
[日本フットボールリーグ(JFL)第16節いわてグルージャ盛岡2-0ヴィアティン三重、13日、いわぎんスタジアム・Aグラウンド]
盛岡は三重を2-0で下して、リーグ戦2試合ぶりの勝利を手にした。
前半からMF弓削(ゆげ)翼を中心に中盤でコンパクトなダイヤモンドを形成し、正確なパス交換で相手を翻ろうしてゲームを支配。
前半4分にFW岡﨑大志郎が先制し、同36分にはFW藤本憲明が2点目を決めて逃げ切った。
後半戦初戦を制した盛岡は、1シーズンでのJリーグ復帰に向けて好発進した。
中盤の要として君臨した弓削
扇の要を彷彿とさせる安定感を見せた。
攻めれば正確無比なパスを素早くつないで相手のプレスをかわして翻ろうし、守れば正確なポジショニングで相手のパスコースをふさいでチームに安定をもたらした。
扇の要のように安定感をチームにもたらした弓削弓削は「攻撃のところで主導権を握れたので、守備は少し楽な部分もありました。相手のストロングのポイントを抑えながら、いい守備ができたかなと思います」と胸を張った。
盛岡の背番号8を筆頭に元日本代表MF小林祐希、元同代表DF西大伍らが作り出すパスワークにより、三重の攻撃は完全に沈黙した。
波のない安定感のあるプレーでチームを支えた弓削は、日本代表や海外で活躍した同僚からの信頼も厚い。
小林は「弓削はボールを失う回数が少ない。このチームでは限りなく一番少ない。ほぼ100パーセント味方にボールを預けられる」と太鼓判を押した。

役割がはっきりとしている盛岡は、隙のない連動を見せ続けた。中盤のクオリティでいえばJFLでもトップクラスだろう。
弓削は「センターバックの選手が押し出してくれることによって、自分も狙いがはっきりしてセカンドボールも拾えます。その後の2次攻撃と、攻撃の時間は増える。彼らの経験値はすごく高いので、すごくいい守備だったと思います」とチーム守備に自信を見せた。
1年1カ月ぶりに復帰した男がチームのカンフル剤に
昨年6月28日に右ひざ外側半月板損傷により全治6カ月の見込みと発表されたが、復帰までに1年1カ月と長引いてしまった。
盛岡は昨季に主将を務めながら主力として君臨していた背番号8を欠いて低迷。昨季最下位でJリーグ退会を強いられ、今季JFLで戦っている。
ピッチ外でリハビリをしながら弓削は「去年はほぼプレーしていないので、外で見ながら本当に悔しい気持ちでした」と歯がゆい思いでチームを観ていた。
チームは第4節から第9節まで泥沼のリーグ戦6連敗を喫したが、5月31日に開催された第10節Honda FC戦で背番号8が復帰してから好転。
弓削の復帰からここまで4勝2分1敗と巻き返ししつつある。

「6連敗した後に自分が復帰したときは、みんな自信を失っていました。やりたいサッカーを見失ってた時期だったので、自信を持ってプレーすることを、声がけをしました。
チームは1シーズンでのJ3復帰を目指している。後半戦白星スタートで好調のきっかけをつかみつつある。
「今年もケガが長引いて出遅れてしまいましたけど、前期の6連敗と、勝ち点の取りこぼしは戻ってこない。もうあと残り14試合。 毎試合絶対勝たないといけないので、スコアも意識しながらやっていきたい」と意気込んだ。
待ち焦がれた男の復帰で、チームは生まれ変わった。盛岡の扇の要として後半戦はJリーグ復帰に向けて上昇気流を巻き起こしてみせる。
(取材・文・撮影 高橋アオ)