩を欠き、ゴールネットを最後まで揺らせなかった。背番号28は「結果は負けたので残念ですね。(相手に)つながせないという意図で入りました。攻撃では常にアリ(FW有馬幸太郎)の近くにいることを考えながらやりましたけど、チャンスは多々あったし、仕留められなかったことが今後の課題かなと思っています」と今季初黒星にやるせない表情を浮かべた。

仙台戦までは今季出場時間が1分だった背番号28。戦術やコンディションの影響もあり難しい状況が続いていたが、この日は優れた位置取りと仙台の虚を突く動き出しなどメリハリがあるプレーで、主導権を奪うきっかけを作り出した。

「(得点への)感触は結構ありましたよ。チャンスも背後だけじゃなくて、ウィングから中に当てて、3人目が潜ったりというチャンスがあった。

そういうチャンスは、もっと増やしていかないといけないので、仕留めなければいけなかったです。みんなで目を合わせながらつながりを持って、いい攻撃もあったけど、もっと良くできるんじゃないかなと思います」

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精度の高いキックを披露した清武(左)

自身のコンディションも上向いており、劣勢の中でも違いを作り出した。大分のレジェンドは笛が鳴り終わるまで奮闘し続け、チームの精神的な道標としても大きな影響力を見せた。

「2戦終えて相手も対策してくる。それは分かっていることなので、試合中でもコントロールしないといけない。出ている選手たちがじれるんじゃなくて、うまく中で修正しないといけない。チーム全体としての課題だと思うので、きょうの敗戦を無駄にしないようにもう1回いい準備をして、ホームでやり直したいと思います」と前を見据えていた。

絶大な影響力を持つ頼れるキャプテン

この日先発したMF野嶽惇也、MF茂平は仙台の激しい攻勢に苦しめられたが、清武が入った後半は各々の長所が光る場面もあった。

野嶽は「(清武は前で)受ける選手なので動きすぎずに、惑わせる、相手の足を止める役割をしてくれたと思います」と、清武がターゲットマンになったことでチームの攻めの狙いが明確になり、攻撃の活性化につながったと明かした。

古巣に帰還した元日本代表、シーズン初黒星もチームの道標として存在感を発揮
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前半はキャプテンマークを身に付けて奮戦した野嶽(右)

大分アカデミー出身の清武は2008年にトップチームへ昇格し、プロデビューシーズンにチームの初タイトルであるリーグ杯優勝に貢献し、2010年からセレッソ大阪でプレーした。

2012年には海外へ挑戦し、ドイツ・ニュルンベルク、同ハノーファー、スペイン・セビージャで活躍した。日本代表は通算43試合5得点、2014年に開催されたワールドカップ・ブラジル大会コロンビア戦に出場と華々しいキャリアを歩んできた。

今季古巣に帰還したレジェンドを「ずっと目標にしていた選手」と尊敬している大分アカデミーの後輩の茂は、清武にボールが入ると自身がマークを引き付けるデコイランやゴール前へ駆け込むなどして存在感を見せた。

「(清武は)いてほしいところにいてくれるし、(自分たちに)パスが出てくると思うので、僕らも走り出せたから全然違いましたね。弘嗣くんがいることによって、みんな前に攻撃も出ていけるようになったので、これを前半からやりたかったというのが正直あります」と話すようにチームの攻撃のコンセプトを深く理解するチャンスメイカーの不在は前後半での明暗につながった。

古巣に帰還した元日本代表、シーズン初黒星もチームの道標として存在感を発揮
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豊富な運動量で攻守に貢献した茂

5シーズンぶりのJ1復帰を目指す大分にとって帰還したキャプテンの存在は重要になってくるだろう。ピッチ上で見せる洗練された技量や圧倒的なプレゼンスだけでなく、主将としての振る舞いにも期待を寄せられている。

片野坂知宏監督は「今シーズン(清武に)キャプテンをお願いしました。若い選手を含めていろんな選手によく声をかけてくれている。(この日は)サブメンバーでスタートしましたけど、先発の選手にすごくいい声がけをしてくれたので、そういったところでの清武の存在感は非常にある」と精神的な支柱としても背番号28は大きな影響力を示していた。

初黒星を喫してしまったが、清武のプレーによって新たな光明が見えた。J1復帰のための原動力と期待されるキャプテンを筆頭に、チーム一丸となって次節ホーム・水戸ホーリーホック戦(9日午後2時、クラサスドーム大分)で開幕戦以来の勝利を飾りたい。

(取材・文 高橋アオ)

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