インドネシア代表の帰化強化は今後鈍化する…?インドネシア関係者に聞く強化の現状
インドネシア代表の帰化強化は今後鈍化する…?インドネシア関係者に聞く強化の現状

近年急速に実力を付けつつあるインドネシア代表は、FIFAワールドカップ(W杯)2026アジア最終予選(3次予選)で日本代表が同居するグループCで4次予選(アジア・プレーオフ)進出圏内の6チーム中4位と健闘している。

この躍進の理由は積極的な多国籍選手の招集によるところが大きい。

インドネシア代表は現在、招集メンバー23選手中18選手が欧州出身のプレイヤーで構成されている。

試合ごとに強力な欧州出身の多国籍選手が加わるため、ライバル諸国はアナライズなどの対応に苦慮している状況だ。

ただこの流れが鈍化する可能性があるという情報をキャッチした。インドネシア協会の関係者などに真相を尋ねた。

(取材・文・構成 高橋アオ)

現在のインドネシア協会のターゲット

現在インドネシアサッカー協会がA代表を強化するためにターゲットにしていると目されている選手は二人おり、元オランダ代表MFで経験豊富な28歳であるヤイロ・リーデヴァルト(ベルギー1部アントワープ)、今季オランダ2部で20試合11得点4アシストを記録したレフティーFWミリアーノ・ヨナサンズだという。

リーデヴァルトはオランダ・ハールレム出身のスリナム・インドネシア系オランダ人であり、インドネシアのルーツは北スラウェシのマナド出身の祖母にあるようだ。

2013年12月にオランダ1部アヤックスでプロデビューを果たすと、2013-14シーズン第18節ローダJC戦で2得点を挙げてオランダ1部の歴代最年少得点記録(17歳104日)を樹立した。

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ヤイロ・リーデヴァルト

2015年9月にはオランダ代表デビューも果たし、通算3試合に出場し、その後プレミアリーグのクリスタル・パレスに入団してプレミアリーグ通算80試合プレーした。

身長182センチのレフティーはテクニックと身体能力に優れた実力者であり、守備的ミッドフィールダーを中心に左サイドバック、センターバックをこなせるポリバレントな才能を持っている。

ヨナサンズはフィテッセアカデミー出身の21歳であり、父方がインドネシア系の血を引いているという。

今季はフィテッセで前述した活躍によりオランダ2部最高のレフティーと高く評価され、今季途中にオランダ1部ユトレヒトへとステップアップした。

現在インドネシア代表は左利きのアタッカーとサイズがある守備的ミッドフィールダーの帰化補強を優先しているという。ただし、この2選手の加入が6月シリーズに間に合わないかもしれないと協会関係者は話した。

元オランダ代表選手の帰化に苦戦

元オランダ代表の帰化手続きは前途多難のようだ。関係者は「彼はオランダ代表で3キャップを記録している。FIFAのルール上21歳以下でA代表にデビューしていて、3試合以下とガルーダ(インドネシア代表の愛称)に加わる条件は満たしている。ただ彼を新たにインドネシア代表に加える手続きに苦戦している」と明かした。

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オランダの育成年代代表で活躍したリーデヴァルト

実際にインドネシア協会のエリック・トヒル会長は2月中旬の記者会見において「ヤイロを加えるための書類が見つかっていない」と明言していた。

FIFAの認証を受けるためにはインドネシア代表に加えても問題がないと証明する書類が複数必要だという。

実際に現在インドネシア代表のゴールマウスを守るオランダ系GKマールテン・パエスが手続きを済ますまでに8カ月の時間を要した。

関係者は「6月シリーズに間に合うかは不透明だ。中国、日本を打ち破るにはヤイロの存在は必要不可欠になると思われるが、申請の手続きが間に合うかは分からない」と曇らせた。

現在オフィシャルで明かされている範囲ではリーデヴァルト、FWマウロ・ジルストラ(フォレンダムU21)のみが帰化手続きを進めている状況となっている。

そのため元オランダ代表の加入はオランダの英雄的ストライカーとして名をはせたパトリック・クライファート監督も望んでいるという。

あるインドネシア代表選手をマネジメントする関係者は「PSSI(インドネシア協会)は手続きを進めている段階だ。6月シリーズに間に合うように調整しているが、間に合わない場合はプレーオフでの招集も見越しているだろう」と打ち明けた。

秘密兵器と目されるリーデヴァルトの招集は一筋縄ではいかなそうだ。

オランダで活躍するレフティーは間に合うのか

インドネシア代表の新たな翼と目されているヨナサンズはどうだろうか。ヨナサンズの父親デニス氏が宗教改宗のため先月インドネシアに訪れたという。そのためインドネシア国内メディアはヨナサンズを加えるための交渉かと報じた。

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ミリアーノ・ヨナサンズ

ただ協会関係者は「それはフェイクニュースだね。デニス氏はプライベートでインドネシアに訪れただけだ。ミリアーノについては何の情報もなければ、手続きをしている情報もない」と断言した。

実際に同協会幹部のアーリヤ・シヌリンガ氏も自身のインスタグラムで「きょうまでミリアーノ・ヨナサンズに関しては何の手続きも行われていない」と投稿しており、トヒル会長も「ただの移籍選手で代表チームを編成することは望まない。そうなれば国の指導体制にダメージが与えられるからだ」とヨナサンズの補強に否定的な見解を示した。

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エリック・トヒル会長

そのため、インドネシア代表の帰化補強は鈍化するのかと協会関係者に尋ねると「現状を見ればそう見えるかもしれない。ただPSSIは代表候補選手を調査し、あらゆる可能性を探っている。それは今後も変わらないため、長期的な視点でいえばこの流れが止まることはないだろう」と示唆した。

複数関係者はミリアーノの新規招集については現状進んでいる話はないというが、補強ポイントであるため今後動き出す可能性があるという。

あるエージェント関係者は「ミリアーノを加えたら間違いなく攻撃は強化されるだろう。ただ現状のメンバーでも十分に強力だ。残り期間は2カ月もあるので、急に動きを見せる可能性は十分にある」と明かした。

先月はイタリア系GKエミール・アウデロ(イタリア2部パレルモ)、オランダ系MFヨーイ・ペルペシー(オランダ2部ロンメル)、オランダ系DFディーン・イェームス(オランダ1部ゴー・アヘッド・イーグルス)を新たに加えた。

今後も欧州で活躍する強力な選手を新たにスカッドへ加えるのか。動向を注視していきたい。

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